以前の記事で、今の時代に求められる「アンラーニング」について書きました。
(*「変化の激しい時代に必要な『アンラーニング』とは?」については、こちら↓)
では 上手く「アンラーニング」を行っていくには、どうしたらいいのでしょうか?
このことについて、米国の教育学者が唱えた「経験学習サイクル」というものがあります。この「経験学習サイクル」は、環境の変化が著しい時代に於いて、日本の大手企業でも意識して採用されています。そこで 今日は、この「経験学習サイクル」について、調べてみます。
大前提として…
【「学習に影響を与える"要素"」について!】
*学習には、様々な形がありますが、成人に於ける「学習に影響を与えた要素」のうち「70%」が、その人の「仕事経験」によるというデータがあります。
これは 米国の「ロミンガー社」の調査で分かっています。残り「20%」は「人の観察やアドバイス」、そして「10%」は「能力開発の研修や書籍」となっています。つまり、人が学習し 成長する要素は、殆どが仕事上の「経験」からくるものということです。
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では…
【「経験学習サイクル」とは?】
*米国の著名な教育学者である「コルブ氏」は、学習に大きな影響を当たる「仕事経験」に基づいた学習プロセスは、「4つのステップ」から成り立つと定義しました。これを「経験学習サイクル」と呼び、多くの場で認識されています。
その"4つ"のサイクルは、以下です。
◆Step1「経験:具体的な経験をする」
◆Step2「内省:行動の振り返り・フィードバック」
◆Step3「教訓:経験を多面的にとらえ教訓にする」
◆Step4「実践:行動を修正し、挑戦する」
です。良い経験を積み、しっかりと振り返り、そこから教訓を引き出し実践し、更に その実践した経験を振り返っていく。これを繰り返すことが学びを深めていくというものです。
それでは、具体的に 各ステップを見ていきます。
【「経験学習サイクル」のステップ!】
◆Step1「経験:具体的な経験をする」
*「目指すべき目標」を設定し、「経験をする場」を自分自身に課すということです。設定する目標は本人の適性・バックグラウンド・キャリアによって、当然 異なります。自分にとって適度に難しく、発達が見込まれる目標を立て、実行することが良い経験の条件です。これを「経験学習サイクル」に於いて、適切な「ストレッチ(発達的挑戦)」といいます。
◆Step2「内省:行動の振り返り・フィードバック」
*経験したことを「内省」を行い分析します。ビジネスに於いては「振り返り」と呼ばれるこの作業が、経験学習サイクルに必要な要素「リフレクション」です。「振り返り」に於いては、「その経験から何かを学び取ろうという意欲がある。」ことが大前提です。
◆Step3「教訓:経験を多面的にとらえ教訓にする」
*経験した内容について振り返りを行い、「これは上手くいった(これはダメだった)。だから 次はこうした方が良いのではないか」という仮説を立て、行動や方針を変更していきます。
「こうやったら上手くいく!」という手応えを"コツ"や"秘訣"として、しっかり認識することが大切です。
◆Step4「実践:行動を修正し、挑戦する」
*教訓を職場で実践するプロセスです。実践して、また 新たな経験を得ることで、次の新しいサイクルステップ1「経験」に移行します。
このサイクルを回していくことで、より良い学習になるということです。
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【良質な「経験学習サイクル」に必要なこと!】
良質な「経験学習サイクル」を行うには…
●Step2に当たる「良質な振り返り」に最も注力することと言われています。
何故なら 「振り返り」は、客観的にモノごとを捉えて、自分の行動をより効果的に修正することが出来るからです。例え 失敗経験しても、「振り返り」をしないと、当然 また 同じ失敗を繰り返します。その際の姿勢としては、下記の観点で行うことが重要です。
〇好奇心を持って行うこと
〇挑戦する姿勢
〇批判も受け入れられる度量の広さ、柔軟性
〇変化を楽しむ姿勢
〇周りの意見に耳を傾ける姿勢
上記の観点を実践できれば、良い「振り返り」でき、当然 学びも大きくなります。他者よりフィードバックを受ける際は、厳しい意見でも柔軟に耳を傾け、自分に肯定的なフィードバックだけではなく、批判さえも「自分と違う考えに触れる経験ができラッキー」と、前向きに受け入れる姿勢が必要です。
また 大事なことは、「振り返り」と「反省」の違いを理解することです。
【「振り返り」と「反省」の違いについて!】
●個人やチームで「振り返り」を行う際には、その振り返りが「反省」に留まらないことが重要と言われています。
「反省」とは、既に起きてしまったことに対して、「何故 それが起きてしまったのか?」、「責任は、どこにあったのか?」など結果や要因に注目しています。一方「振り返り」の際にも、起きたことの結果や要因を扱いますが、焦点は そこではなく、それらを踏まえて「具体的な次のステップ」を決めることです。
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◎ここまで、「経験学習サイクル」について調べました。
その過程で感じたことは、学習に特別な方法は存在しないと言うことです。ビジネスの場でも「PDCA」という言葉がよく使われますが、この「経験学習サイクル」も、全く同じことを述べられています。それは"地味"なことであり、時間を要することです。当然 体力も使います。しかし 一番 効率の良い方法とも言えます。
つまり…
●結局は、「日々 どれだけ自分が、ちょっとした努力をしたのか?」というところに落ち着くのだと思います。
そして その原点は「『耳と目と心を持って聴く』姿勢であり、全て 今の目の前のことへの捉え方が大事」だと思います。この状態になると、自然と次への行動ステップを考え始めます。それは 既に「経験学習サイクル」を回している状態であり、一歩一歩、着実に進んでいった先に、自分の成長、強いては 自分にとっての成功があるのだと思います。
「経験学習サイクル」と表現されると難しく感じますが、何も難しいことではなく、ある意味 当然ことを違った表現で使われているだけだと思います。
最後に マネージメント研究に於いて、第一人者の「ピーター・ドラッカー氏」の有名な言葉を紹介します。
●「効果的な行動の後には、静かな振り返りを行おう。その静かな振り返りからより効果的な行動がうまれる」
長くなりましたが、以上です。
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