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  • 株式会社コンカン

【若手社員の成長期!】第57回:「『プロジェクト・アリストテレス』をご存知ですか?」〜グーグルが導き出した社員の「生産性」を高める唯一の方法!~

社会人として組織に属した経験がある人なら 誰しも一度は、「上手くいく組織って、どんなのだろう?」と考えた事があると思います。私も 人事領域に携わった事はありませんが、組織で働いている以上、とても 興味のある問いです。そんな中、先日 人事業界に勤める先輩から面白い話を聞きました。それが「プロジェクト・アリストテレス」です。とても興味深い お話だったので、今日は このことについて調べてみます。





先ず…

【「プロジェクト・アリストテレス」とは?】

●これは、グーグルが2012年から「生産性向上」を目的に始めたプロジェクトのことで、「何百万ドルもの資金」と「約4年の歳月」を費やしました。

ことの始まりは、グーグル社内には様々な業務に携わる数百のチームがあるが、その中には「生産性の高いチーム」もあれば、「そうでないチーム」もあり、その原因を追求しようとしたことです。「同じ会社の従業員なのに、何故 そのような違いが出るのか?」グーグルという世界一の企業が、会社規模で様々な角度から分析し、より生産性の高い働き方を提案することが「プロジェクト・アリストテレス」なのです。


ーーー

【共通するパターンが見つからず、大苦戦!】

しかし…

●意外なことに、中々 結論を見い出せませんでした。これこそが、この実験の面白さなのです。

「プロジェクト・アリストテレス」では、社内の様々なチームを観察し、上手く行っているところと、そうでないところの違いを明らかにしようとしました。分析の対象として、特に重要視したのは「チームワーク」です。ビジネスが複雑化している今日に於いて、多くの業務は1人では出来ず、どうしても チームによる共同作業が多くなるからです。

しかし データに関するエキスパートが集まるグーグルでさえ、簡単には結論を出せませんでした。例えば「同じチームに所属する社員は、社外でも親しく付き合っているか?」「彼らは、どれくらいの頻度で 一緒に食事をしているか?」「彼らの学歴に共通性はあるか?」「外向的な社員を集めてチームにするのがいいのか? それとも内向的な社員同士の方がいいのか?」「彼らは同じ趣味を持っているか?」など、多岐に渡る観察を行いました。


しかし…

社員の分析からは、目立ったパターンを見い出すことができなかったのです。

例えば 同じ生産性の高い「2チーム」があり、片方は「社外でも仲良く付き合う友達同士」のような関係であり、もう片方は「まともに会話するのは会議室の中だけで、そこを出れば アカの他人」というような関係であったりと、中々 共通点が見い出せないのです。他にも あるチームでは「強いリーダーのもとに階層的な人間関係を築いていた」のに対し、別のチームでは「もっと フラットな人間関係を敷いていた」などです。それでも両者の生産性に、殆ど違いは見られませんでした。


次に…

生産性を高めるポイントとして、チーム内で共有する「暗黙のルール」や「行動規準」、或いは「チーム・カルチャー」が影響を及ぼしているのではと考え、これについても検証しましたが、この点でも目立ったパターンを見い出すことができませんでした。

それどころか、同じく生産性の高いチームなのに、全く正反対の規範に従っているケースも珍しくありませんでした。例えば あるチームでは「会議中にリーダーがチームメイト全員に等しく発言する時間を与え、それを別のチームメイトが途中で遮ることを許さなかった」のに対し、別のチームでは「互いに発言の途中で割って入るのが常態化していた」などです。このような「暗黙のルール」の違いはあれど、結果には そんな影響がなかったのです。

ここまで来ると、それは「働き方」の問題ではなくて、単に「メンバーの能力の違い」によるのではないかと考えられます。つまり 優秀なメンバーが集まったチームは、常に 成功しているし、そうでないなら 失敗しているという単純な話です。

しかし 実際は、そうではありませんでした。何故なら グーグルのチーム編成は固定化していないからです。つまり 一人の社員が異なる業務目的に応じて、同時並行でに複数のチームに所属しているのです。中には、複数チームを跨いで活動しながらも、驚くべきことに片方のチームの生産性は高く、もう片方は低いこともあったのです。


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【成功の"鍵"は「心理的安全性」?】

●中々 結論を見出せないグーグルが次に考えたことが、数値化できない「心理的安全性」です。

つまり…

「他者への心遣いや同情、あるいは配慮や共感」といった「メンタル要素の重要性」です。例えば「こんなことを言ったらチームメイトから馬鹿にされないだろうか」、或いは「リーダーから叱られないだろうか」といった不安を、チームのメンバーから払拭することです。心理学の専門用語では「心理的安全性」と呼ばれ、安らかな雰囲気をチーム内に育めるかどうかが、成功の"鍵"という仮説を立てたのです。

では「そのために具体的に何をすべきか?」と考えると、これは 中々 難しい問題です。何故なら、言語化・数値化が出来ないからです。更に、グーグルの社員は、数字やデータの分析は得意だが、他者への配慮や同情となると、欠如している訳ではありませんが、少なくとも それを表現するのは、あまり 得意ではなかったからです。


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【「自らの健康状態を告白したリーダー」からヒントを得ることに!】

そんな中、何とか結論に辿り着きたいグーグルの人員分析部では、2014年後半に当時の社員5万1.000人の中から、チーム・リーダー格の有志を募って、彼らに「プロジェクト・アリストテレス」の主旨や調査結果を伝えました。そして 彼らに対し、自らのチーム内に「心理的安全性」を育むための具体策を考えるよう促しました。

そうしたチーム・リーダーの一人に、ある日系アメリカ人の男性がいました。彼を中心に結成されたチームは それまで、中々 生産性が上がらず、彼も その事に悩んでいました。先ずは、チームメイトへのアンケート調査を実施し、「社内に於けるチームの役割や目的」或いは「自分たちの仕事が会社に与えるインパクト」などを評価して貰ったところ、彼のチームメイトたちが 下した自己評価は、いずれも極めて低いものでした。


これに衝撃を受けたリーダーはチームの全員を集めて、ミーティングを開きました。そこで 彼は「これから君たちの知らないことを打ち明けよう」と断った上で、自身が「スピードは遅いが転移性の癌に冒されている」ということを告白したのです。しばらく 沈黙が続いた後、チームメイトの一人が立ち上がって、自分の健康状態を打ち明けました。そこから 次々に、チームのメンバーの一人ひとりが自らのプライベートな事を語り始め、それが終わるころには、自然に今回のアンケート結果についての議論へと移行していたのです。


では、ここから結論に入ります。

【「本来の自分」でいられる職場を目指して!】

今プロジェクトの結論は…

●「社員一人ひとりが会社で本来の自分を曝け出すことができること、そして、それを受け入れるための「心理的安全性」、つまり 他者への心遣いや共感、理解力を醸成すること」というシンプルな結論に至ったのです。これは 仲が良いとは違います。弱みも打ち明けられる雰囲気の事です。

その上で「プロジェクト・アリストテレス」の結果から浮かび上がってきた新たな問題は、「個々の人間が仕事とプライベートの顔を使い分けること」の是非です。勿論 公私混同は良いとは言えませんが、同じ一人の人間が会社では「本来の自分」を押し殺して、「仕事用の別の人格」を作り出すことの是非であり、多くの人にとって、「人生」の時間の大半を占める「仕事」で、仮面を被って生きたところで、チーム自体が上手く機能しないのです。これが「プロジェクト・アリストテレス」から導き出された結論なのです。


実は この余りにもシンプルな結論に、グーグルが 中々 辿り着けなかった事に多くの人が驚いたと同時に、価値ある結果として多くの企業が参考にする事になったのです。

実際には、もっと 具体的には、このプロジェクトの結論が公表されています。気になった方は、是非 見てみてください。


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◎と言うことで…

この面白さは、「言われてみると、当たり前の結論である点」、そして あのグーグルが この結論に至らなかった点だと思います。それは 数値化・データ化が得意なグーグルが、数値化・データ化によって結論を導きだそうとしたからではないでしょうか?

この結論である「心理的安全性」を自分に落とし込むとしたら、日々の会話の中で積極的に「価値観・想い」をベースとした会話をすることだと思います。それは、ある事象に対して「どう感じたか?」「どんな価値観を持っているか?」「あなたは、どんな人間なのか?」など、感情、気持ち、信念を中心に置いた会話のことです。この対極にあるのが、「事実」のみをベースとした会話だと思います。それは 人の感情を抜きにした「正論」だけの会話です。そもそも 「正論」こそ、これからの「AI時代」に、最も淘汰されるキーワードの気がします。


つまり この結論を、更に自分ごとにすると…

●「価値観・想い」をベースとした会話をする為に、「傾聴力」を鍛えるということです。

「傾聴力」は、ただ 聞き手に徹するだけではありません。言葉の意味を理解するだけでなく、表情や声のトーンなどまで注意を払い、相手の気持ちに寄り添いながら聞くことです。この「価値観」や「性格」を理解し認めてあげようとする"姿勢"が、「心理的安全性」に繋がり、それが生産性向上になるのだと思います。長くなりましたが、以上です。

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