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【若手社員が勝手に"イケてる企業のC.I.を切る"!】「第85回:株式会社 八天堂」

今日は 若手社員の私が、成長している企業のC.I.を紹介します。廃業の危機から復活し、ある商品で超有名になった企業です。

第85回は、広島から今や全国区の知名度を得ている「くりーむパン」を販売している「株式会社 八天堂」です。


【企業概要】

「八天堂」は広島県三原市に本社を構える企業です。事業内容は、スイーツパンの製造、企画、販売を行なっていて、特に「くりーむパン」が話題になり、一気に成長した企業です。最近では、駅構内や駅ビルを中心に、関東・中部・関西・中国・九州エリアで販売店を展開しています。また ローソンなどのコンビニや、ロッテなどとのコラボもしており、ここ数年で目にする機会が増えました。売上高は「21,4億円(2020年5月)」、従業員数「180人(2021年5月)」とスイーツを扱っている企業としては、かなり大きな規模を誇っています。


そんな「八天堂」の1番の特徴といえば、その「歴史」です。ここからは、その歴史を紹介していきます。

「八天堂」の創業は1933年にまで遡ります。広島県三原市で現社長「森光 孝雅氏」の祖父 「森 光香氏」が創業しました。当時は和菓子店でしたが、すぐに二代目にあたる息子が引き継ぎ、洋菓子を取り入れました。そして 広島県三原市に「たかちゃんのぱん屋」をオープンさせました。「焼き立て」を売りにしたパンを販売したところ、すぐに軌道に乗りました。当時、三原市にはコンビニチェーン店も無く、また焼き立てのパンを出すお店は希少だったのです。

そこからは、現社長の「森光 孝雅氏」が会社を引き継ぎ、一気に規模を拡大し、最大で13店舗にまでなりました。しかし 実は、その焼き立てパンの店は4年目くらいから勢いに陰りが見え始めていました。外部環境にも変化があり、コンビニや焼き立てパンを提供するお店が徐々に増えてきたのです。既存店の売上が減って赤字になる一方で、新しいお店を出して売上を確保するという状況が続いていました。当時は現社長も経営の知識も経験も全くなかったので、「それで良い」と思って拡大路線を続けていたのです。しかし そんなとき、取引先の銀行から電話があり、弁護士事務所に連れて行かれました。 そこで目にしたのは、なんと 「民事再生手続き」と「破産手続き」に関する書類 でした。現社長一人が突っ走って多店舗展開してしまった末路だったのです。


そんなとき、「兄さん、自分の貯金が2,000万円あるから、このお金で何とか店を立て直してくれ 」と、弟から現社長に電話があったそうです。実は パン屋が拡大路線だったとき、現社長は父との関係が上手くいっていませんでした。何故なら、現社長はどんどん売上を増やしていたので、どこかで昔ながらの職人である父を見下していた所があったからです。だから、現社長は当時は父の言葉には耳を傾けていませんでした。でも、弟からの電話で気付かされました。

この時に現社長は、「弟には家族もいるのに、私に自分の全財産を託してくれた。弟をそんな人間に育てたのは紛れもない父。それに比べて、私は自分のことばかり。 『父には遠く及ばない…』。」と、心の底から思い知った瞬間だったそうです。


そこからは、経営を全て見直し、競合が増えてきたパンの小売から「卸売業」へ業態を転換することにしました。この きっかけは知人の「スーパーマーケットでも、天然酵母や無添加のパンが買えたらいいのに…」という一言でした。当時、広島県内のスーパーに棚置きの「こだわりのパン」はありませんでした。それなら、パン屋である「八天堂」のこだわりパンを袋詰めにしてスーパーで販売すればいいと閃いたのです。早速、地元のスーパーマーケットに営業をかけたところ「ぜひ置いてほしい」という答えが返ってきました。しかも、一般的には100円で販売されている種類のものでも、素材や製法の付加価値によって130円で売れます。当然、材料費も高いのですが、それでも利益はしっかり取ることができました。それから3年ほどかけて、広島県内の殆どのスーパーマーケットに置くことに成功しました。その間に パン屋の赤字店舗を整理しながら、卸売を主体に業態を転換。ついにV字回復を果たしました。

しかし 現社長は、過去に焼き立てパン屋で大失敗していた経験もあり、「このままいくと、また同じような状況に追い込まれる」と大きな危機感を感じました。そんな時、「八天堂」と同じ三原市で昭和8年に創業した和菓子店「共楽堂」の社長が「三原では売れないから」と、マスカットを求肥で包んだお菓子「ひとつぶのマスカット」で東京進出を果たし、ヒットさせていることを耳にします。実際に東京の様子を見てみると、確かに「一品専門」の小さなお店が繁盛している。また 現社長としても、過去の失敗を経て多くの経営者から学び、「選択と集中」の考え方に注目していた頃でした。そこで何と、「卸売業をやめて、一品に特化しよう!」と、再びビジネスの方向転換を打ち出しました。これが「八天堂」が、更に成長するきっかけになります。この時 生まれたのが、「八天堂」の名物である「くりーむパン」なのです。


【企業名の由来】

初代「森 光香氏」は店舗の名前を考える際、地元にある「八天堂」というお堂に関心を持ちました。「昔から地元にあり親しまれているお堂『八天堂』のように、自身の和菓子屋も地元から親しまれ、愛されるお店にしたい。」そのような思いから、「八天堂」という名前を店舗の名前に使えないものかと考えます。そこで、早速 地元の人たちに相談をしたところ、全員が快く「八天堂」という名前を使うことに賛成してくれました。そうして昭和8年、広島県三原市に開店した小さな和菓子屋は「森光 八天堂」と名乗ることとなったのです。


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それでは ここで、「八天堂 株式会社」の、"イケてるC.I."の一部を紹介します。

【信条(クレド)】

八天堂は社員のために

お品はお客様のために

利益は未来のために


【経営理念】

良い品 良い人 良い会社づくり


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【若手なりの成長理由 分析】

ここからは、若手なりに「八天堂 株式会社」の成長理由を、仮説ですが "3つ"上げさせて頂きます。

先ず、結論からいうと…

◆1.「過去の体験から反省して創り上げた、理念に対する想い!」

◆2.「徹底的な『選択』と『集中』!」

◆3.「敢えて『デジタル』ではなく、『アナログ』にシフトしている点!」

の"3つ"です。それでは、1つずつ見ていきます。


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◆1.「過去の体験から反省して創り上げた、理念に対する想い!」

*現社長の「森光 孝雅氏」は、理念に対して並々ならぬ想いを持っています。それは、過去からの反省があるからです。それは、「森光 孝雅氏」が「八天堂」の社長となり、焼き立てパン屋の経営が行き詰まり、卸売業も畳む形になってしまって、一緒に働いてくれた社員・スタッフに、多くの迷惑をかけたという反省です。この経験から、「これからは絶対に良い組織を作り、人や社会に報いていかなければ」という強い想いを持っています。 この「贖罪」の気持ちが、社長の原動力となっています。

勿論、当時も従業員に対して「非常に申し訳ない」という気持ちはありながらも、一方で「経営がうまくいっていない時だからこそ、もっと一緒にがんばってほしい」と期待してしまう気持ちもあったそうです。当時は、「事業の成長」と「人の成長」の2択なら、「事業の成長」を選んでいたということです。ある程度、会社として経済的な余裕を持って安定させないと、人材育成や組織づくりはできないと思っていました。しかし 結果的に、企業はブラック企業化し、従業員は殆どが辞めていく。しかも 辞める方が悪いと考えていたのです。この経験から、「絶対に2度と同じことをしない。そのために、原点に立ち返ろう」と決意し、作り直しを行ったのが現在の理念です。


*それからは、社長は365日、常に社員の誰かと食事を共にしていました。 その場でも、自分の分身を作るつもりで「何のために」ということを伝え続けていたそうです。2013年には、経営理念や信条、ビジョン、スローガンなどをまとめた小冊子「HATTENDO BOOK」も作成し、社員全員に配布しました。その結果、2019年には「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞を受賞しました。この時には、審査員の方に、理念の浸透度が「東大レベル」と言われたそうです。


*私自身も「八天堂」も理念を知った時に、シンプルだけれども、物凄く力強い言葉だと感じました。そして、実際にこの経営理念に基づき、しっかりとした会社経営をされていて、そのベースが、今の成長・成功を齎しているのだと思います。実際 社員教育にも非常に力を入れていて、そういった基礎があるからこそ、一過性のブームで終わるのではなく、継続的な発展に結びつけていくことができてるのではないかと感じました。


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◆2.「徹底的な『選択』と『集中』!」

*実は「八天堂 」では過去に、100種類以上のパンから、現主力商品である「くりーむパン」一つに絞るという決断をされています。それまでの商品開発の失敗と成功の原因を徹底的に分析したところ、パン店で失敗したのは、趣向を凝らした商品にこだわり過ぎたからという結論に至ったからです。珍しい商品は、最初は興味を引いても、すぐ飽きられます。考えれば考える程、アンパンやクリームパンなどの定番商品に磨きをかけないと、常連客は獲得できないという結論になったのです。こうした分析結果から、定番でかつ明確な特長がある商品作りが必要という方向性が生まれました。その視点で、他社を見ると、2005年頃から単品で成長している店が増えていることが分かりました。例えば 首都圏では洋菓子のラスク専門店「ガトーフェスタ ハラダ」が台頭。地元の広島県三原市でも、「共楽堂」が マスカットを包んだ和菓子「ひとつぶのマスカット」だけを東京に売り込んでヒットさせていました。そこで「八天堂 」もm定番でありながら強い特長のあるパンを一つ作り、それだけを売ると決めました。


*そこで社内で議論した上で、「クリームパン」に絞って試行錯誤を続けました。その結果、薄力粉を使ってまず生地を焼き、クリームを充填して冷蔵保存する。こうすれば、遠方まで運んでも、食べるときにしっとりした生地とクリームが相まった心地よい口どけが保てると分かり、「くりーむパン」が生まれたのです。あっさり成功したように見えますが、開発には1年半ほどかかりました。これができたは、間違いのない選択と集中を行ったからです。勿論、ずっと単品戦略だと飽きられます。だからこそ、発売当初の一年はカスタードクリーム味一本で勝負し、お客様の認知度を高め、人気が定着したら、抹茶やチョコレートなど味を増やす戦略を取りました。クロワッサン生地の商品を出すなど、変化させることにしたのです。

「八天堂 」が行ったのは、「先ずは、『選択』と『集中』で一点突破を行い、一点を突破したところで横展開」ということです。まさに 資金が限られた中小企業ならではの戦い方だと思います。


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◆3.「敢えて『デジタル』ではなく、『アナログ』にシフトしている点!」

*「八天堂 」は老舗企業でありながら、さまざまなチャレンジを続けています。そして そのチャレンジの特徴が敢えて「アナログ」にシフトしている点です。

2016年には、広島空港前の工場に併設して、「八天堂カフェリエ」をオープンしました。これは 工場見学だけでなく、実際にパンづくり体験も行える体験型の店舗です。お店の外では、何と2頭のポニーと触れ合う農園も設置されています(ちなみに名前は“マロン”と“クリーム”)。 これには、「デジタル化」が進めば進むほど、人は「アナログ」を求める習性があるという視点に基づいて、敢えてリアル店舗などをオープンさせています。これは 色々と分析すると、動物園にスーツ姿の大人が増えているというデータを発見して、現社長は「アナログ化」の確信をしました。「八天堂 」では「アナログ」を極め、非日常的な空間やサービス、コミュニケーションや触れ合いを通じ、楽しく温かくサプライズを提供するためにカフェリエを始めたのです。

*2020年には、道の駅とコラボし、広島空港前のこの地に食のテーマパークを建設しました。これは 地元の物産を販売したり、広島らしく鉄板と掛け合わせたスイーツを提供したりすることで、地域を盛り上げると同時に、「くりーむパン」をはじめとした食文化を、「三原」から東京、全国、さらに世界へ発信していくことを目指したものです。そして 寿司やすき焼きやラーメンのように、“くりーむパン”という言葉が世界中に広まり、食文化として定着することを目標にしています。

ーーー ◎と言うことで… 「八天堂さん 」を調べてきましたが、「八天堂さん」の成功の裏には、素晴らしい戦略や戦術の影響もさることながら、実はもっともっと根本の「理念」や「志」が大きかったのだろうと感じました。森光社長のインタビューを読んでも、このことを頻繁に強調されています。会社更生法寸前まで追い込まれたどん底の状態から、自身が人生をかけて、全てを注ぎ込めるような納得のいく理念であり、浮ついた美しい言葉で飾ったものではなく、真に自身の思いや志から生まれ出てきた言葉だと感じます。 そんな中でも、私が印象に残った言葉は、「昔は事業の成長と人の成長の2択なら、事業の成長を選んでいた」という言葉です。人は 追い込まれれば、追い込まれるほどお金が見え隠れする方を選んでしまいがちだと思います。しかし 結局は、自分の倫理観に即した、正しい決断を行った方が、長期的にはお金として返ってくると言うことだと思います。人は誰しも困った時は、安易な決断をしがちだからこそ、1人の人間として本当に正しいと思う方を決断をする勇気が求められている、このようなことを学びました。 「八天堂さん 」については、私もこの機に初めて知りましたが、何だか勝手にファンになってしまいました。そして これは、恐らく 偶然ではなく「八天堂さん 」はこういった魅力を持たれている会社なのだと思います。 ーーー ◯それでは 最後に、C.I.について、若手なりに一言いわせて頂くと… 調べた通り、過去の失敗から並々ならぬ、想いを持っていて、社内に対して いい企業をつくるという覚悟が、ふつふつと感じる言葉で理念を作られていると思います。しかし 大事なことは、理念は企業外の消費者に向けたメッセージでもあるということです。特に 企業の存在意義というのは、一般消費者に向けた、企業が作り上げたい世界観を表現していて、これは企業である以上、必ず存在するものだと思います。「八天堂 」さんの場合だと、その 外向けの言葉が見つからないことが少し気になりました。外向きに創り上げたい「世界観」を表現されると、更に一般消費者にも「八天堂 」さんの価値が伝わり易いと思いました。ちょっと、ここで私になりに「企業理念」を考えさせて頂きます。

ちょっと、ここで私になりに「企業理念」を考えさせて頂きます。 ●「こだわり抜いた菓子を、地球の裏側の人の心まで届け、子供の笑顔の輪を広げる!」 社長のインタビュー記事で、「広島から世界」という言葉がありましたので、こう表現させていただきました。

また 出来れば、あくまで参考程度にですが、コンカンが提唱するC.I.と、御社のC.I.を、一度 照らし合わせて頂けると有り難いです。 *concanが考えるC.I.とは? https://www.concan.co.jp/post/topics-ci 長くなりましたが、以上です。

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