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  • 株式会社コンカン

【若手社員が勝手に"イケてる企業のC.I.を切る"!】「第18回:株式会社 星野リゾート」

今日は 若手社員の私が、成長している企業のC.I.を紹介します。以前から気になっていて、何時かは調べてみたいと思っていた『企業』です。第18回は、「リゾート運営の達人」をビジョンに掲げ、数々のリゾートホテルを創り上げてきた「株式会社 星野リゾート」です。




星野リゾートは、1914年に初代「星野 嘉助氏」が軽井沢に星野温泉旅館を開業したのが始まりです。大正から昭和にかけて軽井沢は多くの文化人、著名人が利用する"観光地"として栄え、「星野温泉」も与謝野夫妻や北原白秋、島崎藤村などが旅先で訪れたと言われています。

「温泉旅館」が国内旅行の主流だった時代は過ぎ、バブル崩壊と共に旅館業が斜陽を迎えた1991年に現代表である「星野 佳路氏」が社長に就任されます。

実は、この「星野社長」が強烈です。星野リゾートは、100年続く同族企業であり、星野社長は 4代目に当たります。星野社長が、1991年に家業を継いでから、現在の「星野リゾート」が誕生し、規模は当初の2倍以上に成長しました。そんな 星野社長が会社を承継した時、そのやり方は 中々 乱暴なものでした。というのも、彼は 元々 ファミリー・従業員の間で横行する公私混同や遵法意識の低さに不満を持ち、当時 社長だった父親と衝突することも多かったのです。そして 何度 言っても「やり方」を変えない父に、とうとう嫌気が差し、1991年取締役会で父を追い出し、経営権を握ったのです。

平和な方法ではありませんが、星野社長は新しい時代にあった、より良い会社を創るため、変革を起こす必要性を強く感じていました。星野社長は、事業継承後 社名を「星野リゾート」に改名し、組織内の一族による公私混同といった同族経営の悪い部分を正すだけでなく、経営方針や事業内容も大きく変革しました。

これには、社長自身が大学を卒業後、ホテル経営について学ぶために渡米し、1986年に「コーネル大学ホテル経営大学院」で修士号の取得までされ、本当の経営を学んで来られたからだと思います。今では、国内外に45施設の宿泊施設を運営しています。(※売上高非公開)


「星野温泉旅館」の経営からスタートし創業から100年経った今では、ホテル宿泊客満足度調査で「日本1位」となり、星野リゾートはホテル・旅館運営のトップブランドの地位を確立しています。

そんな「星野リゾート」ですが、大きく分けて 3つのリゾートブランドを運営していて、それぞれのコンセプトを明確に分けています。

◆1.「星のや」

圧倒的な非日常感を演出する日本発のラグジュアリーな和の滞在体験

「現代を休む日」

*約8万円/一泊一部屋


◆2.「界」

地域の魅力を再発見 心地よい和にこだわった上質な温泉旅館

「王道なのに、あたらしい」

*約7万円/一泊一部屋


◆3.「リゾナーレ」

洗練されたデザインと豊富なアクティビティを提供する リゾートホテル

「大人のためのファミリーリゾート」

*約5万円/一泊一部屋


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【ホテル業界の現状】

*2015年には、1.5兆円だった市場規模は、2019年には2.3兆円となり、インバウンドの恩恵を受け最も成長していた市場の一つです。しかし 新型コロナウイルスの世界的な流行によって、宿泊業が受けたダメージは非常に深刻で、2020年の客室稼働率は前年比の8割減となりました。

更に 売り上げの大幅な減少だけでなく、感染拡大防止策として検温や消毒が必要となり、備品・消耗品の費用や人件費もかさみ、この状況下で休業せざるを得なくなったホテルの中には、営業を再開できないまま倒産するケースが相次いでいます。人の移動が大幅に減り 最も苦しい市場と言われています。


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それでは、そんな厳しい市場でも規模を拡大し続けている「株式会社 星野リゾート」の"イケてるC.I."を紹介します。

【ミッション】

「日本の観光をヤバくする」

【vision】

「リゾート経営の達人になる」


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それでは、若手なりに「星野リゾート」の成長理由を分析させて頂きます。

【若手なりの成長理由分析】

「株式会社 星野リゾート」の一番の成長理由は…

●ホテル毎の徹底した「コンセプト戦略」です。そのコンセプトは、経営層が決めるのではなく、現場の従業員が主体性を持って決めることを重視されています。例えば、2009年に運営を開始した「タラサ志摩」では、従業員の半数が参加したコンセプト委員会を設置し、結論が出るまで 7ヶ月を要したこともあったそうです。

これには 星野社長の考えとして、「従業員がコンセプトに共感していれば、そのコンセプトを実現しようと、自ずと"モチベーション"も上がるため、従業員がコンセプトを決めるべきだ」というものがあります。これは、アメリカの経営学者ケン・ブランチャード氏とシェルダン・ボウルズ氏の書籍「1分間顧客サービス」の記述に基づいたものだそうです。

*また、コンセプトが決まるとターゲットの絞りこみができ、提供するサービスの可否も判断できるようになります。例えば、「非日常感」をコンセプトにしている「星のや」の客室にはテレビや時計を置いていません。それが「星のや」のコンセプトであり提案だからです。そして、そのコンセプトに共感してくれる人だけをターゲットにしているため、テレビが欲しいという要望に応える必要がないのです。これは「ニッチ戦略」に繋がっています。星野リゾートで言う「ニッチ戦略」というのは、顧客数の単純な最大化を狙うのではなく、「こういう顧客ならば、うちにいらしていただければ 120%満足していただけるはず」 というお客さまに訴求して効果の最大化を狙う戦略です。

必要なサービス、不要なサービスが明確になることで、無駄なサービスを増やすことがなくなり"コスト"を省くことが可能になり、更には 他社との差別化も実現しているのです。

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それでは 更に、上記に付随する形とはなりますが、若手なりに成長理由を仮説で「4つ」上げさせて頂きます。

◆1.「本当の『日本らしさ』を追求している点!」

*星野リゾートが手掛ける施設は、日本の文化を現代風にアレンジし、その土地の魅力と掛け合わせることで、そこにしかない『非日常空間』を生み出しています。現在は、多くの外資系ホテル、そして 日本企業が存在しながらも西洋式にアレンジしている宿泊施設が多く存在しています。そんな中でも 星野社長自身、「本当の日本らしさ」は何なのかを常に問い続けているそうです。

これには、社長自身の、大きな原体験が"2つ"あります。

*一つ目は、星野社長が 米国の経営大学院に進学して1年目が終わるころに大学院生が主催者となり、業界のトップを招いてパーティが開かれた時のことです。フォーマルウェアで参加するようにとの連絡を受け、星野社長はスーツ姿で会場に向かったそうです。すると、普段はジーンズにTシャツの同級生たちは皆、自国の民族衣装を身に着けていました。『サリー』を身にまとったインド出身の学生に、『白い衣装』の中東出身の同級生。彼らは星野社長を見て、笑いながらこう言ったそうです。「日本には、長い歴史があると聞いていたのに、何故 お前はイギリス人の格好なんだ?」

社長自身 フォーマルといえば、スーツだとばかり思っていたし、日本では それで正解です。しかし、ここでは スーツを着ているだけで笑われ社長自身 この時を振り返り「日本文化は知名度が高く、エキゾチックであり、世界で評価されている。そして、良くも悪くも『お前は日本人だ』となった瞬間に、世界の人たちは自分に対して一定の『日本らしさ』を期待する。その根本的なニーズに応えない限り世界では戦えない」と。

*そして 2つ目は、日系のホテル運営会社の社員としてシカゴでホテル開発に携わっていた時です。ホテルの開業リリースを出した直後、現地の記者から こう質問を投げ掛けられたそうです。「日本の運営会社がアメリカまで来て、何故 西洋ホテルを運営するのか?」これに返すべき"言葉"が見つからなかったそうです。日本の寿司職人が 何故、わざわざニューヨークに来てフレンチレストランをやっているのか聞かれるのと同じことだと思います。事実、社長が携わっていたホテルを含めた日本発のホテル運営会社は 軒並み米国市場から撤退しました。


このような経験から、日本発の世界ホテルを目指して「日本らしさ」を問い続け、これが日本でも乱立している外資ホテルとの差別化ポイントともなっています。また 単に伝統を守るだけではなく、現代のニーズに合わせることを意識していることが強みだと思います。


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◆2.「ホテルの運営のみに徹している点!」

*星野リゾートの特徴として「所有と運営の分離」が挙げられます。星野リゾートは、運営に特化し、所有する施設は別のオーナー企業が存在します。この仕組みは、運営会社はオーナー企業から施設を一任され、運営費を受け取る「ビジネスモデル」です。これにより、身軽な運営をすることができ、お客さまの満足度を高めることだけに集中できます。

*とはいえ「所有と運営の分離」にもデメリットがあります。例えば、運営していた施設が所有するオーナーの意向で契約満了になることもあるからです。実際、運営を終了した施設は 7ケ所あり、施設運営の継続はオーナー次第というリスクがあるのです。そこで、この課題に対して星野リゾートが打ち出した次の一手こそ「星野リゾートリート投資法人」なのです。

星野リゾートリート投資法人は、星野リゾートの100%出資会社として、2013年に東京証券取引所に上場しています。「リート(REIT)」とは、不動産投資信託のことで、投資家から集めた資金を使って不動産に投資し、そこで 得られた利益を分配金として投資家に還元する仕組みです。星野リゾートがリートを立ち上げたことによるメリットとして、施設を所有するオーナーに左右されるリスクが軽減されることに加えて、星野リゾートから賃料を受けとり、利益を投資家に配分することで、個別オーナー企業に左右されることなく長期的なビジョンを描いて経営に集中することができます。


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◆3.「社員をマルチタスク化させている点!」

*ホテル業界の最大の問題は、朝と夜に仕事が集中し、昼間は手待ち時間となる「中抜けシフト」と呼ばれるものです。

人によっては、それは自分の仕事ではなく、他のスタッフがやるべき業務となり、多くのスタッフを雇うことで人件費だけが上がってしまいます。これは 企業規模が大きくなればなるほど、組織の専門分化が進み、このような状態になります。星野リゾートの場合、スタッフの「マルチタスク化」を行い、1人のスタッフが特定の業務のみを担当するのではなく、複数の業務を担当しています。ホテル・旅館運営には、約200超の業務が必要と言われていますが、それを「フロント」「料飲サービス」「ハウスキーピング(客室清掃」「調理」の4つの業務に整理し、これら全てをマルチタスク化し、業務量に応じてスタッフを適正配備して業務の効率化 及び 労働生産性の向上を推進しています。

このように複数の役割を担うことで、「中抜けシフト」を防ぐことができ、朝も夜も昼間も最低限の人数でオペレーションを回すことができるのです。


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◆4.「徹底的に顧客満足度向上を意識している点!」

*星野リゾートでは、1994年から顧客満足度についてのアンケートを行ってます。様々なサービスに対して満足度を7段階に分けて行い、「非常に満足」が50%になることを目指しています。こうした客観的な評価をもとに専門の分析チームが接客や料理、設備などサービスの改善を進めています。

*更に お客さまの「気づき」を集めることを徹底しています。例えば、お客さまが 食事で味噌汁をおかわりしたことや、生野菜のサラダが好みであることが分かれば、従業員が顧客管理システムへデータを入力し、そのお客さまが 次回の宿泊時には、事前に生野菜を食事に追加したり、味噌汁は 大きめのお茶碗を使ったりします。更に、その顧客データを見て作戦会議を行い、お客一人一人に合わせたサービスの提案も行なっています。

アンケート結果を大枠で分析するだけでなく、一人一人のお客さまの嗜好までを分析し、そのお客さまだけのオーダーメイドサービスを創り上げているのです。


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◎と言うことで…

「星野リゾートさん」は、自分たちの想いを"コンセプト"に落としつつも、アンケートなどを取りながら数字に徹底的に向き合い続ける姿勢が、とても凄いと思います。また 星野リゾートは、よくある経営戦略に従って経営をされていることで有名です。それよりも、お客さまに向き合い続けることが最も大事だと述べられています。当たり前のことですが、実行し続けることは難しいと思います。

星野リゾートは、これからは本気で海外に挑戦されようとしています。今まで多くの日系ホテルが欧米式に習ったホテルで海外展開に失敗してきましたが、星野リゾートは 日本独自の旅館という文化を持って海外で勝負しようされています。それでも先ずは、足元を見て 星野リゾートが目指しているのは、世界のホテルとしっかり肩を並べる存在になると言うことです。星野リゾートを通じて"日本文化"がどのように世界に受け入れられるのか、今後の星野リゾートさんが楽しみです!


そんな星野リゾートですが、コロナの影響で一時は売上が昨年対比で80%ダウンしましたが、2020年10月には昨年と同様の売上まで復活しました。それは、新しい取り組みを多く行ったからです。その代表例が「マイクロツーリズム」です。

「マイクロツーリズム」とは、国内外に45施設を運営する星野リゾートを活かし、遠方や海外をイメージすることが多い「旅」を、地元に目を向けて楽しむことを"コンセプト"とした新たな旅の「あり方」の1つです。

具体的には、移動しても感染リスクが低いエリアを"マイクロツーリズム商圏"として設定し、地元のお客さまに地域の魅力を再発見してもらう『旅行プラン』のことです。地域の方々に、改めて地域特性を発見し、愛着を持って頂くと同時に、星野リゾート自体が"馴染みの旅館"と認めてもらうことに成功したのです。

旅=遠出という普通とは真逆の発想が出来るのは勿論のですが、コロナ禍に於いて 瞬時に行動に移されたのが凄いです。


●最後に、アウトドア好きな私の意見ですが…

最高級な屋外ホテルがあれば良いと思います。アナログですがゴージャスなホテルです!

今流行の「グランピング」もありますが、自然豊かな山奥にありつつも、最高のリゾートホテルクオリティの客室と、フルサービスを受けられると、とても面白いと思います。例えば、焚き火後の温泉、どこよりも映えるルームサービスなど、アウトドアの楽しみを最大限取り入れつつ、グランピングを超える安心で贅沢なホテルがあれば良いと思います!


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●最後にC.I.について、若手なりに一言いわせて頂くと…

「日本の観光をヤバくする」というミッションに紐づく形で、「リゾート経営の達人になる」という明確なビジョンが分かり易いと思いました。しかし「日本の観光をヤバくする」というキャッチ的なミッションを、分かり易い言葉で説明する文章があると良いと思います。特に、"良い"という意味の「ヤバくする」が感覚的には伝わりますが、少し抽象的な表現なので、どんな状態を「ヤバイ」と指しているのかを言語化できると、一般消費者からもより共感を得られやすいと思いました。

出来れば、コンカンが提唱するC.I.と、御社のC.I.を一度 照らし合わせて頂けると有り難いです。

*concanが考えるC.I.とは?

生意気言って、申し訳ございません。長くなりましたが、以上になります。


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