今日は 若手社員の私が、成長している企業のC.I.を紹介します。 成熟市場と言われれいる家電業界に於いて、ここ数年で一気に成長している企業があります。 第13回は、設立からわずか15年で売上高 100億円を超え、今ではドイツや韓国・中国でも注目の家電メーカーとなった「バルミューダ 株式会社」です。
バルミューダは、2003年に東京で現社長の「寺尾 玄(げん)氏」によって設立された企業です。社長 自ら、パーツを町工場で削り出し、パソコン冷却台を発売したところから、企業の歴史がスタートしました。その後も、ハンドメイド生産のLEDデスクライトなど、美しくて性能も高い独自の製品の開発が続けました。
ちなみに、この「バルミューダ」 という社名は、造語です。社長自身がラテン圏を旅した経験から、ラテン語の発音を真似しつつ、クラシックでエキゾチックな表現にした結果、この社名になったそうです。
そんな バルミューダが脚光を浴びるきっかけとなったのは、2010年に発表した初のDCモーター搭載扇風機「The GreenFan」です。静音性、省エネ性ともに優れ、自然に近い心地良い風を生み出す扇風機として、大きな注目を集めました。2015年には、キッチン家電の分野にも参入し、科学的な観点から美味しいパンを焼くことを追求したスチームトースター「BALMUDA The Toaster」や、蒸気で炊き上げる炊飯器「BALMUDA The Gohan」などを開発し、メディアでも数多く取り上げられ、消費者にとっても お洒落で機能的な家電メーカーとして認識されるようになりました。今でも斬新なアイデアを盛り込んだ製品を、次々と世に送り出し続けている企業です。
一言でいうと… ●「クリエイティブ」と「テクノロジー」を掛け合わせて家電メーカーです。まさに、家電業界の「Apple」という表現が似合う企業です。
ーーーー 【寺尾 玄 社長について】 実は、社長の人生そのものが バルミューダの商品と同じように独創的なものです。社長は、17歳の時に高校を辞められています。何故なら、高校2年の時に配られた「進路アンケート用紙」に嫌悪感を抱いたからです。その用紙には、「将来、どんな職業に就きたいか」「その為にどの大学の何学部に進みたいか」「その上で、3年次は文系、理系、文理系のどのクラスに進みたいか」という質問が並んでいました。その用紙を見た時に、直感的に「書いてはいけない」と思ったそうです。特に「将来の職業」を記載する欄に その思いが強かったそうです。17歳の自分は"カネ"も"能力"も何もないが、将来についての「可能性」だけは持っていると思っていました。17歳で中途半端な思いのまま、将来を決める事をしたら、自分が最も大切にしている「可能性」に対する侮辱になるのではないかと考えたそうです。 そんな思いは日増しに強くなり、結局 アンケート用紙を提出する日に退学届を出したそうです。
そこから、スペイン、イタリア、モロッコなど地中海沿岸の国々を1年かけて1人で巡る放浪の旅に出ました。しかし 相当ハングリーな旅でした。一方で この「今日 食うお金がなくても、自分と地面さえ あれば、人は生きていける」という経験をする事ができ、今でも その経験が人生の糧になっています。「今の立場を失ったとしても、生きていける自信がある。借金を抱えたとしても、生きてさえいれば大丈夫。借金? それがどうした? 」と、思えるようになったそうです。 社長が、様々なことに果敢にチャレンジできるのは、自分に自信があるからではありません。上手くいかなくても「それでも生きていける」と思えるようになったからなのです。 17歳にして 強烈な「原体験」だと思います。この経験から普通の人がピンチと考える場面でも、社長は平常心でいられるのです。
いやー、17歳にして この"決断"ができることが驚きです。私が17歳の頃は、将来の事など 全く考えず、TVばかり見ていた気がします。
ーーー それでは、そんな 行動力 溢れる寺尾社長が率いるバルミューダのC.I.の一部を紹介します。 【ミッション】 「クリエイティブな心で夢見た未来を、テクノロジーの力で実現して人々の役に立つこと」 かつて家電は不便さを解消することで人々の役に立ってきました。しかし今、私たちの生活は十分に便利になりつつあります。 そして 家電に求められているものも、変わってきているのだと感じます。 現代を生きる私たちが道具やサービスに求めているのは、驚きや感動、うれしくなるような体験なのだと思います。 バルミューダは家電という道具を通して、心躍るような、素晴らしい体験を皆様にお届けしたいと考えている企業です。
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【若手なりの成長の理由分析】
「バルミューダ 株式会社」の、一番の成長理由は… ●「『体験価値』を提案にすることに、徹底的に重点を置いている」という点です。バルミューダは、他社製品と比べて誰が見ても お洒落な商品を扱っています。しかし バルミューダは、デザインへのこだわりはあっても、デザイン家電を作るという目的はありません。目指しているのは、あくまでも家電で提供できる美味しさや心地よさ、楽しさといった数値にできない価値なのです。これこそが、「体験価値」です。 例えば、バルミューダのヒット商品に扇風機(グリーンファン)があります。これは、社長自身が「子どもの頃、自転車で走っている時に、体に当たる風が気持ちよかった」という体験を再現しようと、「自然界にある やさしい風を再現する」という全く新しいコンセプトで開発されました。グリーンファンは、ただ 単に扇風機の機能を向上させるという単純な足し算型の思考ではなく、「人は、扇風機にただ 単に涼しい風を求めているわけじゃない。人々は、扇風機の風に心地よさを求めているのだ」といった、正に「体験価値」の上に立って開発された製品です。 販売価格が、従来製品の2倍から10倍であっても、有りそうで無かったバルミューダの開発した新たな価値が盛り込まれているため、消費者に受け入れられています。その新たな機能の開発は、自由なアイデアで「体験価値」を提供するというコンセプトの基で行われているいます。
ーーー それでは、上記の成長理由に付随する形で、更に 成長理由を若手なりに仮説で"3つ"上げさせて頂きます。 ■1.「敢えて『マーケティング』をしない点!」 *バルミューダでは、商品開発を行う上で「マーケティングをしない」という方針があります。通常のメーカーは、市場調査の結果を受けてヒットしそうな製品を予測するので、どうしても既成の製品がベースとなり、新しい発想の製品は出ない傾向にあると思います。しかし バルミューダは「そもそも市場にないもの」「自分たちが世に出したいもの」を中心に開発しています。現在でも その流れを踏襲し「体験価値」をモットーに、カテゴリに拘らず「ストーリーが語れるもの」を開発し続けています。
*また、バルミューダでは一つの商品が完成するまでには、約2,000のデザイン案が出されています。バルミューダでは「部屋に置きたいか?」「使い易すそうか?」といった、ハードルの高い基準ポイントが幾つもあり、これをクリアできなければ商品化はできません。その為 デザイン案だけでも膨大なものになっているのです。一方では、過去のデザイン案が、全く違った商品の開発にも活きてくるのです。
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■2.「強みを体現できるビジネスモデル!」
*バルミューダの強みは「クリエイティブ」と「テクノロジー」です。
●クリエイティブについては、多くの会社は、広告代理店を活用することで その企画から媒体選定などの広報活動を進めていますが、バルミューダは 商品は使っていただくために存在していることから基本的にお金を使った広告活動などは行わず、商品開発こそが広告活動という考えがあります。また 仮に、広告活動を行う場合も広告代理店などは使わず、全て自社で行っています。社員構成も、デザイナーやクリエイターが殆どを占めています。
●そして、「テクノロジー」については、社内エンジニアを数多く抱えて、技術検証を進めるための原理試作から、技術検証、そして 訴訟リスクやビジネスリスクの検討などまでも自社で行っています。
*一方では、ベンチャー企業が故に、大量生産に於ける製造工程は外部の工場に委託をしており、この結果 営業利益率は「10%」と高い数字となっています。これは競合と比べて約2倍の数字です。 バルミューダでは、製造部分のみを外部に委託し、企画、設計や品質検査などは全て内製化することで、バルミューダの製品コンセプトを限りなく忠実に再現できる「ビジネスモデル」になっているのです。
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■3.「ペルソナを意識した商品開発!」
*バルミューダでは、マーケティングは重視しませんが、「ビジネスモデル」は明確になっています。特に「どこの、誰に売るのか?」です。所謂 ペルソナです。バルミューダの商品には、商品ごとにストーリーが作られており、ペルソナとしているターゲットへの訴求が明確化されています。機能がいい、安い、デザインがいい、それだけをただ謳うのは簡単ですが、自分の生活の中で、「何故 それが必要なのか?」「なぜ 欲しくなるのか?」それを突き詰めて、分かり易く ペルソナに伝えることを意識しています。そうして 拘って商品企画から販売戦略 そして、広告活動に至るまで、徹底的に その「ペルソナ」を意識して行われる為、唯一無二の強いサービス・プロダクトができています。
社内で顧客の「体験価値」が最も重視されているからこそ、社員全員で深く考える社風が出来上がっているのです。
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◎と言うことで…
バルミューダの凄さは、自分たちが欲しいものを作るという「徹底的なプロダクト志向」と、それに「集中できる仕組み作り」だと思います。価格競争が進み、利益率の低い家電市場に於いて、新しい「体験価値」という付加価値を商品に落とし込むことで、それが成熟市場に受けれいられているのだと思います。コモディティ化してしまっている市場にあえて目を向け、そして 自分たちが良いと思った商品を信じ抜ける点に、「かっこよさ」を感じます。
私も以前 通販企業で商品部として、商品企画に携わっていましたが、どうしても目先の売上に走ってしまいました。「お客さまの立場になって考える」とよく言われますが、言うのは易しで、実行し続けることは難しいことだと思います。このことを、辛抱強く行っているのがバルミューダなのだと思います。
では、「何故バルミューダが良い商品を作れるのか?」この一つの理由は、「社長自身が工場で徹底的に学ばれたから」だと思います。ゼロから「ものづくり」の道に転進した社長は、実際の製作現場を見て学ぼうと、自宅周辺の町工場を訪ね歩かれたそうです。ところが、どこも門前払いで金髪のド素人が「見せて」と頼んでも、見せてくれる工場はありませんでした。ただ それでも、社長は 諦めず、片っ端から工場を回り、そこで 出会ったのが「春日井製作所」という町工場です。そこで働く職人さんたちは、現場を見せてくれるだけでなく、タダで機械の使い方や加工技術を教えてくれ、毎日 そこに通い詰め、徹底的にモノづくりの基礎を学ばれたのです。
商品を作る前に、「その商品が どこで、どんな人によって創られているのか?」を理解すると、商品開発に取り組む姿勢が、変わるのだと思います。
ただ、1人のユーザーとして苦言をさせて頂くとしたら、バルミューダの商品を扱う企業をしっかり精査するべきだと思います。何故なら 扱う企業によって、全く商品の見せ方が異なっているからです。分かり易く言うと、売り売りの見せ方をしている企業もあり 消費者にとって同じ商品とは思えないからです。これだと お客さんとの接触ポイントで、バルミューダの「拘り」や「個性」が消えてしまっている気がします。
そういった意味では、バルミューダの商品を扱う企業も、バルミューダのC.I.に本当の意味で共感している企業に絞るべきだと思います。
ということで、私も ここ最近は「クリエイティブ」の"奥深さ"と"難しさ"を感じていますが、クリエイティブの最先端を走られているバルミューダさんを調べることで、とても参考となりました!
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●最後に、若手なりにC.I.について一言いわせて頂くと…
まさに、ミッションにある通り「体験価値」への拘りを強く感じて、「言われていること」と「やられていること」が一致している点が、本当に素晴らしいと感じました。企業としてのプライドを感じます。ただ 気になった点は、2020年に上場もされ、より一層 企業が成長していく上で、ちょっと 抽象的な気がしました。今までは 社員の主体性を尊重する文化で、優秀な人材のスキルを活用しながら成長されたのだと思います。しかし 去年上場され、今後
事 業拡大を目指されるのであれば、「行動指針」「行動規範」まで落とし込んだ、より具体的な「C.I.」も必要になって来ると思いました。
*コーポレートサイトに、記載が無かったので、こう表現しました。
出来れば、コンカンが提唱するC.I.と、御社のC.I.を一度 照らし合わせて頂けると有り難いです。 *concanが考えるC.I.とは? https://www.concan.co.jp/post/topics-ci 生意気言って、申し訳ございません。 長くなりましたが、以上になります。
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