今日は 若手社員の私が、成長している企業のC.I.を紹介します。倉庫事業でありながら、斬新な事業展開で注目されている企業です。
第52回は、他では扱わない"モノ"を専門に取り扱うことで、急成長をした「寺田倉庫 株式会社」です。
【企業概要】
「寺田倉庫」は、1950年に創業された『保存保管業』を主事業とする従業員「約100名」の中小企業です。本社を東京天王洲に構え、かつては 他の倉庫会社と同様、『トランクルーム』や『文書保管』『運送事業』を行っていました。
そんな中、他社がやらない"モノ"「美術品・貴重品、ワインセラー」などの保存保管を専門にすることで、ここ数年で 一気に成長した企業と言われています。(売上非公開)
「寺田倉庫」は創業依頼、創業家による経営が続いていましたが、2012年に全くの異業種にいた「中野 善壽氏」を代表取締役に招聘し、ここから急成長します。中野氏の前歴は、伊勢丹を経て、倉庫業とは縁のないサービス業の経営者でした。
「中野氏」は、勝ち目のない事業から撤退し、社員もなんと「14分の1」にまで削減しました。同時に、「高級ワイン」や「美術品・コレクション」の保管を強化するなど、付加価値の高い事業に重心を移しました。ワインや絵画、貴重品では、厳重な温度・湿度管理 及び セキュリティ管理を行っていて、この分野では 一躍 有名になることになります。(因みにセキュリティは生体認証などによる10段階認証など)。ソムリエや美術品を取り扱う専門スタッフも置き、2015年には、楽器専用保管サービスも開始しました。
そんな「寺田倉庫」の1番の"特徴"は、『保管』だけに留まらず、お預かりした"モノ"の価値を高めて、後世に引き継ぐための「保存」や「修復技術」の追求、空間活用のノウハウを活かして文化発信の拠点となる事業を積極的に進めている点です。これについては、後ほど 説明します。
また「寺田倉庫」は、主倉庫のある「天王洲アイル地区」の活性化に注力しています。本社内にイベントホール、音楽スタジオ、茶室などを開設し、他社の倉庫が立ち並ぶ天王洲一帯を、アートギャラリーやレストラン、イベントなどを開催する『観光スポット』に変えたりしている、ユニークな企業と言えます。
【「倉庫業界」の現状】
*「倉庫業界」ではインターネット通販の急速な普及により貨物量が増加し、物流施設の需要が拡大しています。このような動向を受け、多くの企業が「倉庫市場」に積極的に参入していて、競争の激しい市場となっています。
国土交通省によると、2019年の全企業の「保管残高」は 前年比4.2%増の「2兆4,692億円」となりました。これは 2011年から、8年連続で前年と比べて上向きの数字となっています。倉庫は商品の配送拠点としての役割を担っていますので、拡大するインターネット通販の需要拡大で倉庫の重要性が増しています。そして この傾向は、この先も続くことが予想されています。
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それでは、他社と極端に差別化することで成長してきた「寺田倉庫 株式会社」の、"イケてるC.I."の一部を紹介します。
【企業理念】
「モノだけではなく、価値をお預かりする」
常に時代の先駆者を目指し、保管事業に新しい風を吹かせようと、弊社は これまで文化創造企業として保管する「モノの価値」の創造から、モノが生みだす「余白の価値」の創造、そして、人とつながり「共有知の価値」を創ることを目標に掲げています。
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【若手なりの成長理由 分析】
ここからは、若手なりに「寺田倉庫」の成長理由を、仮説ですが "4つ"挙げさせて頂きます。
先ず、結論から…
◆1.「『倉庫業界』に於いて、画期的な『新規事業』を創ってきた点!」
◆2.「『To B』から『To C』への転換を行った点!」
◆3.「取り扱うモノを"特化"した点!」
◆4.「スリムな経営を意識し、柔軟に動ける体制を創っている点!」
の"4つ"です。一つずつ見ていきます。
先ず…
◆1.「『倉庫業界』に於いて、画期的な『新規事業』を創ってきた点!」
*「寺田倉庫」は、競争の激化で"四苦八苦"しながら、他社と差別化する為に様々な新規事業を行ってきました。その代表格が、2012年から「to C」向けに提供を開始した「minikura(ミニクラ)」というサービスです。これは お客さまの預けたいモノを、段ボールに入れて「寺田倉庫」に送り保管して貰うことができます。お客さまは保管期間に応じて、料金を支払う仕組みで、送った段ボールの保管料は「月額200円」です。ここまでは普通のサービスですが、「minikura」が画期的だったのは、箱の中身を一個ずつ取り出してくれて、好きな時に好きな量だけお客さまの自宅に届けてくれる点です。これが人気を博し、一気にユーザーに広まることになります。
*そして 次に始めたのが「minikura MONO」というサービスです。「minikura MONO」の場合には、お客さまが送った荷物を「寺田倉庫」側が 一旦 開封し、中味を1点ずつ撮影し、お客さま専用ページにアップしてくれます。これの何が良いかと言うと、メルカリといった「C to C」サービスの普及によって、誰でも自分のモノを販売することが当たり前になった時代に於いて、「寺田倉庫」に預けると写真を撮影してくれることで、手間なくインターネット上で自分の"モノ"を販売することが出来るのです。
従来 倉庫業では、「顧客の荷物は開封しない」というのが業界の常識でしたが、「寺田倉庫」は1品ずつ写真に撮り、顧客が何を預けているか明確にすると同時に、1品ごとの取り出しも可能になったのです。これは、倉庫業界では画期的なことでした。
*「寺田倉庫」のビジネスモデルのポイントは、「保存」から「保管」への転換と言われています。お客さまの荷物を一時的に預かるだけのビジネスを「保存」とすれば、お客さまが 荷物を出庫後に使用・利用する価値を上げようとするのが「保管」です。重要な点は、ユーザーが物を預けた"後の価値"を高めることを、ビジネスの基本としている点です。
こうした視点に立てば、例えば 既にクリーニング業界では、クリーニングに出した毛皮やダウンコートなどを次のシーズンまで保管してくれるサービスは、多くの企業で実施されています。この発想を倉庫業界に持ち込んだのです。「minikura MONO」こそ、まさに その典型だと思います。ーーー
◆2.「『To B』から『To C』への転換を行った点!」
*「寺田倉庫」も以前は、法人向け(To B)サービスを積極的に行なっていました。法人であれば荷主の要望に沿って、荷物を保管、保存、配送さえすれば問題ありませんでした。しかし その場合「規模の経済」がメリットになる一方で、当然 倉庫などの資産、人的資源を拡大していく必要があり、結局 大手物流企業との競争になってしまいます。そこで、法人向け(To B)サービスを縮小し、個人(To C)向けサービスに特化していくことで、中小企業の強みである個々のお客さまのニーズに合わせた対応を行ってきました。更に 個人のお客さまから預かるモノは、思い入れが詰まった「一点モノ」が多く、預かることにより緊張感が生まれ、今まで以上に『社員の意識』も高まったそうです。
また 法人契約は、大口取引の傾向になるため、契約が解除されると 一気に売上を落とす"リスク"もありますが、個人向けを主力とすることで、契約解除の"リスク"が分散することに繋がり、寧ろ 売上の安定化に繋がりました。
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◆3.「取り扱うモノを"特化"した点!」
*「寺田倉庫」は、自社が展開するビジネスの領域を明確に定めています。それが、「ワイン」「アート」「メディア」の"3つ"です。この"3つ"に共通しているのが「"温度"や"湿度"を、徹底管理した状態で適切に保管・保存すれば価値が高まる"モノ"」ということです。
例えば「ワイン」の保管には、停電や災害が起きても問題がないように自家発電設備を備えるなど,徹底して品質を劣化させないような仕組みを創っています。
*更に 凄いのが、2つあります。
〇1つ目は「預け入れと、取り出しがいつでもインターネット上で行え、いつでも届けてくれる」という点です。
〇2つ目は「預かったワインを使って、一般者向けにワインラウンジを設置したり、ワインオークションを開催したりなど、イベントを定期的に開催している」点です。そのイベントでは、有名なワイナリーを招くなどし、預かった「ワイン」が有名になることで、更に「価値」を高めているのです。人から預かった"モノ"でイベントなどを行うのは、とても 面白い発想だと思います!
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◆4.「スリムな経営を意識し、柔軟に動ける体制を創っている点!」
*「倉庫会社」は一般的に、倉庫にするスペースである「不動産」に投資をしなければ規模の拡大は出来ません。一方では、資産を多く持ち過ぎてしまうと、物流業を取り巻く環境や市場の変化に対応できなくなってしまいます。そこで「寺田倉庫」では、物流倉庫としての不動産へ投資をしない代わりに、ITに積極投資し「倉庫のクラウド化」を進めています。これは、「寺田倉庫」の基準を満たす倉庫会社にパートナーになって貰い、「寺田倉庫」は"モノ"の取扱い・保管・保存のノウハウを「仕組み化」し、その事業パートナーへ供給しているのです。
一方で、自社で保有する「天王洲エリア」の倉庫は良質なサービスを体験できる場、サービスへの"想い"を発信する場を創り上げる為に活用しています。それが 先ほど述べた「ワイン」のパーティーなどです。
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◎と言うことで…
*「寺田倉庫さん」の凄さを自分なりに解釈すると、「扱うモノ・サービスを特化しつつも、他社に その『ビジネスモデル』の全貌を見えなくした点」だと思います。私自身も「寺田倉庫」の凄さは分かったのですが、シンプルにどのようにマネタイズをされているのかが分かり辛く、何だか"モヤモヤ"が残っています。
ただ 一つ感じたことは、お客さまが「寺田倉庫」に預けたい何かの理由があるはずということです。例えば、単に"モノ"を預けるだけならば「トランクルーム」でも良いはずです。それなのに「寺田倉庫さん」を利用する理由は、「ワイン」や「アート」を預けてくれるお客さまは「富裕層」であり、「ワインラウンジ」など"モノ"を預けた後の「価値」を高める様々なサービスに"特別感"を感じられるからだと思いました。預ける"モノ"の「価値」が 更に 高くなる。これは、お客さまにとって 一種の「資産運用」だと思います。
●「扱う"モノ"を特化した点」、そして 「預かった"モノ"で別のサービスを行うという発想の柔軟さ」が、とても 勉強になりました。
余談ですが…
株式会社 スタートトゥデイの前社長「前澤 友作氏」が、現代アートの巨匠「バスキア」の作品を123億円で落札したことが話題になりました。この作品が預けられているのが、この「寺田倉庫」と言われています。他にも、世界の富豪たちがコレクションする時価「数十億円」クラスのアートの数々が、この倉庫で大切に保管されているそうです。そして 定期的に、「寺田倉庫」で展覧会を行っているそうです。
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●それでは 最後に、C.I.について、若手なりに一言いわせて頂くと…
*「モノだけではなく、価値をお預かりする」という経営思想が、C.I.にシンプルに表現されていて、これ自体が「寺田倉庫」の強みになっていると思います。これは「寺田倉庫」を急成長させた「中野 善壽氏」が、2012年の社長就任時にリニューアルされたそうです。C.I.への拘りが、垣間みえます。
しかし 「何故 この事業をやっているのか?」という"想い"が読み取れず、共感し難いとも感じました。「何故、価値の創造を行うのか?」この辺が分かると、もう少し 一般消費者にも、「寺田倉庫さん」の"存在意義"が伝わり易くなると思いました。あと 蛇足ですが、「『余白の価値』の創造」とありますが、この「余白」がどういう意味で使われているのか、知りたいです!
生意気ばかり言って、本当に申し訳ございません。。。
出来れば、コンカンが提唱するC.I.と、御社のC.I.を一度 照らし合わせて頂けると有り難いです。
*concanが考えるC.I.とは?
本当に、若手が生意気いって、申し訳ございません。
長くなりましたが、以上です。
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