今日は、キャンパーである私が 日本で一番好きな企業を紹介します。半世紀以上前の1958年に新潟県の小さな田舎町から始まり、日本に於ける「アウトドア業界」を発展させた「株式会社 スノーピーク」です。
現会長の「山井 太氏」の父である「幸雄氏」によって 元々は、金物問屋の「山井幸雄商店」として始まりました。翌年には、趣味の登山に対して生じた当時の登山用品への不満から「本当に欲しいものを自分でつくる」という"志"のもとオリジナル商品の開発・販売を始めました。
現在は、3代目社長の「山井 梨沙氏」にバトンタッチし、今ではアウトドア商品の総合メーカーとして、知らない人の方が少ない企業までに成長しました。
●売上高は、約143億円(2019年12月期)を上げ、年々 成長しています。
*2018年の国内アウトドア市場規模:5,007億7,000万円/矢野経済研究所
スノーピークは、全国に直営店を構えており、更には2001年から「韓国・台湾・アメリカ/ニューヨーク」にも進出されています。
実は私自身も、毎年 数回はキャンプに行く、生粋の「キャンパー」です。キャンプの良さは「非日常の世界だからこそ、普段は気づけないことに気づけること」です。
例えば…
〇共同作業の過程で気づく「友達の"気遣い”や、"優しさ”」
〇不便だからこそ気づく「普段の生活の"有難さ”」
〇家と仕事の往復では気づけない「自然の"面白さ”や、"素晴らしさ”」
などです。まだまだ上げると、きりがありませんが。。。
そんな素敵なキャンプに於ける代表メーカーである「スノーピーク」の商品は、個人的にも使っていて、とても愛着があり そして 大好きな会社のひとつです。
福岡県太宰府市にある店舗にもよく行き、大分にある「スノーピーク奥日田キャンプ場」にもよく行かせて頂いています。
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それでは、そんな私が愛してやまない「株式会社 スノーピーク」の「イケてるC.I.」の一部を紹介します。
【ミッションステートメント/使命宣言】
「The Snow Peak Way」
私達スノーピークは、一人一人の主体性が最も重要であると自覚し、同じ目標を共有する真の信頼で力を合わせ、自然指向のライフバリューを提案し実現するグローバルリーダーになろう。
私達は、常に進化し、革新を起こし、時代の流れを変えていきます。
私達は、自らもユーザーであるという立場で考え、お互いが感動できる体験価値を提供します。
私達は、地球上の全てのものに良い影響を与えます。
【コーポレートメッセージ】
「人生に野遊びを」
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【若手なりの成長の理由分析】
先ず、何と言っても「スノーピーク」の凄さは、「キャンプの"価値観"を変えたこと」です。実は1980年代中盤まで キャンプは、社会通念として「キャンプ=貧しいもの」として捉えられていました。しかし、現社長の「山井 太氏」が、高度経済成長が終わり、市場が成熟して行く中で、キャンプに潜在的なニーズがあると察知し、それにあった新商品を開発し"ブーム"を起こすことで、「キャンプ=自然の中で、オシャレに過ごす」という価値観に変えました。
まさに、アウトドア業界の「リーディングカンパニー」です。
また、C.I.について、"想い"の伝わる言葉で、企業の価値観を表現されていて共感を得やすいと思いました。更に、「スノーピーク」の商品を通して、このC.I.を1mmのズレもなく体現されていることが "素敵" です。
それでは「スノーピーク」が成長している理由を、自分なりに "4つ" 上げさせて頂きます。
■1.【社員全員のキャンプへの強烈な愛!】(主体性!)
*社長自身も、年間60泊をテントの中で過ごす生粋のキャンパーです。更に、本社は「約5万坪」の広大なキャンプ場の中にあり、協力工場や社員がキャンプを楽しみながら、その場で商品についての意見交換が行われています。キャンプという環境の中で、一晩一緒に過ごすことで、商品への理解も深まり新商品へのアイデアにも繋がっています。
これは採用も同じで、「キャンプ好き以外は採用しない」という"ポリシー"があります。消費者とスノーピークの関係は、「キャンパー to キャンパー」であり、これは社内でも同様と捉えられています。この根底にある"社風"が、新入社員研修や中堅社員研修の場が「キャンプ場での語り合い」でしか築けないという考え方があるからです。
*ちなみに、スノーピークが管理しているキャンプ場にいくと、さらにキャンプが好きになります。それは…
●スノーピークの社員さんが、同じキャンパーとして話しかけてくれるから。
●スノーピークの世界観が好きで来た、他のキャンパーとも仲良くなれるから。
まさに スノーピークは、アウトドアだけに留まらず、コミュニティマネジメントまでを行う企業です!
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■2.【徹底したユーザーとの繋がり!】(顧客理解!)
*「スノーピーク」は商品開発時に他社の商品を絶対に見ません。むしろ、見る必要が無いと考えられています。何故なら、社長曰く、スノーピークの根底には「良いものが無いから創る」という発想があるからです。
そのため…
「スノーピーク」は、広告には一切 費用をかけず、代わりにユーザーとの繋がりをどこよりも強く意識し、そこから得た"声”を製品開発にダイレクトに反映させています。
このやり方が"絶妙”で、リアル店舗は 勿論のこと、SNSも上手く使ったユーザー同士の「コミュニティ」を形成しています。この "リアル" と "ネット"の融合から得る圧倒的な"顧客理解"こそが、製品価格が決して安くしなくても販売できる理由だと思います。同様の事を謳っている企業は幾つかありますが、それを"やり通す”ことが難しいはずです。
◆「スノーピーク」と顧客の接点
〇1.全国での「Snow Peak Way」の定期的な開催(リアルなキャンプイベント 年間5,000人参加)
※実は 私も参加したことありますが、このイベントからスノーピークのファンになりました。社員のキャンプ愛が "ヒシヒシ"と伝わり感動したことを覚えています。
〇2.本社での「雪峰祭」を年2回開催(スノーピーク主催の地域のお祭り 7,000人参加)
〇3.全国にリアル店舗を100店舗運営(この規模はアウトドアブランドでは「スノーピーク」だけ)
〇4.SNSの運営(facebookを使って22万人を超える顧客コミュニティを作っている)
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■3.【日本のモノづくりによる圧倒的な商品力!】(創る強さ!)
*「スノーピーク」の商品は、企画から販売まで、全て"国内"で行われています。更に、他社と違う大きな特徴が、一つの製品の企画段階からデザイン、製造ラインに乗せるまでを「1人の開発担当者」が手掛けています。それには「理念を体現しようとすると分業ではできない」という考えがあるからです。
商品に対しての「絶対的な知識」と、それを商品に落とし込める「地元職人たちの技術」が、顧客の安心へと繋がっていると思います。
*実は…
私も前職時は「テント商品の開発」を行っていました。勿論、他社と差別化をしようと試行錯誤した訳ですが、そう簡単には行きませんでした。何故なら テントには、必ず "金型" という問題が出てきます。所謂 「良い商品」と「実際に創れる商品」の2軸を抑える事が難しいのがテントです。
この2軸を抑えるには、テントの"知識”だけではなく、工場側の"知識”や、"常識”も知っておく必要があります。そうなると「スノーピーク」と「工場」の双方が認め合う"二人三脚”の関係でないと差別化できる商品を創れないはずです。
恐らくですが、スノーピークの開発力の源泉は、「知識」は勿論のこと それ以上に「スノーピークの社員の方々の暑苦しい程のキャンプ愛」と「海外生産が主流の中で、あえて"地元新潟”での生産」に拘ったからこそ、工場側から愛されていることが、一番の理由だと考えています。
◆「スノーピーク」が開発陣に求めるスキル
〇1.デザイナーとしての技量。
〇2.ユーザースキルの高さ。(本人自身がものすごくアウトドアを楽しめる能力を持っているか否か)
〇3.製造技術に対する理解。(エンジニア的なノウハウ 地元町工場に押し込まれ、コワイ親父たちに「バカヤロー」とか「そんなことも分からないのか!」などと言われながら学んで行く)
*因みに、「スノーピーク」の商品は、すべてに「永久保証」が付いています。これには、キャンパーにとって一番嫌なことが「モノが壊れる」ことだからです。社長自身、キャンプにおいて、商品が壊れることが一番の致命傷であることを"原体験"から学ばれたそうです。
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■4.【時代に合った新規事業開発!】(時代性!)
*スノーピークは、「キャンプ」を軸に、様々な事業を起こしています。今回の新型「コロナウイルス」では、「在宅」や「多拠点」といった働き方に関するキーワードを汲み取り「キャンプ」と「仕事場」を掛け合わせた「ワーケーション事業」を立ち上げました。
さらに この「コロナ禍」で最も話題となったのが、「お城キャンプ」です。これは、地方創生の一貫で、地方の廃れたお城の中で、1組限定でキャンプをできるというサービスです。価格は、一泊100万にも関わらず、予約が取れない程 人気となりました。
*現在 最も力を入れているのが、体験型店舗「スノーピーク ランドステーション」という新しい状態です。この特徴は、キャンプ場を、建築家の「隈 研吾氏」がデザインを手掛けたことで話題を集めたほか、「自然に触れ、外で過ごすことを最大限楽しめる作り」になっていることが、ニューノーマル時代の新たな観光拠点の在り方として注目されています。
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◎と言うことで…
成長し続ける理由を一言でいうと、商品やサービスが、目先の売上ではなく、企業の"幹"であるC.I.を徹底的に体現している「スノーピーク"らしさ"」だと思いました。全ての行動が、理念に基づく"整合性"と"統一感"があり、本当に「ブランディング」の凄さと「カッコよさ」を感じました。このぶれない"幹"は、社長や社員自身が"生粋"のキャンパーとして良い商品を創りたいと言う「キャンプ愛」から来ているのはないでしょうか。
また、今回の「新型コロナウイルス」が、スノーピークにとっては、追い風ともなっています。
巣ごもり中に、キャンプを経験した消費者が、キャンプにハマり、ここ数ヶ月でアウトドア市場は一気に成長しています。数字で見ると、最新の2020年8月の月次売上が前年比45%増と大幅に伸長しました。今後もアウトドア市場自体も、年々伸びていくことが予想されており、成長著しい市場の中で、スノーピークは先頭を走っている企業です。
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◎最後に、若手なりにC.I.について一言いわせて頂くとしたら…
大前提として、想いが詰まり 個性的なC.I.だと感じましたが、世の中に対する不変の想い(成し遂げたいゴール/世の中に何を齎すのか?)である「企業理念」が見当たらない事が気になりました。
「ミッションステートメント」としての表現はありますが、あくまで社内向けの言葉になっているので、社外向けであるコーポレートメッセージ「人生に野遊びを」をより具体的な言葉で、成し遂げたい世界観を表現すると、より進むべき道が明確になると思いました。恐らく 今迄は、社員の主体性を尊重する文化で、「強烈なキャンプ愛」と「優秀な人材」を"エンジン”として成長されたのだと思いますが、今後 事業拡大を目指されるのであれば、「行動指針」「行動規範」まで落とし込んだ、より具体的な「C.I.」も必要になって来ると思いました。
*コーポレートサイトに、記載が無かったので、こう表現しました。
私が最も好きな企業として、今後の成長が楽しみです!
出来れば、コンカンが提唱するC.I.と、御社のC.I.を一度 照らし合わせて頂けると有り難いです。
*concanが考えるC.I.とは?
生意気ばかり言って、すみませんでした。。。
長くなりましたが、以上です。
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