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【若手社員が勝手に"イケてる企業のC.I.を切る"!】~「リライト編」~「第19回:竹下産業 株式会社」

福岡に、江戸時代から続く「日本の食文化」を支えている、まるで「下町ロケット」のような会社があります。

第19回は、お寿司屋さん、スーパー、コンビニ、家庭など、「日本の食卓」に欠かす事の出来ない「海苔」を全自動で生産する機械を製造・販売している「国内シェアNo.1」で、約50%を占めている「竹下産業 株式会社」です。 *シェア50%→コンビニの2個に1個の「おにぎり」が竹下産業の機械で作られています。



「竹下産業」は、福岡県 柳川市に本社を置き、「海の幸の宝庫」といわれる"有明海"に目を向け、昭和40年(1965年)に設立され、今年 創業55年を迎える会社です。 ところで 皆さんは、海苔が どのように作られているかご存じですか? 先ずは「海藻」として海から収穫します。収穫された「海苔」は、一次加工として四角い形状に漉き、脱水を行い乾燥させます。こうして 皆さんがよく見る「板海苔」が出来上がります。そして、二次加工として「焼海苔」、「味付け海苔」などに加工されます。 以前は、海での収穫も、乾燥加工するのも手作業で行なわれており、手間暇が掛かるかなりの重労働でした。そのため、生産数も少なく高級な嗜好品でした。今では機械化も進み、お手頃な価格で提供されています。その自動海苔製造機械を「竹下産業」は作っており、加工機械の国内シェアは、なんと50%を超え、全国の「海苔」生産の安定供給の基礎を作り上げた企業です。 「海苔」業界のトップメーカーとして、独自ブランド「トライスター」という全自動「海苔」製造機をもち、この機械1台で「1時間当たり 1万枚(1秒間に3枚以上/19㎝×21㎝)」を超える生産量を誇り、1日 最大で24万枚の「海苔」を日々 生み出しています。 *天日干しの手作業の時代は、1日 6,000枚しか生産出来なかった。

「海苔」は、江戸時代から食べられている食材で、浮世絵にも「海苔」が描かれているほど、日本の文化と歴史に密着しています。そんな「海苔」を分解する「消化酵素」を持っているのは、なんと"日本人"だけだそうです。 日本人の腸内に住み着いている「海洋菌」が栄養豊富な「海苔」を分解してくれます。 世界で「海苔」の生産を行っている国は、日本、韓国、中国で、その中でも「日本」は、世界一の生産量を誇っています。 日本人は、日本人特有の第5の味覚「うま味」を持っています。 「海苔」は、このうま味成分と言われている… 【三大うま味】 ◆1.「グルタミン酸」→昆布 ◆2.「グアニル酸」→鰹節 ◆3.「イノシン酸」→干し椎茸 これら「3つ」が入っている、珍しい食材です。そんな うま味成分たっぷりの「海苔」は、「焼き海苔」にする事で、さらに うま味がでます。 *「味覚」とは、触覚や視覚・聴覚・嗅覚と並ぶ 人間の五感の一つ。主に舌に受容体があり、現時点では「甘味・酸味・塩味・苦味・旨味」の5つが基本味とされている。 *「海苔」の生産時期→11月~3月

ーーー では、「竹下産業」の「イケてるC.I.」の一部を紹介します。 【企業理念】 「良い製品づくりと同じくらい、存続することが、大切なのだと思います。」


【代表メッセージ】 私たちがつくる製品は、日本人にとって馴染み深い『海苔』の生産機械。 国内シェアは、およそ50%。そう考えると、日本中で食されている海苔の実に半数が、私たちの機械によって生み出されているのです。その大きな責任が、何よりの誇りとなっています。 生産設備メーカーとして良い製品づくりに邁進するのはもちろんのこと、同じくらい大切にしなければならないのが、アフターサービス。私たちの機械が止まれば、その日の乾海苔の生産がストップしてしまう。修理に時間がかかればかかるほど、海苔生産が中断するだけでなく加工前の原藻の品質が劣化してしまうのです。 だからこそ企業として存続し、いつでもどこでも、機械に何かあればすぐに駆けつける。ユーザーの生の声を聞き、製品の機能や価値をブラッシュアップし続ける。

創業して50年を超える長い歴史の重みを感じながら、次の50年も日本の食文化を守り、そして海苔生産を支えるべく、私たちはこの場所に在り続けたいと思っています。


【若手なりの成長の理由分析】

「竹下産業」が、存続・成長しているのは、まさに「モノづくり」の精神に尽きると思います。所謂「職人魂」です。1つのジャンルで国内シェアの半分を築き、守る為には技術の「進化」しかないと思います。これを実現されているのは、かっこいいと思います。 私も以前は柳川市の隣接する久留米市に住んでいましたが、近くに こんなにも凄い企業があったのは驚きです。 では、もう少し若手なりに成長の理由を仮説ですが、分析してみます。大きく"5つ"あると思います。

■1.「日本の高度成長に乗り、地元の海の幸を工業化した点!」(有明海の力) *有明海で生まれる「海苔」は、国内最多の生産量(佐賀、福岡、熊本など合わせてシェア約50%)を誇っています。 有明海は、栄養たっぷりの水、塩分濃度、干満差と光合成と、「海苔」にとってはベストな環境が揃っています。 【有明海が「海苔」づくりに適している3つの理由】 ◇その1、多くの河川(その数100以上!)が流れ込んで栄養がたっぷりなこと! ◇その2、淡水と海水が、ほどよく混ぜ合わさり、「海苔」の養殖に適した塩分濃度! ◇その3、干満差(潮の満ち引きによる水位の差)と光合成! 有明海の干満差は、なんと最大6メートルもあり、支柱に固定した「海苔網」が1日1回干し出されるので、太陽の"光"を浴びた「海苔」が光合成し、独特のうま味が生まれます。 この日本一恵まれた環境下に「竹下産業」はあり、日本が、高度成長期(昭和40年代)に入るタイミングで、「海苔」の需要が増えることを見越し、手作業から いち早く、工業化に踏み切った点です。所謂 農業機械の技術を「海苔」製造に切り替えた点だと思います。

■2.「三代目 竹下 政敏社長の誠実さと、静かな闘志!」(アイデンティティ力) *竹下社長は、元々 自動車メーカーのHONDAで「オデッセイ」を開発していたエンジニアです。9年半働いた後、1996年に竹下産業に平社員として入社しました。その14年後に社長に就任しますが、入社して3年目の1999年に竹下産業は、財政面が厳しくなり、資金繰りが上手くいかず、事業を縮小する事になります。 この時 会社を分社化し、3つあった事業が一つになります。それが 今の「海苔」製造機の分野です。110名いた社員が、70名に減少しました。ここから竹下社長は、地道に やれることを"コツコツ"資金面が厳しい分、知恵を絞り節約できる所は 徹底的にされました。 転換期があった訳ではなく、出来ることを 一歩一歩やって今を築かれました。 竹下社長の経営感は「やれば出来る」という気持ちで「成果」を求めて地道に やってこられました。中学の校長先生が掲げていた「和而不同」が座右の銘で、「和して同ぜず」周りの方々と、仲良くはするが、自分の考えは、しっかり持っていこうという意味です。本当に深い言葉で、勉強になります。

この竹下社長は、ホンダで学んだ「エンドユーザー重視の精神」と、竹下産業の「モノづくりの精神」がアイデンティティとなっています。

■3.「創業者から引き継いだDNAと、半オーダーメードで製造できる点!」(自社ブランド力) *創業者(竹下社長の祖父)は、なんと64歳で起業され、元々 鍛冶屋から始まり、農業機械(トラクター・コンバイン)の自動機械を製造・販売されていました。他にもビニールハウスの暖房器具や、い草の乾燥機械など。この技術が、今の「海苔」全自動製造機に生きています。 「海苔」は、とても繊細で、加工場の建屋の「吸気・排気、温度や湿度」によって、出来上がりの品質が まったく変わります。竹下産業の製品の殆どが、受注生産でオーダーメイドに近いカタチで、ユーザーのニーズに合わせて製品をカスタマイズしています。 また こんな所にも"職人魂"が。なんと 社内のBBQ大会の為に、わざわざ「バーベキューコンロ」をゼロから加工して造られています。 このバカっぽさが、社風を物語っている気がします!

■4.「自社で、設計から開発・製造した製品のメンテナンスの徹底!」(フットワーク力) *竹下産業が「海苔」の加工機を納品している地域(海苔の生産地)は、仙台湾・東京湾・伊勢湾・三河湾・瀬戸内海・有明海で、独自ブランドの「トライスター」を納品しています。竹下産業の強みは、この加工機の「設計・加工・組み立・メンテナンス」までを1社で完結できる点です。 また 製品を売って終わりではなく、販売した後が大切だと、納品地域に対し、機械がトラブルを起こした時に、電話1本で直ぐ行ける体制を整えています。 「海苔」の生産時期である「11月から3月」にメンテナンス力が問われます。因みに、1つの企業に社員1人が、製造からアフターサービスまで対応する体制を取っているそうです。 また、何か不具合があったら即座に修理できるよう部品を十分に揃えてあり、「海苔」の生産期前には、新人さんも、ベテランさんも、アフターサービスを担当するスタッフ全員で、技能訓練や、社内勉強会(社長自ら、毎週1回 製品改善提案会議)を実施されています。 この徹底したアフターサービスの こだわりが、「竹下産業」なら安心だというユーザーの信頼を掴み取っています。

■5.「長く働ける環境創り」(安心できる風土創り) *「竹下産業」には、勤続年数がなんと「50年」を超える社員さんが2名も居ます。社員さんにとって、会社としての魅力、働きがいなどがあることは、当然ですが、会社に長く働き続けるだけの制度が整っているのも その理由の一つです。具体的には、60歳で定年になりますが、各人の事情に合わせて働けるよう1年ごとに雇用契約を延長する再雇用制度を採用しており、能力や経験のある意欲のある方は、いつまでも働ける環境が整っています。 また、竹下産業の先進的な技術者と工場自体の進化も その理由の一つです。工場では、最新型のレーザー装置を導入して、日中に部品を加工するプログラムをセットし、夜間も機械を稼働させています。その結果 社員さんは、ほぼ残業することなく高い生産性を維持しています。(月の平均残業時間は、7.5時間) ただ単に勤務時間を短くするのではなく、自分たちの努力で労働時間を短くされているのです。「生産量を維持しつつ、労働時間を減らす」ということを実現されているのです。

ーーー ◎と言うことで… 竹下産業の存続・成長の理由は、一言「技術力」=職人集団であることだと思います。更に、現在「竹下産業」では、一秒間に24枚の海苔ができる機械の開発に取り組んでいます。これは、勿論 日本初で、業界の高齢化・人材不足が叫ばれている中で、かなりの需要が見込めます。この飽くなき探究心・進化を追い求めている姿勢が素敵だと思います。地方にこういう企業があることは誇りだと思います。

しかし 近年、「海苔」生産者の高齢化による「海苔養殖」の廃業や、後継者不足による個別経営体の減少が進んでいます。今後は,産地の生産力の維持が困難な状況になると懸念されています。個別経営体の存続条件は、設備・加工場の機器の更新費用の節減などによる生産コストの削減と、労働力の軽減が課題とされていて、「海苔産地」では生産性の向上と、労働の軽減を目的とした協業の推進が進められています。 「海苔」の生産力自体を上げる取り組みが必要になると思います。竹下産業さん自体が「海苔」を生産するのも良いかもしれません。更にいうと、お米を作って「おにぎり」自体を販売しつつ、一緒に海苔まで売るといったことも考えられると思います。

また 最近の「海苔市場」を見てみると… 国内生産は高気温による生育不良、生産者減で凶作、相場高が続いています。その不足分を補う為に「韓国・中国産」からの輸入が 毎年増え、約32億1600万枚の海苔が輸入されています。 更には、今回の「新型コロナウイルス」の影響で、コンビニ不振が海苔業界に大きな不安を与えています。コロナ禍で最重要商品のコンビニ「おにぎり」が売れていないのです。(海苔需要のざっくり3割はコンビニで占めていて、おにぎり、巻物、弁当などで使用される。) 外出自粛の影響などでランチ需要が減少し、更に大学の休校、また大手顧客となる回転寿司店といった店の休業も追い討ちをかけています。まさに コロナ対策の出勤自粛でオフィス需要を失い、海苔販売事業を辞める企業もあり、「竹下産業」にとっても、今が正念場の時期となっていますが、是非 頑張って頂きたいです。

ーーー ◎最後に、C.I.について若手なりに一言いわせて頂くと… 竹下社長の想い・こだわりが物凄く伝わり素敵だと思いましたが、社長の「頭」の中にある想いが、きちんと「言語化」されていないと思います。個人的には、もったいないと感じました。 「100年企業」を目指される会社として、もっと言うと 福岡を代表する「モノづくり企業」として、他 企業からも憧れられる企業になるために、一度 きちんとC.I.の整備をされることをお勧めします。凄い企業というのは伝わりましたが、B to Bとは言え 一般消費者にしっかりと企業価値が上手く伝わっていないと思います。その為には、先ずは 企業理念として「取り組む事業を通して、企業が作り上げたい世界(あるべき姿/成し遂げるゴール)」を明確に言語化することで、一般消費者により"共感"を得られ易くなると思います!

出来れば、コンカンが提唱するC.I.と、御社のC.I.を一度 照らし合わせて頂けると有り難いです。 *concanが考えるC.I.とは? https://www.concan.co.jp/post/topics-ci

生意気ばかり言って、すみませんでした。。。 長くなりましたが、以上です。

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