「若年層をターゲットにしたプロモーション施策」 ~副題:若者を掴むキーワードは、「共感」と「共創」~ 今日は、若者のリアルな声を生かすマーケティング手法について紹介します。
これからの社会は、ウイルスと共存して生きる「With コロナ時代」。 そして「人生100年時代」と、激しく変容していく先が見え難い時代です。 そして「ネットとパソコン」があれば、どこでも「就学(学生)」や「仕事(若手社会人)」が出きる かなり自由な「学び方」や「働き方」ができる「リモートワーク」が当たり前の時代です。
しかし リモートワークでは、個人の"責任と実力"が問われます。 その為には、「個の成長」=「個人としてのアイデンティティ」の確立が不可欠になると言われています。
この時代を生きる「デジタルネイティブ」の若者たちは、スマホやSNSに頼り過ぎ、膨大な情報量によって、返って、先が見え難いことで不安に感じています。
こんな若者たちを見込み客としている企業にとって、彼らの「心理」や「考え方」を探ることは、非常に重要です。 そこで 今日は、この若者たちの「トレンド」や「SNS」の使い方から見る「若年層マーケティングのポイント」を書きます。 *若年層:ここでは、15才から24才の男女とします。
若年層をターゲットにした「プロモーション施策」を考えるには、若者のリアルな「トレンド」や「インサイト」を理解していることが大切だと思います。 しかし、 「デジタルネイティブ世代」である現代の若者は、トレンドに敏感であるが故に、流行りが変化し易いのも事実で、常にアンテナを立てて、リアルな情報をインプットし続けなければならない事が、企業にとっての課題とも言えます。
ーーー 【1.若者が、お金と時間を費やしているもの】 渋谷の「若者カルチャーづくり」を牽引してきた「SHIBUYA109」の調査によると、昨今 若者は様々なシーンで「〇〇離れ」と言われていますが… ●「今の若者は、実際 何に お金と時間を費やしているのか?」
それは、ずばり「ヲタ活」だそうです。「SHIBUYA109 lab.」が、500人の若者に調査したところ、なんと"7割"以上が「ヲタ」であると回答しました。
対象は、「アイドルやアニメ、ユーチューバーなど、様々ですが、「自分が価値を感じるものに お金と時間を費やす」ことが、今の若者の実態だと解説しています。
*「ヲタ活」…オタクの活動、オタク的とされる趣味の分野に於ける活動を意味する言い方。 典型的な「ヲタ活」としてはアイドルのコンサートや握手会、同人イベント等に参加する為に遠出(遠征)するといった活動が挙げられる。
ーーー 最近SNSでは、「ヲタ活」に関するハッシュタグが多く見られるそうです。 ●「実際に 若者は、どのような『ハッシュタグ』を使って投稿しているのか?」 ①「# 隠しきれないヲタク/#わーーーー○○ヲタさんと繋がりたい/#量産型ヲタク」 *趣味の合う人と繋がる"きっかけ"を作る為に、好きな人物やキャラクターの名前をハッシュタグに盛り込んで投稿することが流行っているそうです。好きなものが同じであれば、お互いに「共感」し易く、このハッシュタグからはヲタ活限定の友達を募集する若者特有の行動も見えてきます。
また誰かを推すハッシュタグだけでなく、「# 量産型ヲタク」のように自分が量産型のミーハーであることを自虐するようなハッシュタグも存在していて、こちらもまた自分と似た趣味嗜好を持つ人と繋がる為に活用されています。 ーーー ②「# 推しのいる生活/#推しの生誕祭/#ネップリ」 *これらは、推しの人物やキャラクターを、自分の生活の中に取り込んでいることを示すハッシュタグです。例えば「# 推しの生誕祭」というハッシュタグでは、推しの人物の誕生日に、その人物のグッズや写真を並べて自分の部屋をデコレーションし、ケーキまで用意して勝手にお祝いしている投稿などが見られます。これには「自分はこれだけ好きなんだ!」という他人へのマウントではなく、「自分でこれだけ買うことで満たされる」という、飽くまで自己満足で行っているという心情が表れているそうです。 また「# ネップリ」とはネットプリントの略で、コンビニのプリント機を使って作った、推しのキャラクターや人物のオリジナルシールのことを意味します。それを自分のスマホケースに貼ったり、ヲタ友にくばったりする際に、このハッシュタグが付けられるそうです。 ーーー ③「# ソンムル交換/#お菓子交換」 *こちらは、韓流アーティストやジャニーズグループなどのアイドルファン同士が、コンサート会場で初めて会った時に、メッセージ入りのお菓子を交換する際に付けるハッシュタグです。
このような「ヲタ活」関連のハッシュタグを付けることで、共通の趣味を持つ人とSNS上でコミュニケーションを取ったり、リアルな場で実際に会って交流したりすることが当たり前になってきていることが分かります。従来の「オタク」のイメージから、「ヲタ」と聞くとニッチな活動のように感じられますが、いまの若者にとって「ヲタ活」は当たり前であるという認識を持つことが重要だと「SHIBUYA109 lab.」は解説していす。
ーーー 【2.若者の心を掴むのは「カリスマ性」ではなく「共感性」】 「SHIBUYA109 lab.」が、発表した、最近のトレンド傾向によると、タレントやユーチューバーには、ある2つの共通点があると述べています。 それは… ●1.「応援したくなること」と ●2.「親近感があること」です。
若者が応援したくなるのは「共創の余地がある」人物。 以前は 例えば、「安室 奈美恵」のような「イットガール」=「カリスマ性」を備えた完璧な人が、若者から多くの支持を得ていました。しかし時代は変わり、現代では「自分の応援でビックになっていく」「距離感が遠くなく近づけそう」また「あわよくば、実際に会って交流できそう」と思えるような人の方が、若者の心を掴んでいるとのこと。
ファンと同じ目線に立っていたり、ファンの意見をそのまま反映したりするような人物は、特に人気を集め易く「完璧な人」よりも「ファンと共創していく余地がある人」の方が支持されるように変化しています。 「距離を近く感じることが若者の喜びに繋がる。」 この若者の心理を上手く捉えているのが、SHIBUYA109のTwitter公式アカウントです。SHIBUYA109のアカウントでは、その時のタイアップやポップアップのコンテンツに合わせて、ファンにしか分からない用語を使ってツイートするなど、ファンに寄り沿った投稿を心がけているそうです。 ●まるで「中の人もファンなの?」と思わせるようなコミュニケーションを図ることで、若者に親近感を持たせて沢山の「共感」を得らるとのこと。
また、ツイートに対するコメントには、必ず返信することで、「企業とフォロワー」という関係ではなく、「中の人と、フォロワー」という関係づくりをしていて、フォロワーと近い距離感での運用を心掛けているそうです。
その結果 以前までは、キャンペーンの前後で増減していたフォロワーも、今では キャンペーンが終わった後でも離れないようになったそうです。
ーーー 【3.企業が若者の心を掴む為に押さえたいツボ】 企業が若者の心を掴む為には… ●1.「共創する余白を作る」 ●2.「小さい“わかってる~!”を積み重ねる」 ●3.「SNSを連絡網にしない」 の3つのポイントが重要だと解説しています。
●まず「共創する余白を作る」とは、ファンが企業や商品に入り込める隙を持たせておくことを意味します。 完璧なものや、完成形を提供することよりも、ファンと一緒に創り上げていくような、共創する余地を持たせることの方が、若者のファンを獲得する上では大切です。
●次に「小さい“わかってる~!”を積み重ねる」とは、若者に「この企業は、自分たちのことを分かっている」と思わせるような、企画づくりや、SNS投稿などを、継続的に行って行くことです。若者にとって、その企業に親近感が持てるかどうかは、ファンになるかならないかを左右する重要なポイントです。
●最後に、企業のSNSアカウントは、画一的な連絡網になってしまいがちです。呼吸をするようにSNSを使っている若者にとって、SNSはリアルと同じくらい大切なコミュニケーションの場です。そんなSNSで、単なる新商品情報の発信や、イベント情報の発信を行っても、企業からの一方通行なコミュニケーションとして捉えられてしまい、若者には振り向いて貰らえません。 たとえ「企業アカウント」であっても、それを運用している中の人の「人間性」が伝わるような投稿をしたり、コメントに対して必ず返信したりするなど、SNSを「若者と企業のコミュニケーションが生まれる場」として意識することを忘れてはならないのです。 若者トレンドを知るには、若者のリアルな声を汲み取ることが重要です。若者の実態や若者の間で流行しているものは、分かっているようで、分からないことばかりだと、「SHIBUYA109 lab.」でも言っています。メディアで紹介された「若者の間で流行っているもの」は、当事者たちにとっては、もう古いトレンドであり、メディアを見てそこに乗っかろうとはしないそうです。
だからこそ 企業が、若者の心を掴み、次世代ファンになって貰う為には、これまでと同じ「マーケティングのやり方」だけではなく、若者のリアルな声を傾聴することを大切にしなくてはならないのです。
ーーー 【4.若年層に向けたブランディング】 なぜ今、次世代ファンづくりが必要なのか? そもそも、企業が若年層にアプローチするメリットは何なのか? それは… ●1.「影響価値」と ●2.「推奨価値」 の2つだと言われています。
SNSアカウント保有者の中には、毎日のようにSNSを更新 叉は 確認している「アクティブユーザー」と、そうでない「非アクティブユーザー」が存在しますが、若年層は 他の世代と比較すると「アクティブユーザー率」が高いことが特徴です。 つまり、若年層がSNSに投稿したくなるような仕掛けを考えることが出来れば、マスメディアなどにも取り上げられるような、「世の中ゴト」となり、話題までも生み出せる可能性があるからです。タピオカやチーズタッカルビなどが、その良い例です。 企業が若年層へアプローチする際には、以下の3つのステップが重要だと言われています。 ●1.「若年層を知る。」 ●2.「若年層に向けた文脈づくり。」 ●3.「若年層へアプローチ。」
●若年層の実態を知るには、まず一人ひとりが、様々な興味の対象を持っている事を知り、それらをしっかりと理解する必要があります。 例えば、アイドル応援専用アカウントをもつ人と、ポートレートなどの写真専用アカウントを持つ人とでは、それぞれ「共感ポイント」や「刺さる文脈」が大きく異なります。
「誰に、どんな文脈が刺さり、どうトレンドになっているのか」を把握し、丁寧に理解することが必要です。 ●若年ーーー層のSNSの使い方には、大きく3つの特徴があります。 彼らが、どのようにSNSを活用しているのかを把握することは、企業のSNSアカウントを運用する際にも参考になる為、SNS担当者は必ず知って於くべきポイントです。 ーーー ①「〇〇専用アカウント」 *今 若者の間では、「アカウントの統一性」が重視されています。若者のInstagramを見ると、「推しメン応援専用アカウント」「カフェ専用アカウント」「カメラ専用アカウント」。 中には、「ピンク色専用アカウント」といったものまで存在していて、若者にとっては、「好きなモノ・コト」ごとにアカウントを使い分ける事が当たり前になっているのです。
その為 企業側が、Instagramを運用する際にも、投稿内容や世界観に統一感を持たせることが求められます。
また、発信の為だけでなく、情報収集に於いても「専用アカウント」が活用されています。 例えば、「カフェの情報」を知りたい時は、Instagramでカフェ専用アカウントをフォローしておくと、自分の知りたい情報だけを手に入れることができます。 ーーー ②「Who文脈とWhat文脈」 *なぜ 若者の間で「専用アカウント」が増えたのか? 最近では、「誰が」話すかよりも、「何を」話すかが重要視されるようになっているそうです。 「私の好きなカフェ」という文脈の投稿では、自分のことを知る人しか興味を持ちませんが、「〇〇カフェが好き」というWhat文脈で投稿すると、同じ趣味を持つ不特定多数の人と繋がる事ができるというのです。
この「誰が」よりも「何を」が大切になってきている事について、定量的なデータも現れています。 昨年「#〇〇好きさんと繋がりたい」というハッシュタグがついたツイートは、1ヶ月だけで120,000件も投稿されていますが、その3年前は、約半数の60,000件しか投稿されなかったそうです。この結果からも、この数年間で、SNS上で同じ趣味の人と繋がって情報交換をしたり、「共感」し合ったりするニーズが高まっている事が分かります。 ーーー ③「位置情報の創出」 *Instagramでは、架空の位置情報を創作して投稿する事が、新たな若者トレンドになってきています。「女子高生の日常生活」や「プリント倶楽部」、友達の名前などの位置情報を、Facebookのチェックイン機能を使って登録・作成し、お互いに利用し合っているのです。
若者の間では「誰が」話すかよりも「何を」話すかが重視されていますが、それと同時に、若者はSNSを「自己表現ツール」として捉えています。いかに自分を表現するかが 大切である為、専用アカウントも人によって工夫が凝らされたものばかりです。
SNSで若年層のファンを獲得する為には、この若者特有のSNSの使い方を理解し、What文脈に沿って「何を」話すかを考えて投稿する事が欠かせません。
ーーー 【5.企業が若年層にアプローチする為のポイント】 ①「既に盛り上がっている"ネタ"を後押しする。」 *「# ネップリ」のように、若年層は「創作」も大好きなことから、企業アカウントの投稿や、プロモーションなどの施策でも自分のオリジナリティを出せる事が重要です。
一方で、盛り上がっているネタを活用するのは良い手段ですが、若年層には「マスメディア等で取り上げられた瞬間に冷めてしまう」という傾向もあります。若年層にとっては、もう古いものを活用しても、ファンになって貰うことはできません。 既に盛り上がっている"ネタ"を、いかに早く活用するかが重要です。
これはハードルの高いことのように感じられますが、Twitterを使って簡単にトレンドをキャッチアップすることもできます。
「# 流行りの」「# 流行りのやつ」「# 流行りのポーズ」「# 流行りの加工」などといったハッシュタグで検索していくと、段々 若者の間で流行っているものが見えてくるそうです。
ーーー ②「共感できる情報を届ける。」 *共感した人とSNSで盛り上がれるような仕掛けを作る事ができれば、「エンゲージメント」を高める事ができます。 最近では、「Twitterドラマ」など、SNS上でドラマを配信するプロモーション手法を取り入れている企業も見られます。 ここでも、いかに若年層の「共感」を得られるかがポイントです。 若年層に人気でリーチし易い「キャスト」をピックアップし、ストーリーの内容も時代に合ったものにする。 また、共演者たちのSNSから「こういう意図でストーリーが作られているんだよ」と発信して貰う事で、更にファンを増やす。 一つひとつの情報発信に「共感ポイント」を持たせる事で、フォロワーとのインタラクティブなコミュニケーションが生まれ、動画コンテンツが盛り上がっていきます。
ただし、コミュニケーション施策はどの企業でも実施し易い反面、ストーリーの伝え方や、伝える人が非常に重要です。
若年層の実態をきちんと理解し、「共感」できるストーリーで伝えていかなければ、施策を行なっても反響は起こりません。
「企画から、キャスティング、ストーリーテリング」まで、若年層に響くコンテンツを創るには どうすれば良いか、創意工夫することが重要です。
ーーー
③「リアルな場所でのアプローチ」
*「コンセプトストア」や、「ポップアップショップ」などのように、ブランドを体験できるリアルな場所を、若者トレンド等に合わせて作るという手法もあります。リソースや予算の問題もありますが、若年層に与えるインパクトや影響力は大きい施策です。
ーーー 【6.若年層のツボを押さえた企画づくり】 いま若年層が「買いたい」と思うモノは、「プロダクトスペック」と「メンタルベネフィット」の2軸で考えると良いと言われています。 「プロダクトスペック」とは、商品がいかに優れているかといった、商品自体が持つ価値の事を指します。 次に「メンタルベネフィット」は、その商品を使う事によって自分に、どんなメリットがあるか、また この商品を使っている自分は周りから見てどう映るのか、といった精神的な満足感を意味します。
商品やサービスが良くても、自分が使うイメージが湧かなかったり、メリットが感じられなかったりするものは、若年層には受け入れられません。新商品やプロモーションを考える際には、「プロダクトスペック」と「メンタルベネフィット」の両方が満たされているかを確認して、企画づくりを行う事が重要になります。
ーーー ◎と言うことで… 「若年層マーケティング」の重要性を書いてきましたが、 結局の所 若年層への理解の深さが、そのまま結果に直結します。 次世代ファンを獲得する為には、定量的なデータや、調査結果だけでなく、実際に会ってコミュニケーションを取ったり、若者が多く訪れる場所に足を運んだりするなど、定性的な面でも理解する努力が欠かせません。
また、彼らを一括りにせず、多様な興味関心があることを把握し、自分たちのターゲットとなるのは、どのような層なのかを見極める事が重要です。しかし その行程を踏まずに、「若年層マーケティング」をおこなっている企業は多く、結果として上手くいかずに頭を悩ませている方々も多いと思います。
「若年層」の事をある程度理解しているつもりでも、それは表面上の理解に過ぎない場合が多く、実際にターゲットとなる若者の声を聞き、彼らが この企画に振り向くかどうかを、若者の視点に立って振り返ってみるのが良いと思います。
更に、若年層にアプローチする際には「共感できる文脈づくり」が非常に重要です。だからこそ 企業のプロモーションでも、ただ 流行に乗ったものを提供するのではなく、ブランドの世界観が最大限に伝わるようにプランニングし、SNSやリアルな体験などを通じて継続的に伝えていく事が重要です。
そして、彼ら特有のSNSの使い方を充分把握し、一人ひとりの若者に寄り添い、「企業」と「ファン」が一緒に「共創」していけるコンテンツを生み出す事が、次世代ファンの獲得に繋がる最大のポイントだと思います。いやー、大変 難しい話です。
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