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【concanトピックス特別編】concanが考える「経験をデザインする力とは?」~副題:経験のデザインとは、「誰が、何を成すべきことなのか?」(コンセプトからアジェンダへ)~

株式会社コンカン

今日は、企業の人材育成の領域で注目されている「経験のデザイン」について深堀りします。


最近の『企業人材育成』の世界では、「経験のデザイン」という"言葉"が、よく語られています。

「経験からリーダーシップを学ぶ!」「経験を通して業務能力を向上させる!」など、数年前から『企業人材育成』の領域は、「経験学習モデル」を土台にした"育成手法"が注目され、そうした言説を背景にして、この"言葉"が使われ始めています。




この「経験のデザイン」を分かり易く 一言で、表現すると…

人間を成長させるには、「一皮むけるような経験」「決して易しくはないハードルの高い仕事」を割り当てて、きちんと他者からのフィードバックを与え、内省させると良い」と言うことです。


『企業人材育成』の言説に於いては、『人間に成長を促す為の、課題・仕事の割り振りや配列の組織化・構造化』のことを「経験のデザイン」と呼んでいます。もう少し簡単にいうと、「成長を促す為の仕事を振ること」です。


この"言葉"は、最近になって語られるようになりましたが、出始めは15年ほど前、「情報デザイン」や「デザイン教育」などの研究分野です。多摩美術大学の「須永氏」らが中心になって、従来の「グラフィックデザイン」や「プロダクトデザイン」に代わるデザインとして、「経験のデザイン」や「情報のデザイン」ということが主張されていました。

「プロダクト」や「グラフィック」というものだけでなく、これからのデザインとは「ユーザーの行動や経験」をデザインすることが重要です。その為の方法論などが探求されていました。


『企業人材育成』で「経験のデザイン」という事が主張されるようになって、「リーダーシップ開発」などの分野では、それに注目が集まってきていますが、これを「インプリメンテーション(実際に実行に移す)」の為に、今一度、この概念を細かく紐解く必要があります。

「経験のデザイン」は重要ですが、この"本質"を考える上で、一つの"ヒント"として、「経験のデザインとは、誰がデザインするものなのか」を考えることが必要です。


結論からいうと…

「経験のデザイン」というコンセプトは、様々な担い手によって、様々なレベル感をもった"学習支援"が可能だと言うことです。逆にいうと、各組織に於いて、「経験のデザイン」を実行に移す時には、実際に「誰」が、「何」を成すことを「経験のデザイン」と呼ぶのかを、それぞれの組織ごとに考える必要があると言うことです。


【「経験のデザイン」の主なステークホルダー!】

◆1.「本人による経験のデザイン」

◆2.「ラインマネジャーによる経験のデザイン」

◆3.「HRによる経験のデザイン」(支援)

◆4.「経営者による経験のデザイン」(支援)


最も分かり易いのは、「◆1.本人による経験のデザイン」です。会社は義務教育ではないので、大人である『本人』の成長のドライバーは、やはり『本人』です。どこかの会社の「社是」ではありませんが、「自ら機会をつくり、自らを成長させること」、言い換えると「自ら経験をデザインし、自らの成長を促すこと」は、多くのビジネスパーソンにとって重要だと思います。


「◆2.ラインマネジャーによる経験のデザイン」も理解し易いと思います。

"経験学習"とは、「ストレッチ課題をフィードバックの基に成し遂げ、内省を成すこと」です。そうであれば、マネジャーが「部下の成長を促すような『仕事課題』=出来るかも知れないし、出来ないかも知れないような仕事」を部下に任せて、フィードバックを成すことが、このレベルでの「経験のデザイン」ということになります。


次に、「◆3.HRによる経験のデザイン」とは、他の"言葉"を用いると、「HRは、自社社員の"経験学習"を促す為」に何が出来るのか。これは、様々な答えがあります。

最も想像が着くのが、「ジョブローテーション」です。人事が成す「異動」を「経験のデザイン」というコンセプトで、戦略的 かつ 意図的に成すことが出来れば、本人の成長にとってはプラスになります。

また、間接的ですが、「経験のデザイン」を成すラインマネジャーを支援するということも重要です。

まずは「経験のデザイン」というコンセプトをマネジャーや職場の上位者に理解して貰う機会を持つことが一番かも知れません。具体的には、研修などのデリバリーを通して、この理解を深めることです。

次に、マネジャーがしっかりと部下育成に取り組めるように、彼らの負荷を軽減したり、様々なツール群を準備することも、その一つです。



最後に、「◆4.経営者による経験のデザイン」とは、経営者も重要な「経験のデザイン」の担い手であると言うことです。例えば、経営者にしか出来ないような『抜擢人事』などはその典型です。

ちょっと変わったところでは、DeNAの南場社長のマネジメントには「エース級を職場から引き抜く」というのがあるそうです。つまり、職場のエース級を引き抜くことで、その下にいる人たちは、その穴を埋める為にストレッチをせざるを得ないと言うことです。これは、フィードバックとセットですが、面白い"育成手法"だと思います。

そして、経営者が成す最大の「経験のデザイン」は、実は「経営者自身が挑戦し、他者からのフィードバックを受け、学んでいることを、社員に魅せること」なのです。そうした様子を"観察学習"して貰うことが、最大の支援です。


●まとめると「経験のデザイン」とは、誰が何を成すべきか、もう少しブレークダウンして考えていくこと」です。

ただし、"学習研究者"にとって「経験」とは、あまりにも「所与」の概念です。何故なら「学習」の一般の"定義"とは、「経験により比較的永続的な行動変化が齎されること」だからです。"定義"自体に「経験」という"言葉"が内包されている訳です。要は、「学習するこは、経験だ!」というのは「まー、そうですが…」と言うようなニュアンスンです。そして、「それはそうなのは分かるが、で、そこから何をするの?」ということが見えてきません。

"経験学習"、あるいは、「経験のデザイン」という概念が、『企業人材育成』の領域に齎したインパクトは、非常に大きいものがあります。また、その理論や言説の重要性は、失われることはないと思いますが、この"言葉"を「コンセプト」から「アジェンダ」にするべき時が、来きているのかも知れません。



◎と言うことで…

concanが考える「経験をデザインする力とは?」と題して書いてきましたが、『人材の成長』に於いて重要な「経験」を組織的な"育成施策"に反映できている企業は、まだまだ 少ないと思います。


ここからは、過去の日本企業に於いける「経験」の『積ませ方』・『方法』が昨今の環境変化の影響によって難しくなっている要因について考えていきます。

現在の事業リーダーが若手・中堅社員の頃というのは、今と比較すると多くの業界が まだ 成長局面 もしくは 未成熟であり、比較的まとまった仕事が任され(任さざるを得ない)『成功/失敗経験』を積む中で、"能力開発"が行われてきました。

また、職能的な人事制度を背景にローテーションによって 幅広い仕事経験を積むことも容易だったのです。


一方、現在は 事業を取り巻く環境変化が厳しくなる中で、そういった仕事を任される機会も少なくなり、かつ 専門分化が進み、"スペシャリスト育成"が重視されるようになった結果、以前のようなローテーションも行われ難くなっています。


例えば、こんな話をよく聞きます。

●「昔は、とにかく人手が足らず、今では考えられないような案件を若手の時代にリーダーとして任された。上司は任せっぱなしで 自分でやるしかないと思った。」

●「新しい技術で社内に誰も有識者がおらず『お前やってみろ』と任され、誰にも聞けない状況で とにかく自分で調べて、動き回って、試作品完成にこぎつけた。」

●「今では、到底承認されない体制で新規事業の推進に七転八倒した。」


過去は、このようなエピソードに代表されるような仕事をやり切ることを通じて、仕事に対するスタンスを形成し、自信を高め、リーダーとしての素養を獲得していけたのです。

一方 現在では、後人の育成については「今は事業環境の変化によって失敗が許されない状況になっています。故に、相応の体制を整えた上で 仕事の分担を明確にする必要があり、過去のような幅広い経験を積ませる機会を用意することが難しい」ということです。


このように過去は比較的余裕があり、意図せずとも「良質な仕事経験」を積むことが出来たのに、現在は 機会そのものが少なくなっています。


そこで、これまで属人的・偶発的に行われてきた「経験」による育成を、これからは意図して設計していくことが必要になっています。しかし、そもそも 各企業に於いて、どのような「経験」が人の成長に寄与するのか、明確になっていないことが大半です。その結果、各現場での考え方に則し 個別に様々な取り組みが成されているものの、組織的な"育成施策"として行われていることは、多くありません。そこで、成長に必要な経験の明確化と意図的な経験付与を検討する観点を持つことが重要です。


こうした現状を踏まえると、「経験」を基点とした"人材育成"を進めていく為の第一歩は、成長に必要な「経験」を明確化することです。各企業固有の必要な「経験」があり、それを明らかにすることは当然重要ですが、一つの"仮説"として「リーダー育成に必要な"8つ"の経験」というものがあります。

この「"8つ"の経験」は、基本的にチャレンジングな課題を遂行する中で得られるものです。その「経験」を通じて知識・スキルを高めたり、事業を担うリーダーとしての『リーダーシップ』を形成していくものとして"定義"されています。


【"仮説" リーダー育成に必要な"8つ"の経験!】

◆1.「事業、社会に於ける影響・責任を実感する経験」

◆2.「経験者・実力者のモノの考え方や覚悟に触れる経験」

◆3.「責任者としての覚悟や主体性を問われる経験」

◆4.「ヒト・モノ・カネをマネジメントする経験」

◆5.「権限が及ばない人を動かす経験」

◆6.「多様な価値観の人と仕事をする経験」

◆7.「従来の知識・経験が通用しない状況の中で成果を出す経験」

◆8.「自分なりの問題意識に基づき目標を定め、行動する経験」


仮にこれを成長に必要な経験とした場合に、次に課題となるのが、「どのような仕事によって経験を積む機会を創出するか」です。"経験機会の創出"には、2つの「観点」から検討することが有効です。


●検討観点1.「未経験の職務への異動!」

リーダー候補人材を育成していく上では、多様な職種を経験させることで獲得される知識・スキルの幅を広げることも必要です。職種によって獲得される知識・スキルは異なります。

例えば、営業と経営企画では、業務遂行上 求められるスキルは異なります。営業は、『顧客対応力』、『折衝力』が主要スキルであるのに対し、経営企画では『分析力』、『構想力』といった具合です。因みに「"8つ"の経験」に照らし合わせると、「事業、社会に於ける影響・責任を実感する経験」は顧客接点を担う職務で経験し易く、「経営者・実力者のモノの考え方や覚悟に触れる経験」は経営企画や人事など コーポレートスタッフ部門で経験し易いといえます。


このように、各企業の主要な仕事を挙げ、そこから獲得される知識・スキルを整理した上で、ローテーションによって、「"8つ"の経験」を積ませることが可能になります。


●検討観点2.「現在の職務でのチャレンジ創出!」

また、ローテーションすることが難しい場合には、現在 担っている仕事の中で、困難な状況を伴う職務を付与することで、育成機会を創り出すことが出来ます。具体的には、以下の2つの観点があります。


Ο観点1.「今まで以上に困難な課題の付与!」

同じ職務の中でも ミッションによって 課題の難易度は異なります。

例えば、営業という職務の中で攻略困難な顧客群を担当させる、高い要望があり、かつ 対応に於いて、"緻密さ"が求められる仕事の責任者を担当させるなどがそれです。


Ο観点2.「新たなステークホルダーを巻き込む課題の付与!」

ステークホルダーが変化する課題も、困難な状況を作り出すことに繋がります。

例えば、全社の重要なプロジェクトのメンバーにアサインすることや、コーポレートスタッフに経営トップの意思決定をサポートするような情報収集・分析示唆だしを 主体者となって取り組ませることなどがそれです。


このように、変化が激しく、必要な人材を予測することが難しい昨今の状況を踏まえると、チャレンジや修羅場など「良質な経験」を積んだ人材を育成することが、企業の変化対応を機敏に進めていく原動力となると思います。



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