とある経営者から「ティール組織」という"言葉"を聞いたことがあります。経営や組織に関して疎いこともり、この"言葉"について調べてみると、「次世代型の組織モデル」として注目されているとのことでした。これは ベルギー人の「フレデリック・ラルー氏」の著書「ティール組織」が出版されたことで、日本でもトレンドワードになっています。しかし「ティール組織」は、まだまだ 実例が少なく、"言葉"を耳にしたことはあっても、どのような組織形態を指すのか、理解している人は少ないのが現状です。そこで 今日は、自分なりに「ティール組織」について調べて、今後の『働き方』について考察してみます。
先ず…
【「ティール組織」の著者「フレデリック・ラルー氏」について】
*「フレデリック・ラルー氏」は、ベルギー出身のエグゼクティブ・アドバイザーです。フランスのビジネススクール「INSEAD」でMBA(経営学修士)取得し、マッキンゼーのアソシエート・パートナーとして15年働いた後、フリーとして活動しています。
「ティール組織」という概念は、この「フレデリック・ラルー氏」が2014年にまとめた著書「ティール組織」で紹介されたことが始まりです。「フレデリック・ラルー氏」は、当時 マッキンゼーで組織変革プロジェクトを行っていましたが、約2年半に渡り世界中の組織の調査を行い、これまでの組織に当てはまらない次世代組織を見い出しました。それが「ティール組織」です。
では…
【「ティール組織」とは?】
*「ティール組織」とは、「各組織や個人が独自の工夫によってつくり上げた、『次世代型組織モデル』」のことです。個々の社員に意思決定権があり、社員の意思によって目的の実現を図ることができる組織形態を言います。「ティール組織」では、階層的な役職による組織マネジメントや予算・売上の目標設定、定期的なミーティングの開催等、従来の組織では当たり前のように存在していた慣例や文化が撤廃されていることが通常です。「フレデリック・ラルー氏」は「ティール組織」を、一言で以下のように表現しています。
●「細胞一つひとつ(社員それぞれ)が自由に変化し続け、自分たち(チーム)の"使命"を感じながら、個々人の意思決定によって、ありのままに動く次世代型の組織。」
因みに「ティール(Teal)」という"言葉"は、「青緑色」の一種を表わす英単語で、それ自体にさほどの意味はありません。
ーーー
次に…
【組織モデルの進化過程!】
*組織をいきなり「ティール組織」の形態にしようとしても、出来るものではありません。「ティール組織」を形成するためには、"5つ"の進化の過程を経ることが必要と述べられています。
その組織形態は…
■1.「レッド(衝動型)」
■2.「アンバー(順応型)」
■3.「オレンジ(達成型)」
■4.「グリーン(多元型)」
■5.「ティール(進化型)」
の"5色"になぞらえた"5段階"の進化を遂げていきます。これまでの認識を大きく覆すような変化が起こることで、次の段階へと進化していくのです。それでは一つずつみていきます。
■1.「レッド(衝動型)」
*「レッド組織」は、リーダーの圧倒的な力によって支配する組織形態です。目の前の利益を得ることを優先し、短絡的な思考に基づいた判断が行われることが特徴です。組織を構成するメンバーは、リーダーに依存していて、力に従属することによって安心感を得ています。「レッド組織」はオオカミの群れに例えられます。
■2.「アンバー(順応型)」
*「アンバー組織」は 所謂 軍隊形式で、上の者から下の者へ命令を行う組織形態で、指示命令系統が明確なことが特徴です。上下関係が絶対であり、多くの人数を束ねることが出来ます。「レッド組織」では、リーダーとなる特定の個人に依存していたのに対して、アンバー組織では組織階層によって役割分担をすることで、特定の個人への依存度が低下しています。
■3.「オレンジ(達成型)」
*「オレンジ組織」は、社長と社員といった組織階層はありますが、「アンバー組織」のように厳格な階級ではないことに違いがあります。「オレンジ組織」では数値によるマネジメントが重視され、評価の高い社員は出世をすることが可能です。社員同士が競争することが可能となり、変化を求める意識からも、イノベーションが起こり易い環境となります。「オレンジ組織」では、社員は機械のように働いています。
■4.「グリーン(多元型)」
*「グリーン組織」は、社長や社員という組織階層があることは「オレンジ組織」までと同じです。「オレンジ組織」では機械的な『働き方』をしていましたが、「グリーン組織」では人間らしい主体性を発揮したり、個々の多様性が尊重されたりするような組織を目指す、家族のような組織といえます。メンバーが多様な意見を出し合い、互いを尊重し合える組織ですが、合意形成に時間が掛かるという問題もあります。
■5.「ティール(進化型)」
*最終段階の「ティール組織」は、一つの"生命体"に例えられます。組織自体が社長や株主のものではなく、一つの"生命体"としてメンバーが関わり、進化する目的を実現するために関係し合っていく組織形態です。目的の実現のために、独自のルールに基づいた組織運営が行われています。「ティール組織」では、すべての意思決定に合意を得ることは必要とされず、個々に意思決定権があります。
ーーー
【ティール組織を実現する為の"3つ"のポイント!】
ティール組織を実現する為には、"3つ"の要件を満たす必要があります。
それは「●1.セルフマネジメント」「●2.ホールネス」「●3.組織の存在する目的が明確」の"3つ"です。
●1.「セルフマネジメント」
*「ルールや規律をあらかじめ決めて於いて、それに従う」のではなく、「等しい権限を持つ社員が共に働きながら、自然にルールやチーム、担当などの配置が決まっていく状態」が理想的です。そのため、個人の"強み"などを社員同士で十分に共有しておく必要があります。その上で、お互いが持つ知識や技術、仕事の進捗など、情報を常に共有できる環境を用意する必要があります。
●2.「ホールネス」
*「ホールネス」とは、直訳すると「全体性」という意味です。組織の中で、いかに普段通りの「ありのままの自分」で居られるかということです。自分自身の全てを職場に持ち込める環境にするため、慣行や文化、組織の努力があるということです。例えば、社員が子どもや犬を連れてくることも可能で、社員全員が「本当にありのままでよい」という"基本方針"に共感しているということです。
●3.「組織の存在する目的が明確」
*「ティール組織」では、組織全体を"生命体"の様に捉えます。生き物に生きる目的があるのと同様に、組織にも それが存続し、進化する目的があるとみなされます。組織の『存在意義』や『目標』、『働き方』などを、常に社員同士で共有していることが重要になります。
ーーー
◎と言うことで…
「ティール組織」について調べましたが、人材の流動性が高まり、フリーランスなども当たり前になっている"今"の時代に於いて、ごく自然な組織の移り変わりのようにも感じました。しかし すぐに「ティール組織」に変えようと動くのではなく、先ずは、自社の"強み"や"存在意義"を、全社員で考えることが組織のより良い変化を起こす第一歩だとも思いました。つまり 企業の存在意義を、C.I.(コーポレート・アイデンティティ)としてしっかり言語化し、そこに共感する社員が集うことで、自然となし得ることだと思います。そのため「ティール組織」を創り上げる前に、「企業」そして「個人」それぞれが、自分の向かう先をしっかり言語化することが、今まで以上に求められているのだと思います。本当の「ティール組織」が出来上がった企業は、人も企業も幸せになるのだと思います。
●最後に「ティール組織」に於いて、勘違いされ易いことについて書きます。
それは…
●「ティール組織が、最も優れている訳ではない」ということです。
*「ティール組織」は組織発達の歴史から導かれた最も進化した組織形態ですが、あらゆる組織と比べて、最も優れたモデルであるとは言い切れません。何故なら 当然ですが、組織の目的やメンバーの個性などによっては、「ティール組織」ではない組織形態が望ましい場合があります。極端に言うと、例えば「軍隊」や「警察」のような組織では、指揮命令系統が明確な「アンバー組織」が望ましいはずです。
最も 大切なことは…
●どんな時も「ティール組織」であることよりも、その時々で組織形態が変化できる「アメーバ」のような組織になることかも知れません。
Comments