みなさんは、「アート」と「デザイン」の違いが分かりますか? 実は私が住む福岡で開かれていた「バンクシー展」を"きっかけ"に、私もこの"問い"について考える機会がありました。「バンクシー」と言えば、神出鬼没の覆面天才「アーティスト」として、世界で名を馳せる超有名人です。オークションに出されると、一つの作品で なんと「約13億」の価格が付けられたこともあります。そんな「バンクシー」の作品を見られることを楽しみに、展示会に行ってみるも「アート」に疎い私にとって、何が凄いのかが全く理解できずに。。。
何故なら「アート」に関しての基礎知識がなく、「『アート』に『デザイン』を求めていたから」です。そこで 今日は この「アート」について、「デザイン」と比較しながら調べてみます。ちなみに、この時に読んだ本が「13歳からのアート思考(著 末永 幸歩)」です。余談ですが、この本は超初心者に向けて書いてある本で、ぜひ 少しでも「アート」に関心がある人にお勧めです。個人的には、今まで読んだ本の中で一番と言って過言でないくらい、面白い本でした!
先ず… 【「アート」と「デザイン」の辞書的な意味!(参照:大辞林)】 ◯「アート」とは… ●「特殊な素材・手段・形式により、技巧を駆使して美を創造・表現しようとする人間活動、及び その作品」 ◯「デザイン」とは… ●「作ろうとするものの形態について、機能や生産工程などを考えて構成すること」 です。何だか、分かったようで 分からない気がします。 ーーー そこで ここからは、様々な切り口で比較しながら見ていきます。 【現在の解釈から見る『アート』と『デザイン』の違い!】 ●「アート」とは… *簡潔に言えば「表現(創造)」」と言われています。表現の中に制約はありません。アーティストは自分や他者の感情や体験、もしくは 日常や歴史的な事柄をアートに昇華しています。そこには、必ずしも観客がいる必要はありませんし、最終的なアート作品に創り上げるのに、決まった工程も無ければルールもありません。 では… ●「デザイン」とは… *簡潔に言えば、「問題の解決」と言われてます。多くのデザイナーが視覚的センスに長けているために、デザイナーにはスケッチや写真などの技術が求められると誤解されがちです。しかし この説に基づくと、優れたデザイナーは「問題解決能力に長けた人物」であり、写真やスケッチなどの視覚的センスを必要とする能力は、あくまで 問題を解決する際に立てた仮説を、実証するために使われるものになります。 ーーー 次に… 【必要性から見る『アート』と『デザイン』の違い!】 ●「『アート』の存在意義」 *「アート」の最も重要な役割は、世の中に「問題提起をすること」です。アーティストは表現をする際に「アート」という手段を使って、世間に対する疑問や批評を人々に伝えています。そのため、アーティストにとって「アート」そのものが観客に理解される必要はありません。観客が考える"きっかけ"を提示しているのです。 つまり、私が「バンクシー」の作品を見て、意味が理解できなかったのは当然とも言えます。寧ろ それが正解で、ある種それがアーティストの狙いなのです。アーティストは独自の手法で答えを探しているので、そもそも 理解される必要はないのです。 一方で… ●「『デザイン』の存在意義」 *「デザイン」は意味を理解してもらう必要があります。何故なら問題を解決する必要があるからです。より多くの人に意図を理解してもらい、例えば 何かのプロダクトだと、そのプロダクトが使い易くなるように 「デザイン」をする必要があります。つまり、できる限り最善の答えを見つけないといけないのです。
ーーー 【知名度から見る『アート』と『デザイン』の違い!】 *みなさんは「アート界で有名なアーティスト」と「デザイン界で有名なデザイナー」の、知名度や認知度について考えたことはありますか?例えば「パブロ・ピカソ」と聞いて、多くの人が「ピカソ」の作品を直ぐに頭に思い浮かべられると思います。一方で、「ジョナサン・アイブ氏」と聞いて、どれだけの人が知ってい?実は「ジョナサン・アイブ氏」は、Apple製品の有名デザイナーですが、Appleが世界中に普及しているにも関わらず、殆どの人が知らないと思います。 これこそ「アート」と「デザイン」の違いと言えます。 つまり… ●「アーティスト」は"主観"であり、社会に優れた問題提起をしたという理由で知名度も比例して上がります。 ●一方 「デザイナー」は"客観"であり、良いデザイナーであれば ある程、自己を製品から切り離せているということで、デザイナーよりも製品の知名度が上がるのです。 ーーー ◎と言うことで…
今回は偶々「アート」に触れたことで、「アート」と「デザイン」について書きました。今 考えると、私は「バンクシー展」に「分かり易い面白さ」を求めていた時点で、間違いだったとも言えるのです。寧ろ その面白さは、私自身が"主観"で創り上げるしかなかったのです。所謂「自己解釈」です。もう一度 この前提条件で「バンクシー展」に行くと、違った気づきや面白さを感じられるはずです。因みに、現在は「アート思考」という言葉を聞く機会が増えました。これもAIなどの技術が発展した現代に於いて、「問題解決」というデザイン的な思考よりも、「問題発見」というアート的な思考が求められているからです。
ここまでを踏まえて、皆さんお気づきだと思いますが一番 厄介なのが…
●「アーティスト気質のデザイナー」です。 *デザイナーとアーティストは、その仕事内容、ゴール、プロセス、マインドセットなど、あらゆる側面で異なっています。しかし、ここを勘違いしている人が多くいるのも事実です。今までの私もそうでしたが。。。例えば デザイナーは、自分が創り出したモノをしっかりと説明する義務があるのに対し、アーティストは解釈は相手次第なので、あまり説明を求められません。なので、アーティスト気質のデザイナーは、「何故、このようなデザインにした?」という問に対して、「何となく綺麗だから」などの抽象的な返答をしてはいけないのです。この事例として、2014年に「セブンイレブン」のコーヒーマシンの外観が一新されました。しかし、かなりの不評で、これがまさしく「『アート』と『デザイン』が混同した事例」と言えます。外観は非常に"スタイリッシュ"なものに仕上がった反面、その使いづらさが話題を呼び、結果 各ボタンの機能を解説したテプラが一面に貼られるという事態になったのです。 最後に、自分なりに、一言で「アート」と「デザイン」の違いを表現すると… ●「ユーザーの有無」だと思います。 「『アート』は自分の中に、『デザイン』は社会の中に存在する」と言えると思います。長くなりましたが、以上です。
Comments