皆さんは「知の呪縛」という言葉を聞いたことありますか? 知識は幾らあっても損をすることはなく、普通は 沢山 持っていた方が良いのは当然です。ところが、その反対に知っているからこそ、起こる問題もあります。人は、自分が知っていることを、他の人も知っていると思ってしまうからです。知識を得ると、その知識を持っていない人の気持ちが 分からなくなる現象が起きてしまいます。それを「知の呪縛」と言います。今日は、この事について調べてみます。
改めて…
【「知の呪縛」とは?】
●「知識を得ることによって、知識が無い時の状況が分からなくなるという現象」です。所謂 他人が、何故 理解できないかも分からなくなってしまうのです。
*『能力』が無い人には、当然 『能力』がある人のことを想像することは出来ません。例えば「野球の大谷選手は、何を考えながら打席に立っているのか?」といったことを、私たちが 想像することは困難です。
逆に、『能力』や『知識』が有る人は、それが 無い人の状況を想像することが出来ないのです。数学が得意な先生は、数学が 苦手な生徒の"頭"の中を想像することは出来ません。それが故に、生徒のレベルに合った「教え方」を工夫することが出来ず、「何故 この生徒は、こんな事も分からないのだろう。。。」という印象を持ってしまいがちです。昔は その先生も、生徒と同じような心境だったことがあるはずなのに。。。『技術』や『知識』を 一度 獲得してしまうと、それ以前の状況を思い出すことが難しくなるのです。だから 野球でも、一流のプレーヤは 必ずしも一流の指導者になれないのです。
ここで…
【スタンフォード大学での実験!】を紹介します。
*スタンフォード大学で、ある実験が行われました。
それは、2人の被験者の内 1人が"頭"の中に 何か曲を思い浮かべ、そのリズムで机を叩いて、何の曲かを当てさせるというものです。例えば「どんぐりころころ」を"頭"に思い浮かべた場合は、「タンタタタタタタタンタタタ」というリズムで机を叩きます。色々な曲を使って実験を行なった結果、音を聞いた人間は 全体の「2.5%」しか、曲を当てることが出来ませんでした。一方で 叩いた方の人間は半分ぐらい当たるだろうと予測していたのです。曲を思い浮かべている人間にとっては、リズムと曲との結び付きは 明白ですが、予備知識が無い人間には それを 殆ど 理解することが出来なかったのです。知識を持つ人と、持たない人との感じ方の違いは 甚大であり、これが「知の呪縛」です。
【普段の生活にも潜んでいる「知の呪縛」!】
例えば…
●「人とコミュニケーションをとる時!」
*周りの人と話していて、「何で、伝わらないんだ?」と感じることがあると思います。本当に 理解して貰う為には、「知識の前提 共有」が不可欠なのです。相手に物事が伝わらない時は、伝える側に問題があることが 殆どなのです。
また…
●「トイレに入った時!」
*トイレの操作パネルに、後から「テプラ」が貼ってあるのをよく見かけます。「テプラを貼られたら、デザイナーの負け」とよく言われるそうです。しかし よく、操作パネルに「水を流すときは、こちらのボタンを押して下さい」という「テプラ」が貼られているのは、当然 意味が伝わっていないからです。これは、操作パネルをデザインした人が、使用者の気持ちを理解できないまま、設計してしまっている証拠です。
この「知の呪縛」は仕事の現場でよく起きます。特に「アイデア」ベースで 会話するときです。「アイデア」の発案時は、どうしても「自分の世界」で物事を判断し、消費者の心理を無視しがちになってしまうからです。
では…
【『知の呪縛』を防ぐ、「アイデア」とは?】
*その「アイデア」とは、以下 "6つの"エッセンスを含んでいることです。これは、アメリカの「ハース兄弟(チップ・ハース、ダン・ハース)」というマーケティング学者によって、世の中の成功する「アイデア」と、失敗する「アイデア」の違いについて研究を重ねて得られた結果です。
■1.「単純明快である」
*人が、一度に把握し、覚えられる情報量には限界があります。アイデアは、情報量を減らせば減らすほど、記憶に焼き付き易くなります。単純明快であるということは、核であるメッセージが明快で、簡潔で 表されていることです。ひとつのメッセージで言いたいことは ひとつにし、誰でも分かる"言葉"で、誰でもイメージできる内容にすることです。
■2.「意外性がある」
*人間の"脳"は、非常に敏感に出来ていますが、一貫したパターンがあると、すぐ順応し注意を払わなくなります。アイデアに興味を持続させるには、予想を裏切る必要があります。"驚き"という感情には、『警戒心』や『集中力』を高める効果があります。常識から少し外れた"言葉"を使って、関心を記憶に焼き付け易くすることです。
■3.「具体的である」
*記憶に焼き付き易いアイデアとは、具体的なイメージを備えています。抽象的な表現では、人によって 全く 違う解釈をすることがあり、行動にも差が出てきます。曖昧としたことは、イメージができず記憶にも残りません。
■4.「信頼性がある」
*『信頼性』は、『説得力』とも言えます。「誰が 言ったのか?」「根拠は 何なのか?」ということは非常に重要です。人の権威や有識者の声を使うことは、非常に有効です。
■5.「感情に訴える」
*アイデアを心に掛けて貰うためには、相手の感情を掻き立てることが"コツ"です。例えば、「禁煙キャンペーン」などで薄汚れた肺の画像を見せたり、禁煙することで お金が節約できるというメリットを提示することで、タバコを吸い続けたいという欲求を抑える方法があります。統計的な情報だけでなく、アイデアを受け取った人が、どのような未来になるのかを想像できるような訴え方にすることで、記憶に焼き付けることが出来ます。
■6.「物語性」
*物語性があれば、アイデアを実行に移して貰える確率が上がります。アイデアを実行したことで起こるメリットや実行の仕方などを語ることで、相手はアイデアを自ら実行したかのような体験をすることが出来ます。すると、相手は自らも実際に体験してみたいという欲求を駆り立てることが出来るようになるのです。
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◎と言うことで、ここまで「知の呪縛」について調べましたが…
私が"頭"に浮かんだのが、「トイレの男女表記」です。最近は、おしゃれなデザインで表現されているものをよく見ますが、正直 しっかり見ないと、どちらが男子トイレか見分けが付かないことが、よくあります。
こういった、客観的な目線で見ると「知の呪縛」は幾つも思い出すことが出来ます。しかし いざ 自分に置き換えてみると、私自身も相手に上手く 伝えきれないことがよくあります。やはり「相手の立場」に立って、客観的に考えることが 大事だと再認識しました。仕事が出来る人は「何を どうすれば良くなるか?」「自分が どうすることでスムーズに事が運ぶか?」といった想像を、より多くしているはずです。
そして その想像は、人間関係に於いても同じです。「どうすれば、相手が気持ちよくなるのか?」を考えている人は、当然 周りからも信頼されます。相手の立場に立って考えることは、決して「対人スキル」だけに留まらず、「ビジネススキル」とも言えるのだと思います。
逆に、絶対にやってはいけないことは、相手に伝わらない時に「主観的・感情的になること」だと思いました。
そんな、上手く伝わらない時に効果的なのが…
●「敢えて、3秒かけて深呼吸をすること」です。
私も 早速 今日から取り組んでみます。
長くなりましたが、以上です。
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