今日は 若手社員の私が、成長している企業のC.I.を紹介します。ニッチアイテムで、成長している企業です。
第55回は、"アイデア家電"を開発する新潟発の家電メーカー「ツインバード工業 株式会社」です。
【会社概要】
*「ツインバード」は、調理家電や照明器具、掃除機などの製造販売を中心とした家電メーカーです。売上高は「約125億円」(2021年)、従業員数は「約300人」となっています。本社は、世界に誇る 「モノづくりのまち」と呼ばれている「新潟県燕市」にあります。「新潟県燕市」は、ドラマ「下町ロケット」でも出てくるほど、高度で多様な金属加工技術が集まる場所です。特に、スプーンやフォークなどの「金属洋食器」の国内シェアが90%を超えるほどで、「金属機器」に秀でた町です。
【ツインバードの歴史】
*ツインバードの始まりは1951年まで遡ります。前身の「野水電化皮膜工業所」として、新潟県三条市で創業しました。創業時はメッキ加工業でしたが、1971年頃に下請けのメッキ加工業からの脱却を目指し、自社製品やギフト商品の開発へ乗り出しました。ギフト商品は結婚式の引き出物で需要があり、それなりに売れていました。しかし ギフト市場は大きくなく、直ぐに飽きられるという特徴もあり、成長に限界がありました。
そこで、家電メーカーを目指して現状から脱皮を図っていくことにしました。「ツインバード」のブランド名で製品開発を始めたのが、1977年です。その後に開発した「インバーター蛍光灯」が大ヒットし、家電メーカーとしての認知が徐々に広がっていきました。
そして 大きな"きっかけ"となったのが、社長の交代です。創業者の息子であり、現社長の「野水 重明氏」が会社を継ぐことは決まっていましたが、「野水 重明氏」が「ツインバード」入社と同時に、腹を括る為に、父である社長の部屋に行って、「1人代表をやらせてくれ」と言ったのです。この時に「社長は会長になって、代表権の座を降りて下さい」と話をしました。すると、意外にも父から「自分も永遠に経営者は出来ないから、お前に任せた。やってみろ」と言われたそうです。その日以来、会社の経営に関しては 一切、前社長は 何も言わなったそうです。「野水 重明氏」は、この時に、"テクノロジー"や"技術"の勉強をする為に、大学院まで進学し、博士号まで取得したという経緯があります。
そして 「野水 重明氏」が社長になり、90年代後半以降は『調理家電』が次々とヒットしました。それまで右肩上がりで伸びていた外食市場が、1990年代後半に減少に転じて、代わって 家庭で料理して食事をする「内食」の拡大に合わせて、電子レンジやホームベーカリー、オーブントースター、精米機など『調理家電』を次々と開発していったのです。
〇社名の由来
*「ツインバード」の社名の由来は、「一対の鳥」です。「商品を使うお客さまと商品を創る私たちを常に 一対の"鳥"と考えたい。」そんな思いから、社名を「ツインバード」と命名されています。
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それでは ここで、ニッチ家電で成長している「ツインバード工業 株式会社」の、"イケてるC.I."の一部を紹介します。
【経営理念】
「感動と快適さを提供する商品の開発」
人々に感動を与え、新しい生活の喜びを創り出す商品を創造開発し続けます。
〇「相互信頼を通じた豊かな関係作り」
お客様との信頼関係を大切にし、一対の"鳥"となって相互繁栄をめざします。
〇「快活な職場づくりへの参画と社会の発展への寄与」
新しい仕事や可能性に挑戦し続けることにより存在価値を高め、社会の発展に貢献します。
〇「自己の成長と豊かな生活の実現」
仕事を通じ自己の成長を図り、豊かな生活を実現します。
【存在意義】
1.感動と快適さの提供による人々のライフバリュー向上
2.燕三条地域特性を生かした付加価値創造と地域経済成長の牽引
3.グローバル視点で活動し、国内外の社会課題の解決
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【若手なりの成長理由 分析】
ここからは、若手なりに「ツインバード」の成長理由を、仮説ですが "3つ"上げさせて頂きます。
先ず、結論からいうと…
◆1.「『一対の鳥』というこだわり」
◆2.「ターゲットを絞ったイベントを開催し、独自の商品開発に活かしている点」
◆3.「燕三条市という、立地を活かしている点!」
の"3つ"です。それでは、1つずつ見ていきます。
◆1.「『一対の鳥』というこだわり!」
*「一対の鳥」とは、常に一体となって飛ぶという意味です。ここでいうと、「ツインバード」と「お客さま」が一緒になって商品を開発していくことです。「個」の時代、或いは 多様化の時代に対応していく為に、お客さまの"声"を拾う為のお客さまとの接点を、「ツインバード」では大事にしています。更に、「ツインバード」の強みは社員の『20%』が企画・開発する開発型企業であり、生活やライフスタイルが多様になり、ニーズも多様化している今の時代に於いて、お客さまから拾い上げた"声"を「小ロット」で「スピード感」をもった商品開発が出来ることです。
*しかし お客さまの"声"を、そのまま商品にしても売れません。何故なら、当然 顕在化したニーズは、既に商品化されているからです。潜在ニーズを、俯瞰して捉える必要があり、その為には お客さまの"声"を細かく、真摯に受け止めていくしかありません。「ツインバード」では、とにかく タイムリーにコミュニケーションをとることに投資をしていて、例えば 東京 日本橋ゲートオフィス内には、「Gate CAFE」という名のオープンカフェを附設し、付加価値創造の"場"として運営しています。
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◆2.「ターゲットを絞ったイベントを開催し、独自の商品開発に活かしている点」
*「ツインバード」では、多くのイベントを行っています。その際に、意識していることは この段階で、お客さまをセグメントして、ターゲットを意識しています。例えば イベントも、ただ 無造作に集客をするのではなく、レストランのオーナー、シェフだけを招いて、ツインバードの調理家電を使って 一緒に料理教室を行ったりしてます。その過程で「ツインバード」ユーザーの"声"を拾い上げて、次の商品開発に活かしています。
*他にも 2020年 発売された「着るラジオ」も、このようなイベントから開発された「ニッチ家電」と言えます。ファンとウォーキングのイベントを開催した際に、偶々「ウォーキングしながらでも聴けるラジオがあったらいいな」という声から誕生しました。
このように、商品を開発する段階から、お客さまを巻き込むことで、自然と競合他社とは差別化が出来ます。そして、デザインも含めたオリジナリティーある家電製品を、小ロットでスピーディーに、世の中の変化に柔軟に対応してご提供できるということが、「ツインバード」のビジネスモデルです。
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◆3.「燕三条市という、立地を活かしている点!」
*「ツインバード」の商品は、リーズナブルで良心的な価格という強みもあります。では「何故 小ロットでも実現できるのか?」それは「燕三条市」という立地です。燕三条市は、日本のモノづくりの聖地であり、素晴らしい金属加工、プレス、研磨などの工場が沢山あります。燕三条市には、モノづくりの生態系、エコシステムが既に出来上がっているのです。こういった素晴らしい協力工場さんとネットワークを張り、コラボレーションすることで、優れた商品をローコストで製造できるのです。
因みに、「家電」というカテゴリでは、特に 工場の場所によって、大きくコストが変動します。何故なら 家電は、「半導体」や「精密機器」、「プラスチック」の組み合わせであり、多くの部材を別々の場所から一箇所に集積する必要があり、運送費に大きくコストが掛かるからです。
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◎と言うことで…
*「ツインバードさん」を調べましたが、失礼ながら 決してどこにも負けない「開発力」や「ビジネスモデル」があるわけはなく、愚直にお客さまの"声"を吸い上げたことが、1番の成長理由だと思います。
私も、商品開発に携わったことがありますが、簡単そうで 中々 出来ないことだと思います。何故なら「お客さまの"声"を吸い上げるには、企業としての辛抱強さが必要だから」です。決して簡単に、お客さまの"声"が顕在化されることはなく、長い時間が必要だと思います。そういう時には、企業 そして 現場開発者の焦りなども出て、売上に走ってしまいがちだと思います。それでも しっかり、お客さまの"声"に耳を傾け、市場にないニッチ商品を作れるのは、企業としての方針が明確にあるからだと思います。そして 何より、そこで 勤務されたいる人が、モノづくりを好きだから、出来ることだと思います。
そんな「ツインバードさん」ですが、今 特に注目されている企業です。
それは、世界初の「スターリングクーラー」を使った事業展開を予定しているからです。「スターリングクーラー」とは、マイナス200度まで冷凍できる装置です。非常にコンパクトで軽く、振動にも強く持ち運びが出来ます。更に 非常に環境にも優しいという特徴があります。
実は これは、既に 200年前から発明されていましたが、これを製品化できるメーカーがありませんでした。非常に部品点数が多く 精密な部品加工が必要とされているからです。「ツインバードさん」では、燕三条の技術も活かして、世界で初の「スターリングクーラー」の量産化に成功しました。これにより、コロナ禍で 冷凍技術のニーズが高まっている今、更なる成長が見込まれています!
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●それでは 最後に、C.I.について、若手なりに一言いわせて頂くと…
*「経営理念」として、「新しい生活の喜びを創り出す商品を創造開発」とあり、まさに 「ツインバードさん」を表現している"言葉"だと思いました。本当に お客さまに寄り添った、商品開発の姿勢が、C.I.からも読み取れて、拘りを感じました。ただ 敢えて、若手なりに一言
気になった点を、上げさせて頂くとしたら、「経営理念」の中に、"社内向け"の言葉と、"社外向け"の言葉が混在している点です。concanでは、"社外向け"の言葉として、取り組む事業を通して、成し遂げたいゴール、創り上げたい世界観を「企業理念」。そして "社内向け"の言葉として、社員との約束を「経営理念」と定義しています。
ここで 自分なりに、企業の"幹"である「企業理念」を、勝手に創らせて頂くとしたら…
●「ニッチトップ企業を目指し、"あったらいいな"のモノづくりで、ふと 喜んで貰いたい!」
出来れば、コンカンが提唱するC.I.と、御社のC.I.を一度 照らし合わせて頂けると有り難いです。
*concanが考えるC.I.とは?
本当に、若手が生意気ばかり言って、申し訳ございません。
長くなりましたが、以上です。
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