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株式会社コンカン

【若手社員が勝手に"イケてる企業のC.I.を切る"!】「第54回:株式会社 ヤッホーブルーイング」

今日は 若手社員の私が、成長している企業のC.I.を紹介します。「働きがいのある会社」ランキングで、2年連続でベストカンパニーに選ばれている企業です。

第54回は、クラフトビール「よなよなエール」で一気に話題になり、知る人ぞ知るビールメーカー「株式会社 ヤッホーブルーイング」です。





【会社概要】

*「ヤッホーブルーイング」は、1996年5月に長野県軽井沢市にて創業されました。今年まで13期連続で増収増益を続け、売上高は「約200億円」、従業員数「130人」と、クラフトビールというニッチ市場で、急成長している企業です。看板製品「よなよなエール」をはじめ、「インドの青鬼」「水曜日のネコ」など、個性豊かな製品名と本格的な味わいのビールで、ファンから熱い支持を得ています。「突き抜けて面白いことを追求し、実行する遊び心。」これこそが、「ヤッホーブルーイング」を象徴する"言葉"です。社内の階層をフラットにして、社長も平社員もニックネームで 呼び合い、自由に話せる環境を作ることで社員全員が挑戦するという、異質な『会社風土』で知られている企業です。


そんな「ヤッホーブルーイング」の創業者は、実は 星野リゾート代表「星野 佳路氏」です。とは言え 星野リゾートは「ヤッホーブルーイング」の経営に、殆ど 関与していません。寧ろ 飲料業界の最大手「キリンビール株式会社」と資本提携しています。業界最大手の「キリンビール」が買収する訳でも無く 資本提携という形を取ることで、「ヤッホーブルーイング」の風土を残し続けたとも言えます。そんな、「ヤッホーブルーイング」は、「株式会社 働きがいのある会社研究所(GPTWジャパン)」が主催する、「働きがいのある会社」ランキングでは、2年連続でベストカンパニーに選ばれている凄い企業です。

ビール業界は、大手4社(キリン、サッポロ、アサヒ、サントリー)の"寡占市場"と言われています。そんなビール業界に、風穴を開けるのが「ヤッホーブルーイング」かも知れません。


【創業の"きっかけ"】

*「ヤッホーブルーイング」の初商品である「よなよなエール」が生まれる"きっかけ"になったのは、ある一杯のビールでした。それは アメリカ留学中の「星野 佳路 氏」が、偶々 訪れたパブで飲んだビールです。アメリカでは ありふれた味わいのビールでしたが、日本のビールとは 全く 違ったのです。琥珀色の液体に、ホップの華やかな香り、そして モルトの深いコク。生まれて 初めての味わいだったそうです。

「こんな味わいのビールが世の中にあったなんて!」と思ったそうです。そして 「今、飲んでいる個性的な"香り"と"味わい"のビールを日本にも広めたい!」この想いが 「よなよなエール」を生み出したのです。衝撃を受けた「星野 佳路氏」は、熱い想い をそのままに持って帰国し、さっそく ビール創りを開始しました。因みに、「よなよなエール」の意味は、「『毎晩』のように、個性豊かなビールを楽しんで頂きたい」です。「ヤッホーブルーイング」の全ての源泉は、この"想い"と言えます。


【そもそも、「クラフトビール」とは?】

*若者のビール離れや、消費者の嗜好の多様化が進む中、業界全体の出荷量が14年連続で下回っているビール類市場。このような市場に於いて成長品目と言われているのが「クラフトビール」です。そんな「クラフトビール」の定義は、明確にある訳ではありませんが、「小規模な醸造所がつくる、多様で個性的なビール」というのが一般的です。クラフト(craft)は英語で「技術」「工芸」「職人技」などを意味する"言葉"で、これまでにない多様性と、個性的な味わいやブランドを備えているのが"特徴"です。

そんな「クラフトビール」が、ここ最近 話題になっている理由は"2つ"です。

一つ目が…

〇「若者のアルコール(特にビール)離れ!」

*2000年代と比べて、会社自体が個人化していて、ビールを飲むことで得られる感動に共感し難くいことが挙げられています。例えば、ビールが最も美味しいと思える瞬間は、「大きな仕事を終えて"労"を分かち合う時」や、「飲み会でみな一緒に盛り上がって乾杯する時」です。しかし 今は、そもそも 飲み会自体が減っているのが実情です。そこで 居酒屋のビールに耐性のない若者が飲み易い「クラフトビール」に流れているのが実情です。


そして 二つ目が…

〇「規制緩和により、参入障壁が低くなったこと!」

*日本で「クラフトビール」という"言葉"が知られる前、かつてのビール業界は、大規模な製造を担える大手企業のみが参入できるよう、ビールの製造免許取得に必要な年間最低製造量は「2000KL」と定められていました。しかし 1994年の規制緩和により、最低製造量が清酒と同じ60KLにまで引き下げられました。その結果、日本各地にマイクロブルワリ―(小規模な醸造所)が数多くできます。町おこしとしてつくられる「地ビール」は一大ブームとなったのです。


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それでは ここで、独自の企業文化で注目されている「株式会社 ヤッホーブルーイング」の、"イケてるC.I."の一部を紹介します。

【Mission(ミッション)】

「ビールに味を!人生に幸せを!」

画一的な味しかなかった日本のビール市場にバラエティを提供し、新たなビール文化を創出する。

そして ビールファンにささやかな幸せをお届けする。


【Vision(ビジョン)】

「クラフトビールの革命的リーダー」

日本でクラフトビールカテゴリーを創出し圧倒的にNo.1となる。

そして 革命的な活動でクラフトビール市場を広げ新しいビール文化創出の礎を築く。


【Culture(文化)】

「ガッホー文化」

お客様のニーズに、社員の自発的なプラスアルファの努力で積極的に応え、

100%ご満足頂くことでビール製造・サービス業としての醍醐味を味わう、

そういう仕事の仕方 又は 職場環境。

〇ガッホー文化の6つの要素

「フラット」「究極の顧客志向」「自ら考えて行動する」「切磋琢磨」「仕事を楽しむ」「知的な変わり者」


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【若手なりの成長理由 分析】

ここからは、若手なりに「ヤッホーブルーイング」の成長理由を、仮説ですが "4つ"挙げさせて頂きます。

先ず、結論からいうと…

◆1.「徹底的な差別化を行う為の、ターゲティング!」

◆2.「『らしさ』が伝わる味わい深いネーミング!」

◆3.「熱狂的ファンを増殖させるリアルイベント!」

◆4.「長期的に関係を築く、お客さま対応!」

の"4つ"です。それでは、一つずつ見ていきます。


◆1.「徹底的な差別化を行う為の、ターゲティング!」

*「ヤッホーブルーイング」では、「100人中 1人に刺さる」というのが絶対的な"思想"です。ここまで、具体的にターゲティングする理由は「みんなに好かれるのは誰にも好かれていないのと同じ」というヤッホーブルーイング流のニーズの捉え方があるからです。それぞれの製品は、その市場規模が限定された『ニッチ・セグメント向け』に開発され、製品開発の"方針"は、以下の"3つ"です。

〇1.「差別化を他社が真似を躊躇するくらい行う」

〇2.「ターゲットは狭く、具体的に」

〇3.「賛否両論あって良い」


その為には、製品開発の過程で具体的な『ペルソナ』を設定し、製品ごとにターゲット顧客を徹底的に絞り込んでいます。そして ターゲット顧客の『価値観』や『嗜好』に合致するように製品の「香味やパッケージ・デザイン、ネーミング」を徹底的に追求しています。例えば、ある商品を、"例"にあげます。

〇「ターゲットペルソナ」

「30歳前後で、職場では バリバリ責任ある仕事をこなしている。独身 もしくは 結婚していても 子供はいない。住んでいるところは、東横線、日比谷線沿線で、駅でいうと中目黒、自由が丘。ビール含む お酒、美味しいものが好き。ファッションにも、持ち物にも こだわりがある。職場では、頑張っていても、家に帰ったら お酒をのんで"素"になる習慣がある。それが、次の日の活力となる。」


更には、シーンまで 想定されています。

〇「ペルソナ使用シーン」

「仕事をこなすアラサー女子。平日 帰宅後の"素"になる30分(21:00~24:00)、帰りがけに成城石井などの高級スーパーにより、玄関をあけて 仕事服を脱ぎ リラックスした状態で いきなり缶をあける。日中 びんと張っていた糸が切れるように、ぐびぐびと飲み、いきなり"素"の状態となり 何も考えず、ひたすらぼんやりとする。気持ちが リセットされて、次の日また頑張れる自分となる」


このように ペルソナを決めると、次は 顧客調査を行いますが、その時に 平均点が最も高い選択肢よりも、平均点が多少 低くても「一部の人に非常に高い評価を得た選択肢」を 敢えて 採用しています。何故なら、先に述べた通り「みんなに好かれるのは、誰にも好かれていないのと同じ」だからです。差別化という『視点』に於いては、一切の妥協がありません。


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◆2.「『らしさ』が伝わる味わい深いネーミング!」

*ターゲティングした上で、次は 商品を"手"に取って貰わないと意味がありません。その為に、拘っているのが「ネーミング」です。「よなよなエール」「水曜日のネコ」「インドの青鬼」など「ヤッホーブルーイング」が生み出す個性的なビールは、ビールらしからぬ風変わりなネーミングで溢れています。このネーミングこそ、攻めの姿勢を貫く「企業ブランディング」を表しています。小さなビールメーカーが出す商品なので、ありきたりな名前では 大手メーカーに埋もれてしまう、と言う当然の理由です。

「ヤッホーブルーイング」のネーミングの法則は…

〇1.「他社では考えつかないもの」

〇2.「相反する"言葉"の組み合わせでインパクトが強いもの」

です。「ヤッホーブルーイング」のビールを100人が見たときに、1人でも「おもしろい名前だな。どんな味なんだろう」と買って貰う事こそが狙いです。「ヤッホーブルーイングのビールを誰に届けたいか」「どんな人に飲んでもらいたいか」というペルソナを意識したネーミングが、他社製品との差別化を可能にし、価格面だけの市場競争から抜け出ることに成功しました。


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◆3.「熱狂的ファンを増殖させるリアルイベント!」

*先に述べた通り「ヤッホーブルーイング」では、「100人中、たった 1人が熱狂的に同社のビールを好きであればいい」という「ブランド戦略」を打ち出しています。その熱狂的ファンを着実に増やしていったのが「大規模リアルイベント」です。

例えば「超宴」は、軽井沢のキャンプ場でビールを飲みつつ、ファン交流ができるイベントで、予約困難なほど 人気となっています。「よなよなエール」のファンが楽しむのは 勿論、参加者が友人を呼ぶことで、更に ファンが増えるのが このイベントの最大の"特徴"です。社長や社員も参加して、ファンと一緒に ブランドを盛り上げていくという、このリアルな体験が仲間意識を強め、「ブランド」への愛情を深めていくコンテンツとなったのです。


*よくある「ビアーフェス」では、ビールとフードを提供し、新しい顧客や既存顧客との接点を設けると同時に、売上獲得を目的とする事が多いのです。一方、「ヤッホーブルーイング」のファンイベントは、「エンゲージメント向上」を最重要目的と位置づけています。例えば、最も人気も高いイベント「よなよなエールの超宴」では、ビールの提供に加え、醸造知識の提供やテイスティング講座など、「好きな製品について、もっと 知りたい」という知的好奇心を満たすコンテンツを提供しています。

しかも 凄いのが、ファンイベントの開催回数は 通算で「500回以上」、延べ参加者数は「44,000人」に達することです。2019年は、台風のため 直前に開催中止となったものの、企画は10,000人という規模にまで拡大しました。これは、ビールメーカーが単体で主催するイベントとしては、国内最大規模です。多くのスタッフがイベント運営や出演に関わり、ファンと双方向に懇親を行います。また お客さまが運営スタッフや出演者として参加できる機会を設けていて、「ヤッホーブルーイング」とファンとの共創によって、より強い関係性が構築されています。

更に 凄いのが、ファン主導でイベントが行われていることです。2018年には、20人のファンが 企画・運営した「ファンによるファンのためのイベント、ファン宴」が行われ、そこに「ヤッホーブルーイング」の社員も招かれました。


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◆4.「長期的に関係を築く、お客さま対応!」

*「ヤッホーブルーイング」では、基本的な お客さま対応は外部のパートナー企業に委託する一方で、問い合わせ対応は自社で行っています。このお客さま対応部署では、マニュアルに沿った効率的な対応をする場合が多いはずですが、「ヤッホーブルーイング」では「究極の顧客志向」という組織文化の下、効率やマニュアルに囚われず お客さまの期待を超える感動レベルの対応を"常"に心掛けています。ファンとのコミュニケーションに於いて短期的な売上・利益を追わず、お客さまと長期的に関係を築くことを重視しているのです。お客さま対応こそ、長期的なファン(ロイヤルカスタマー)になって貰う、絶好の接触ポイントと言えます。


*これを組織として実現するため、「究極の顧客志向」という価値観の浸透に加え、「主要KPI」を一般的に使われるコストに関連したものから、お客さま対応に於ける「熱狂度」へとシフトしました。このような結果、社員が主体的に生まれ変わったそうです。それを 最も"象徴"する出来事がありました。南極地域観測隊に所属している お客さまから年間契約の途中退会の相談があった際、その理由が南極への派遣が決まったためであると分かりました。それを知ったスタッフは、違約の案内をするのではなく、出発日を聞き、遠い新天地に向かうお客さまに"エール"を送る為に勤務地である長野県からお客さまの旅立つ成田空港まで「よなよなエール」と共に見送りに行ったそうです。勿論、このお客さまは、SNSで シェアすることで、「ヤッホーブルーイング」は一躍 話題になりました。


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◎と言うことで…

*「ヤッホーブルーイングさん」を調べましたが、「戦略の一貫性」が強烈で、中小企業こそが 模範にするべき企業だと感じました。実は「ヤッホーブルーイングさん」は、製造に於いては、大規模製造設備を所有せず、主力製品のほとんどを「キリンビール」へ生産委託し、商品もワンダーテーブル社などの卸業者に委託しているそうです。これによって、運営の自由度を失い、ブランド毀損の危険性も伴いますが、一方で 莫大な投資を避け 得意分野に集中することが出来ます。この得意分野こそ、お客さまと信頼関係を構築する様々な取り組みだと思います。


そして 何故、このような独自の"世界観"を創れるのか?

それは 結局は みんなが同じ方向を向いているということだと思います。殆どの企業に「理念」はありますが、押し付けられて 覚えるというのがよくある光景だと思います。それが「ヤッホーブルーイングさん」には 分かり易い風土もあり、採用の段階で「理念」にマッチする人を選ぶのは当然のこと、社内でも『文化』や『価値観』に紐づく行動を、ごく当たり前にやっている人が多いのだと思います。それが「らしさ」になっているのだと想像しました。

そして その「らしさ」とは、決して"人"だけでなく、得意な分野への「選択と集中」といった"企業戦略"から導かれているのだと思います。


私が ここまでで、最も学んだことは…

●「強者と比べて予算や人などのリソースが劣る中小企業では、意図して大手とは違う戦略を展開し、市場の中で特定のポジションを築き一点突破して戦うべき」と言うことです。更に 言うと、「『そんな単純なことでいいの?』と思うことを、愚直に実行し続けること」です。ある種 当然のことですが「ヤッホーブルーイングさん」から、このことを強く感じました。


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●それでは 最後に、C.I.について、若手なりに一言いわせて頂くと…

*MVC(Mission・Vision・Culture)で整理されていて、C.I.への"拘り"を感じました。ただ 私が一番 驚いたのは、今回は 取り上げませんでしたが「Value(価値観)」です。ここまで具体化されているのは初めてです。例えば「喫煙者なしの会社」などといった項目、更には 逆に「会社に合わない人」まで言語化されていて、とても 分かり易く、面白いやり方だと思いました。

ただ 敢えて一言いわせて頂くとしたら、繰り返し「新たなビール文化」という"言葉"が、C.I.や記事でも何回も出てきますが、具体的に言語化されていない点です。はじまりはアメリカでのクラフトビールとの"出会い"ですが、ここまで成長すると社長の"頭"の中に、何かしらの創り上げたい"世界観"があるはずです。ここまで言語化すると、会社自体の"存在意義"がファンに伝わり、更に ファンから"共感"を得やすくなると思いました。

若手が生意気を言って、すみません。。。


出来れば、コンカンが提唱するC.I.と、御社のC.I.を一度 照らし合わせて頂けると有り難いです。

*concanが考えるC.I.とは?

本当に、若手が生意気いって、申し訳ございません。

長くなりましたが、以上です。

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