今日は 若手社員の私が、成長している企業のC.I.を紹介します。『理美・容業界』の常識を変えた事で有名になった、あの企業です。
第23回は、「10分の身だしなみ」という"スローガン"を掲げ、カットに特化した新業態を作り出した「キュービーネットホールディングス 株式会社」です。
【企業概要】
「キュービーネットホールディングス 株式会社」は、全国に582店舗を構える ヘアカット専門店「QBハウス」を運営している企業です。1995年に「小西 国義氏」によって設立され、2009年より2代目として「北野 泰男氏」が社長に就任しています。本社を東京に構え、売上 約200億円(2020年期)、従業員は1,200名を超える、理容・美容業界に於ける一大企業です。
QBハウスの特徴は、通常 一般のサロンで行う『シャンプーやブロー・シェービング等』、お客さまご自身で出来ることは サービスに含まず、お客さまが出来ない「カット」のみに特化したサービスを提供することです。お客さまの「カット」に要する時間は、なんと たったの「約10分」。しかも 価格は、「1,200円(税込)」で提供しています。
「手軽に、リーズナブルに、ヘアカットだけをしてくれるお店があったら、自分の時間とお金を もっと有効に使える!」というアイデアから、1996年に『神田美土代店』からスタートしました。今では、来客数が1500万人/年を超えています。また 東南アジアを中心に海外展開も行っており、店舗数130店舗、来客数は300万人を超えており、国内外で成長している企業です。
(*社名・店名の「QB」は、アメリカンフットボールのポジションの一つであるクォーターバックに由来し、チームの司令塔を意味しています。)
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【創業ヒストリー】
創業者の「小西 国義氏」は、元々 医療関連商品を扱う"中堅商社"を経営していました。この商社時代は、出張が多く 旅先で仕事の合間に散髪店を利用する機会が多かったそうです。その際、混み合う店内で待たされたり、カット以外の時間を浪費されたりすることに、いつも"いらだち"を覚えていたそうです。とにかく、シャンプーやヒゲ剃りなどを含めたフルサービスを提供する従来型の総合理美容店には、いつも不満を持っていました。
不満は他にもありました。例えば、肩のマッサージに代表される、特段 客が頼んでいない、カット以外の付加サービスの存在です。こういったサービスは、客が断れば、省いて貰えるが、省いた場合でも その分の料金の割引は受けられないことが多く、また 髪のセットに関しても、使い慣れた整髪料を用いて自分好みの形に整えたい場合は、店でのセットが 二度手間になります。また、席に座ってからの所要時間は客にとって「時間の支出」に当たりますが、カットの途中で 担当者が予約の電話を受けるような場合、客は 放っておかれます。その時間も客の負担になるのを、とにかく「不合理」だと感じていたそうです。こういった無駄な時間を省いて、もっと短時間で済むようにすれば、忙しいビジネスパーソンに支持されると考えたのが創業の"きっかけ"となったのです。
「小西 国義氏」は、こうした課題を解決しようと考え、1995年に「キュービーネット」を起業しました。しかも 年齢55歳のときです。
確かに、私も良く美容室には行きますが、どちらかと言うと、髪型を整えに行っているだけで、特段 カット以外の要求はなく、出来るだけ早く終わって欲しいと感じています。
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それでは、そんな「キュービーネットホールディングス 株式会社」の"イケてるC.I."の一部を紹介します。
【OUR BRAND PURPOSE】(私たちの存在意義)
“LESS IS MORE”
それは、余計なことや無駄を省き、本当に大切なことだけに集中していくことで、人、社会、地球環境は、もっと豊かになっていくという価値観。私たちはこの価値観がつくりだす「省力」「省手間」「省時間」「省資源」の4つの視点から、もっと豊かで快適な、サステナブルな社会の発展に寄与し、自分たちの存在意義を高めていきます。
【OUR CORPORATE PHILOSOPHY】(企業理念・行動指針)
“QB WAY”
QBヒューマンとしての円満な道
我々は お客さまに「ありがとう」と言われる、均一で安心感のあるお手軽なサービスを提供し、世界一多くのお客さまから必要とされるヘアカットチェーン店を目指します。
共に働く仲間とは、時間の価値を高めあう存在である。
お客さま、仲間に信頼される、尊敬される人間へと成長し、最高の笑顔(感謝)で世界をなごますことのできる組織へと日々進化していきたい。
皆で選ぶ、お客さま、仲間からより強く選ばれる為に[ 言葉・態度・表情・思考 ]
【OUR BRAND PLATFORM】(企業理念・行動指針を源泉としたブランド体系)
“NEXT10”
世界一、人とのつながりが強い、クオリティブランドへ。
次の10年に向けて走り出した私たちは、サステナビリティを、世界における最重要の共通課題として捉え、その課題解決に向けたアクションの始まりとして、企業理念・行動指針を源泉としたブランドの体系化を図り、存在意義、使命と約束、らしさの本質・考え方を通じた活動によって、持続可能なより良い社会の発展に寄与します。
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それでは、若手なりに「キュービーネットホールディングス」の成長理由を分析させて頂きます。
【若手なりの成長理由分析】
「キュービーネットホールディングス 株式会社」の一番の成長理由は…
●やはり「短時間 低価格という、今までの常識とは真逆の戦略を取った点!」です。
従来の理美容室では、顧客との会話やシャンプーやマッサージなどのサービスがあり、カットだけでも1時間4,000円ほど掛かります。しかし、QBハウスではお客さまご自身で出来ることはサービスに含ず「カット」のみに特化し、たった10分で1,200円です。従来とは異なるターゲットに新しい価値を提供しているからこそ、顧客に選ばれています。
つまり…
QBハウスは、「人に会う前には髪も含めて身だしなみをきちんとしたい」というニーズを解決しているのです。
そのため、ターゲットは必然的に「人によく会う忙しいビジネスパーソン」です。例えば、営業マンの人たちは、人に会う前にヘアスタイルも含めて身だしなみ整えたい人が多いです。その人たちにとっては、伸びた分だけをカットしたい『潜在ニーズ』があった訳です。
しかし、従来の理美容室では、時間もお金も掛かるため、その『潜在ニーズ』を満たせなかったのです。そこで 低価格で、短時間 かつ 高い技術、そして 行きたい時にすぐに行ける立地という顧客価値を提供し、『潜在ニーズ』を満たした事で今までに存在していなかった市場が生まれ、顧客に選ばれる事になったのです。
もし、仮に「儲けるためにシャンプーやブローもやろう」と言い出したら、お客さまは「もっと お手軽な店に行こう」と去っていくのだと思いますが、当事者になってみると、この判断こそが最も難しいと、若手の私なりに想像できます。
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〇それでは、更に 若手なりに成長理由を仮説で「3つ」上げさせて頂きます。
◆1.「儲かるための仕組みが出来ている点!」
*人件費が、コストの大半を占める『固定費型ビジネス』である理美容室に於いて、儲かる為には「如何に稼働率を上げるか?」 つまり お客さまを安定的に確保できるかが、最重要のポイントになります。また 顧客の好みの移り変わりも激しく、儲ける事が難しい業界になっています。(理美容室はコンビニの数より理美容室は4倍ほど多い)
QBハウスは、10分 1,200円と聞くと、従来の約4,000円の理美容室と比べると安く感じますが、カット時間を平均1時間とすれば QBハウスは「6,000円」になります。つまり 従来の理美容室より、時間当たりは割高になります。その為、高回転率を維持できれば利益率が高い儲けられる『ビジネスモデル』なのです。
そこで、お客さまを安定的に確保することが必要になりますが、伸びた分だけをカットしたい忙しいビジネスマンに対して、気軽な「値段」と「時間」、そして「立地」を価値として提供する事で、お客さまの安定確保が可能になり、高回転率を維持し、儲けを生み出しているのです。
その為には、特に「立地」が大切になります。そこで QBハウスは、駅ナカの今まで使われなかった立地などに出店することで、安い賃貸にも関わらず、多くのビジネスパーソンに使用して貰うことが出来ます。
また、駅や地下街、ショッピングセンターの"トイレの脇"にも多く出店しています。それは、トイレに必ずある、あるものが"ポイント"になっています。そは「鏡」です。誰しもトイレで用を足したら手を洗いますが、その時に「鏡」を見て、『"ちょっと"髪が伸びたかな。そういえば、隣に10分で済む床屋があったな。10分だったら時間的に大丈夫だから、次いでに切っていこう!』という人が、結構でてくるのです。人の『行動』と『心理』を読んで、上手に"ビジネス"に活かしています。
また QBハウスの『強み』として洗髪が必要ない分、水回りなどの設備が必要なく、どこにで 簡単に出店・退店できる事が『強み』になっています。
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◆2.「人材を育てる仕組みを、社内で創っている点!」
*「キュービーネットホールディングス」では、業界唯一の取り組みである「ロジスカット(ロジス、LogiThcut)」という「社内カットスクール」を設立しています。東京校を皮切りに、大阪校、名古屋校、福岡校、仙台校と 5つのスクールを開校しました。これは、カット経験が少なかったり、業界にブランクがあったりする『新入社員』が、技術習得の為に、6ヶ月の『カリキュラム』を受けられるスクールです。給料を貰いつつ、専属のトレーナーから1日 8時間みっちり学べるのです。更には、既存社員の底上げの為に、本部社員と店長以上を対象に外部講師を招いて管理者研修なども実施しています。
*実は、理容・美容業界の一番 難しいのは「人材採用」です。理容・美容業界では一般的に、入店してから『カット』できるまで、3~4年の修業を必要とします。しかも 多くの『サロン』では、人材の育成が"体系化"されてなく、「カット技術は見て盗め」という"文化"です。その為、採用しても一人前になる前に辞めてしまうのが当たり前の世界です。しかし QBハウスでは、どんな人でも 6ヶ月後にスタイリストとして店舗デビューするというキャリアを描くことが出来るため、採用に困ることがなくなったのです。更には、「安かろう悪かろう」という常識を裏切る事で、顧客のリピートに繋がっています。
*今では、「キュービーネットホールディングス」は『再チャレンジの場』になっているそうです。「パーマ液やカラー液が"体質"に合わず、酷い手荒れに悩まされていた。」「トークに自信がなかったり、年齢が上がったりした事で、指名が取れなくなった。」「修行期間が、長すぎて、中々 カットを担当させて貰えず、"モチベーション"が低下してしまった。」こうした人たちは、高い技術や『お客さまを喜ばせたい』という想いがあるにも関わらす、従来の理容・美容業界では活躍の場が限られ、理美容室を辞めざるを得なくなっているのです。「キュービーネット」では、こういった人たちを積極的に採用し、再教育し直しています。
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◆3.「働き易い環境を整えている点!」
*理容・美容業界は、所謂「ブラック業界」と言うのが一般的な常識になってしまっているのが現状です。しかし QBハウスは、その『常識』を打ち破る為に、様々な取り組みをしています。
●「安心の給与体系」
理容・美容業界では、珍しく 固定給を確保し、結果を"きちんと"評価する「評価制度」に基づく 年1回の"昇給"があります。また サービス残業は、一切ありません(残業代完全支給)。勿論 社会保険完備です。
●「選べる勤務地」
国内外 700以上の店舗数を誇るQBグループならではの、自宅から通い易い場所など 勤務地が選べます。全国各地に店舗があるので、『結婚・マイホーム購入時』に異動のみで転職の必要がありません。
●「休日は選択制」
休日は、月7~10日にて選択可(入社後、月6日休みを選択することも可)です。土日のお休みや有給休暇もあります。更に 毎日 必ず60分の休憩があり、休日の練習・勉強会の為の出勤はありません。
このようなことは、一見 当たり前のように聞こえますが、実は 当たり前で無いと言われているのが「理容・美容業界」なのです。
更には、入社3~5年で 店長を目指した後は、そのまま店舗運営路線のマネージャー職、または カット未経験者を指導するトレーナー職、更に 海外へ技術や日本の"おもてなしの心"を輸出する海外トレーナー職の道も用意されています。
その結果、年間 離職率 6.6%という驚異の数字となっています。
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◎と言うことで…
「キュービーネットホールディングス」を調べてみましたが、未熟な私でも戦略が「分かり易い」と言うのが 一番だと思います。それは 『理念』そして 『創業者の原体験『を基に、ターゲットや解決する課題が明確になっているという事です。その為、やられていること 全てに"一貫性"があり、大胆に行動することが出来るのだと思います。それが 『強み』となって、他社が マネできず、拡大を続けているのだと思います。また、恐らくですが、ITによるシステム化もかなり強化し、無駄なコストは徹底的にカットされているのだと思います。
そんな中でも、最も凄いと思ったのは、「社内カットスクール」を構築されている点です。既に日本、そして、海外でも 同じ『ビジネスモデル』の競合が増加しています。それでも 勝ち続けている『理由』を自分なりに考えてみると、やはり「お客さまの課題を解決しつつも、同時に『理美容師』の中々 一人前になれないと言う課題を解決しているから」だと思います。この部分は、一朝一夕では、マネできないと思います。
「キュービーネットホールディングス」は、次の施策として新たな『ビジネスプラン』も立ち上げています。それは、「訪問理美容事業」です。
もしかすると、今後は「社内カットスクール」を卒業後は、フリーランス美容師として働いて貰いながら、訪問理美容師として、QBハウスからお客さまに派遣するといった仕組みも当たり前になるのかも知れません。まだまだ フリーランス美容師として『仕事』を取るのは、かなり難しい業界のようですが、このような仕組みがあると、例えば 子育て中の理美容師も柔軟に働ける業界になる気がしました。
また、「訪問理美容事業」だと、介護福祉施設や病院の利用者に特化したものも良いなと思いました。これから高齢者の割合が増えることは確定している中で、介護職員初任者 もしくは ホームヘルパーの資格を持っている人向けに、「キュービーネットホールディングス」の『社内カットスクール』でカットを教える事で、意義のある"ビジネス"になると思いました。
適当なこと ばかり言ってすみません。。。
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●それでは 最後に、C.I.について、若手なりに一言いわせて頂くと…
まず、“LESS IS MORE”という会社の存在意義が本当に分かり易くて、且つ 個性的で、このC.I.を見るだけで"芯"のある企業と読み取れました。まさに、C.I.自体が揺るぎない『ビジネスモデル』となっている気がします。何より、そのC.I.をぶらさずに 実行に移され、成長していることが凄いです。調べてみると、創業者が引退するタイミングで、『文化』や『DNA』を明確に残したいという想いで、現2代目社長が就任する際に制定されたもので、企業では このC.I.が社員に徹底的に浸透させているそうです。
私は、100人規模の会社でしか働いた事がありませんので、キュービーネットホールディングスみたいな、急成長 且つ 店舗ビジネスの場合、どうやって『理念』を浸透させているのか とても気になりました。
また 出来れば、コンカンが提唱するC.I.と、御社のC.I.を一度 照らし合わせて頂けると有り難いです。
*concanが考えるC.I.とは? https://www.concan.co.jp/post/topics-ci
生意気言って、申し訳ございません。 長くなりましたが、以上です。
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