今日は 若手社員の私が、成長している企業のC.I.を紹介します。日本初の戦略で急成長し、福岡・九州では誰もが知っている企業です。
第12回は、福岡に本社を構え、ここ数十年で 一気に業界3位の売上高まで上りつめた「株式会社 コスモス薬品」です。
コスモス薬品は、ドラッグストアを 全国に1,081店舗(九州エリア556店、中国エリア178店、四国エリア116店、関西エリア165店、中部エリア60店、関東エリア14店)展開しています。売上高は「6,844億300万円(2020年5月)」を誇り、九州を中心に急成長している企業です。2012年には、イオン九州を抜き、九州では最大の小売業者となりました。更に、フォーブス誌「アジアの優良上場企業50社」に2度も選出され、その活躍は アジアにまで広まり、今 小売業界で最も注目されている企業です。
設立は、約40年ほど前の1983年に、宮崎県延岡市に有限会社コスモス薬品を設立された事が始まりです。1993年からは、多店舗展開を開始し 2004年からは九州地区以外へ出店を開始しました。
それからは急成長を遂げ、2006年には東京証券取引所市場 第一部に上場を行いました。2010年には、初の関西出店を果たし、今ではなんと、関西だけでも116店舗を構えています。2019年には、関東に進出し、日本一のドラッグストアを目指しています。
【全国のドラッグストア 売上ランキング(2020年)】
「会社名/本社/売上高/店舗数」
■1.ウエルシアホールディングス/東京/8,682億円/2,012店舗
■2.ツルハホールディングス/北海道/8,410億円/2,150店舗
■3.コスモス薬品/福岡/6,844億円/1,081店舗
■4.マツモトキヨシホールディングス/千葉/5,678億円/1,717店舗
■5.スギホールディングス/愛知/5,419億円/1,287店舗
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それでは、そんな「株式会社 コスモス薬品」のイケてるC.I.を紹介します。
【社名由来】
荒地にもしっかり根を張り、綺麗な花を咲かせる
"コスモスの花"のように
コスモスの花は、不毛の大地にも群生して咲き、行き交う人々の心を潤してくれます。その花は、一つひとつは小さな花に過ぎませんが、愛らしく、たくましく咲き誇り、世界中の人々に親しまれています。
コスモスの花が、荒地にもしっかり根を張り、綺麗な花を咲かせるように、我社が展開する店舗も1店1店がその地にしっかり根付き、「地域のお客様に豊かな暮らしを提供するドラッグストア」となれるように、社名を「コスモス薬品」といたしました。コスモス薬品は、コスモスの小さな花のように1店1店は小さな店に過ぎませんが、商圏を自ら分割し商圏人口1万人に1店というドラッグストアとしては非常識な集中出店を目指しています。これにより、その地域で圧倒的な存在感を示すことで、消費者の立場に立った品揃えと低価格化が推進できると考えたからです。
また、コスモスには無限に広がる宇宙(Cosmo)も語源に含まれています。コスモス薬品も全国にたくさんの店舗を展開することで、無限の可能性に挑戦してまいります。
【経営理念】
コスモス薬品があることで、
その地域の暮らしが
豊かになることを目指します。
そんな未来の為に
出来るすべての事を、
シンプルかつ真摯に。
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【若手なりの成長の理由分析】
「株式会社 コスモス薬品」の一番の成長理由は…
●徹底された「ELP戦略」です。これは、「Everyday Low Price 戦略」の略で特売期間を設けず、各商品を年間を通じて同じ低価格で販売する価格戦略のことです。 実は 九州は、日本で最もディスカウント店が多く、低価格戦争が一番激しい市場であり、お客さまとの信頼関係が何よりも重要だと考えた結果、この「ELP戦略」に辿り着きました。何故なら、日替わりや時間帯別の特売やポイントカードといった施策は「おとり販売」に近く、毎日 安い価格を継続させてこそ、消費者からの「信用」を勝ち得ることができると考えたからです。
ごく短期間に限られた商品のみを安く売る販売方法では、忙しいお客さまを満足させることはできません。だから、コスモスでは「あの手この手の販促策」は一切行わず、様々な商品をいつでも低価格で販売する「毎日安い(Everyday Low Price)」戦略を実施しているのです。
また、これにより、特売の為の値札の張替えや無駄な陳列作業がなくなります。そして 発注・納品に伴う作業も簡素化でき、物流も標準化することでサプライチェーン全体でのオペレーションコストは、逆に低く抑えることができているのです。
このように、 あらゆるコストを愚直なまでに抑制し、良い商品を1円でも安く お客さまに提供することで、支持されています。
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それでは、「何故 上記のことが実現できるのか?」を踏まえて、更に 成長理由を若手なりに仮説で"4つ"上げさせて頂きます。
◆1.「日本初の小商圏型メガドラッグストア!」
*「小商圏を制する者が、小売業を制する」。これは、コスモスの考え方です。コスモスは、日本で 初めて小商圏をターゲットとしたメガドラッグストア(店舗面積は2,000平方メートル以上)を多店舗展開する『ビジネスモデル』を構築しました。小売業は、多くの業種が入り乱れて、とても競争の激しい市場です。しかし 実は、足元の小さな商圏(商圏人口1万人)に限定すると競合は限られてきます。小商圏での競合業態は、『食品スーパー、小商圏型ディスカウントストア、コンビニエンスストア、500平米型ドラッグストア』に絞られます。コスモスは、この小商圏をターゲットにしながらも、敢えて 競合に対抗する為に、医薬品・化粧品のみならず 日用雑貨、生鮮三品以外の食品等の日常の暮らしに必要な消耗品を満載した「メガドラッグストア」を確立しています。
現代人にとって、最も重要なものは『時間』であり、『時間』の節約こそが、消費者の最大ニーズだと考えていて、これは 田舎の小商圏でも同じだということです。これを満たす新しい『ビジネスモデル』が、コスモスの「小商圏型メガドラッグストア」なのです。
*小売業では、大きな商圏には大きな店舗、小さな商圏には小さな店舗という考えが常識ですが、コスモスは、敢えて小さな商圏に可能な限りの大型店をつくり、その地域に お住まいの方にとって最も便利の良い店舗をつくることを基本コンセプトとしています。その小商圏内で圧倒的なシェアを獲得することを目指しているのです。
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◆2「徹底したドミナント出店と自動化!」
*コスモスは、高密度のドミナント出店を行っている為、その地域で圧倒的なシェアを誇っています。ドミナント出店を行うことで、頻繁にその地域の消費者がコスモスを目に触れることが出来るため、広告費を一切 使う必要がありません。それと同時に、店舗間の距離が近い為、物流コストも安く抑えることが出来ます。
*また、全て約2,000平方メートルの標準店にあわせて店舗形状や棚割、品出し作業、動線設計などが統一されており、これによって現場のオペレーションが効率化されています。また コスモスでは、出来るだけ標準化することで、自動発注システムにより在庫管理も本部の在庫コントローラーによって一元管理されていて、販売状況を踏まえた発注・在庫整理や店舗間商品融通が効率的に行われています。現在では、なんと全商品の3分の2ほどに導入されています。これにより、発注業務を減らすことで人件費の削減に繋がっています。
事実、コスモスの販管費率は「15.7%」です。これは、競合企業と比べても「5%程」低い数字となっています。
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◆3.「生鮮以外は全て揃い、来店頻度を高めている点!」
*コスモスは、ドラッグストアでありながら、「野菜・肉・魚」の生鮮三品を除いた食品までも多く品揃えし、購入頻度を高めています。その証拠に、売上高 全体に占める食品の割合は52%を超え、これは 他のドラッグストアと比べて20%ほど高い数字となっています。コスモスが、それでも生鮮には手を出さないのは、生鮮を扱うことは、バックルームを用意して生鮮を加工できる職人を抱え、水道・光熱費を負担する必要があるからです。これだと、コスモスの強みである「ELP戦略」が実現できなくなるのです。コスモスでは「生鮮はスーパーで買って貰い、帰り道に10分だけ寄って貰えればいい」という考えがあり、「20~40代の主婦が買い物帰りにコスモスに立ち寄り、店内での滞在時間を短くしてあげる」という普通のお店とは真逆の発想なのです。
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◆4. 「『丁寧』と『早い』を両立した専門スタッフがいること!」
*コスモスでは、自由にお客さまに買い物をして頂く一方で、迷われているお客さまに対しては、的確なアドバイスを行います。その為、専門知識を有したスタッフが常時待機しており、商品を1円でも安く提供する為に、可能な限りのコスト削減に取り組みながらも、心温まる人的サービスも最大限に取り組んでいます。
また、コスモスには「グリーター(挨拶という意味)」と呼ばれる人が待機しています。この「グリーター」は、その店の司令塔であり、玄関で顧客を出迎え、サッと買い物カゴを手渡します。そして、お客さまから質問があれば全て答えます。その間には、別の店員がグリーターに早変わりして入り口に立ちます。つまり、本当のグリーターは1人ですが、全スタッフがグリーターへポジションチェンジできる教育がされています。
因みにコスモスは、12万人以上の利用者からの回答を基に サービスレベルを格付けされる日本最大級の顧客満足度調査「日本版顧客満足度指数(JCSI)」で、8年連続ドラッグストア部門のトップに立っています。
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◎と言うことで…
「株式会社 コスモス薬品」について調べてみましたが、戦略が明確化されていて、その為の店舗レベルの戦術もブレずに実行され続けていることが凄いと思いました。特に、「人口1万人の小商圏に、大きなドラッグストアを構える」という戦略は、普通の人が考えるものと真逆の発想で驚きました。因みに、以前「ドン・キホーテさん」を調べたことをありますが、そのドンキホーテさんは、敢えて 複雑にすることで差別化されていて、「標準化」が強みのコスモスとは真逆の戦略で、とても 面白いと思います。ただ、両社に言えることは、戦略が明確化されているという事です。
私も、まさに 熊本の人口1万人程度の小さな田舎町出身ですが、幼い頃に コスモスが出店し、良く行っていたのを思い出します。とにかく安く、いつも多くの人で賑わっていたのを覚えていますが、それは 敢えて田舎町に出店し、その町の全員がコスモスにいくという"戦略"を立てられたものだと知って驚きました。因みに、「何で こんな所にコスモスが、出来たんだろう?」と、私の周りの人もよく言っていました。
個人的な意見を少し述べさせて頂くとしたら…
コスモスは、小商圏に出店するに伴って、同じ敷地内に、例えば 内科、耳鼻科・小児科、産婦人科のクリニックといった病院、さらに 高齢者住宅まで誘致すると面白いと思いました。診察を受けた後に、薬を貰い、更に買い物まで出来ると、地方のデメリットである移動の負担がなくなり、特に 高齢者にとっては、とても有難い存在になるのではないかと思いました!
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●最後に、若手なりにC.I.について一言いわせて頂きます。
「社名の由来」と「経営理念」について、コスモスさんの現在の在り方を、分かり易く表現されていると思います。しかし 一方で、コスモスさんレベルの割には、率直に物足りないという気もしてしまいました。何故なら、少し「売りの表現」に行き過ぎている感じがして"想い"があまり伝わってこなかったからです。小商圏に、コスモスさんが出店することで、「その町 或いは、人の生活がどう変わるのか?」といった、商品を売った先にあるコスモスさんの「成し遂げたい世界観」が表現されると、より"共感"を得られ易いと思いました。例えば「ドラッグストア事業を通して、地方から健康で活力ある豊かな社会の実現に貢献し、その結果 日本全体を活気付ける」といった、日本を代表するドラッグストアのコスモスさん"らしい"言葉があると、それが『個性』にも繋がると思います。
出来れば、コンカンが提唱するC.I.と、御社のC.I.を一度 照らし合わせて頂けると有り難いです。
*concanが考えるC.I.とは?
生意気言って、申し訳ございません。
長くなりましたが、以上になります。
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