今日は、concanが思う「大手企業が、参入を拒むような『ビジネスモデル』を創らなければ、中小企業は生き残れない」という話をします。
『経営学』の中でも有名な用語の一つに「参入障壁」というものがあります。聞いたことはあっても、「参入障壁」がどんな意味なのか、それを知って 何に役に立つのかまでは 意外と知られていないと思います。
そこで、今回は 「参入障壁」について考えてみます。
「参入障壁」とは、ある業界で新しくビジネスを始める際に 妨げとなる要因です。「参入障壁」が高いほど 新規参入がし難い業界であるため、新しくビジネスを始める上では"不利"となります。逆に、既存企業の側から見ると、「参入障壁」が高いほど 新規参入による"脅威"が小さいため、より安定的に事業を行い易いということです。
「参入障壁」の考え方は、アメリカの有名な経営学者「マイケル・ポーター氏」が提唱した『ファイブフォース』の一つ「新規参入の脅威」を考える上で有用です。
※「ファイブフォース分析」とは、業界内での競争の状況を知る為の分析手法で、 「売り手の交渉力」「買い手の交渉力」「競争企業間の敵対関係」「新規参入の脅威」「代替品の脅威」の"5つ"の要因を分析することです。
では、「参入障壁」が生じる具体的な要因を紹介します。
【『参入障壁』の"7つ"の要因】
◆1.「規模の経済性が働き易い!」
*「規模の経済性」とは、
事業規模や生産量の増大に伴い、製品1つあたりの生産コストが逓減(ていげん)していく現象です。
例えば、大量に製品を製造する際には、原材料の大量仕入れにより生産コストを減らすことが出来ます。「規模の経済性」が働き易い業界ほど、「参入障壁」は高くなります。
何故なら、「規模の経済性」により低コストで生産できる既存企業と比べて、新規参入企業は 高いコストで生産する必要があるからです。
◆2.「差別化が進んでいる!」
*品質やデザイン、ブランドなどの面で、製品の「差別化」が進んでいる業界ほど、「参入障壁」は高くなります。
製品の「差別化」が進んでいる業界では、既存企業のPR活動や製品戦略により、顧客の間で確固たる「ブランドロイヤリティ」が形成されています。つまり、顧客の間で好きな"ブランド"が確立しているので、新規参入企業が勝つには既存企業を上回る「差別化」が必要となります。広告宣伝費やブランディング、製品開発などに多額の費用が掛かり、これが新規参入企業にとっては大きな「参入障壁」となります。
◆3.「巨額の投資が必要!」
*研究開発や設備投資に多額の費用が掛かる業界ほど、「参入障壁」は高いです。費用を掛けずに始められるビジネスは比較的誰でも参入できますが、最初に数千万円 数億円かかるビジネスには参入し難いと思います。
◆4.「流通チャネルの確保が困難!」
*既存企業が優れた取引先や流通網を確保している場合、新規参入の企業が新しく同等レベルの"質"の取引先や流通網を確保するのは難しいです。
「流通チャネル」を確保できないと、商売できないと同じで、コストや労力を割いて「流通チャネル」を確保する必要が出てきます。「流通チャネル」の確保に 多大なコストや労力が掛かる点は、大きな「参入障壁」になります。「参入障壁」を築き上げるには、優良な新規顧客を多く獲得する必要があります。
◆5.「技術力が特許などにより守られている!」
*ある製品を製造する上で欠かせない技術が「特許」によって 守られている場合、「参入障壁」はとても高くなります。
「特許」が設定されている技術を使うには、使用料を既存企業に支払う必要が出てくるからです。
◆6.「経験曲線効果が働き易い!」
*「経験曲線効果」とは、
累積生産量が増加するに伴い、製品 1単位あたりの生産コストが 一定割合で減少する効果を意味します。
「経験曲線効果」が働き易い業界では、累積生産量が多い既存企業ほど 低コストで生産できます。新規参入企業は、コスト面で"不利"な状況で事業を行う必要があるため、とても「参入障壁」が高くなるのです。
◆7.「政府の政策により参入が制限されている!」
*「政府の政策」により、その業界への参入が制限されると、コストや差別化面とは無関係に「参入障壁」が出来ます。
例えば、ある業界で事業を始める際に 許認可や資格が必要な場合、条件を満たさない限り気軽には参入できません。
「競争の戦略」の著者である『マイケル・ポーター氏』は、「参入障壁」の規模を測る具体的な『指標』として、以下の"8つ"を示しています。
【『参入障壁』の"8つ"の指標】
◆1.「規模の経済性が働くか?」
◆2.「製品の差別化が存在するか?」
◆3.「巨額の投資が必要か?」
◆4.「仕入れ先を変更するコストは大きいか?」
◆5.「流通チャネルの確保は難しいか?」
◆6.「規模の経済性以外のコスト面での不利な点は存在するか?」
◆7.「政府の政策による参入の制限や規制は存在するか?」
◆8.「参入に対し強い報復が予想されるか?」
では、大手企業が、参入を拒むような「ビジネスモデル」を創る為の具体的な中小企業の「参入障壁」の考え方を紹介します。
【中小企業が狙う『参入障壁』】
大手企業がやらない「商品・サービスの差別化」を創造することが不可欠です。
その考え方の「切り口」が…
〇個・社別・オーダーメイド
〇小ロット対応
〇職人技・技術力
〇土日対応(365日 24時間/基本緊急時対応)
〇アフターサービス・顧客フォロー
〇顧客ターゲットの絞り込み
これは、基本、大手企業が嫌がる"手間暇"が掛けることに注力することが重要です。ターゲットを絞り込み、市場を小さくして、商品の"質"を担保した上で、アフターサービスを徹底させることで、大手企業が参入し難くなるのです。
こちら(中小企業)よりもはるかに『資金面』や『労働量の面』で優れいている大手企業が参入した場合、簡単に「参入障壁」を崩されてしまいます。しかし スモールビジネスの中で、大手企業に真似され難い強みを創ることが、もっとも効果的な「参入障壁」となるのです。
例えば、独自の『技術力』をいち早く確立し、それを「特許」により自社だけのものにする戦略が最たる例です。
もしくは大手企業がアプローチし難い取引先を確保したり、大手企業が参入してくる前に確固たる"ブランド"を確立する戦略も考えられます。
◎と言うことで…
「自社ビジネスに"参入障壁"をつくる!」と題して書いてきましたが、ここで、「参入障壁」が高い業界と低い業界を紹介します。世の中には様々な業界がありますが、業界によって「参入障壁」の高さは異なります。
【参入障壁が高い業界】
「参入障壁」が圧倒的に高い業界といえば、何と言っても『携帯通信事業』です。携帯通信事業を始めるには、北海道から沖縄まで全国各地に通信に必要な設備を作る必要があります。時間が掛かるのは 勿論、数兆円以上もの莫大な費用が掛かります。それに加えて、ドコモやソフトバンク・KDDIなど、圧倒的な知名度やブランド力を持った企業が既に存在するため、資金力が仮にあったとしても後発企業が勝つのは難しいと思いますが、そう意味では『楽天』は凄いと思います。
【参入障壁が低い業界】
「参入障壁」が低い業界として考えられるのが、『ネットビジネス全般』です。インターネットを使うビジネスは、多額の資金や資格がなくても始められるので「参入障壁」は かなり低いです。
例えば、ブログを開設して広告やアフィリエイトで稼いだり、YoutubeやSNSで情報発信して稼ぐのは、今すぐ始めようと思えば 誰でも出来ます。確かに、有名なインフルエンサーやブロガーの方は、稼いでるだけあって独自の強みを持っているのは事実です。しかし 厳しい条件を満たしたり圧倒的な資金力が必要な業界と比べると、圧倒的に参入し易いです。
●最後に…
新規事業立ち上げの実行可否を判断する際や、逆に 新規参入の"脅威"を抑える方法を考える際など、「参入障壁」の考え方は 様々な場面で応用が利きます。尚 新規参入に備えて「参入障壁」を高くする場合にせよ、「参入障壁」の高い業界に参入するにせよ、新規顧客の獲得が成功を左右します。
新規顧客を獲得するには、人工知能を含めた様々な低コストで効率的に新規顧客を獲得できる施策が必要になります。
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