今日は、concan代表が思う「これからの時代は、会社任せのキャリア意識では、生き残れない」という話を「第7回 Amazonアカデミー」を調べる中で感じたことを書きます。
~副題:「キャリアオーナーシップ」という"言葉"は 英語にはなく『造語』だ!~
「アマゾンジャパン」は、先月(2021年9月)、日本では初めてとなる「Amazonキャリアデー」をオンラインイベントとして開催しました。そのプログラムの一つが「第7回 Amazonアカデミー」です。
「時代の転機を迎える日本社会、これからの『キャリア』と『自分らしい働き方』とは?」をテーマに、法政大学教授の「田中 研之輔氏」、一般社団法人 Public Meets Innovation 代表理事の「石山 アンジュ氏」、NPO法人GEWELの「稲葉 哲治氏」がパネルディスカッションを行いました。 新しい「働き方」や これからの時代の「キャリア構築」について議論・意見交換が熱心になされました。
ーーー そして… 「ジャスパー・チャン氏」アマゾンジャパン合同会社社長。『香港大学』に於いて 工業工学の学士号を取得後、1990年に『カナダ・ヨーク大学』にて MBAを取得。『キャセイパシフィック航空』、『P&G』を経て、『アマゾンジャパン』に入社。2000年12月よりファイナンス・ディレクターを務め、01年4月に代表取締役社長に就任し、16年5月より現職。
冒頭、「ジャスパー・チャン氏」がスピーチ。「Amazonアカデミー」は、日本社会が 直面する課題をテーマに取り上げ、様々な お立場の「パネリスト」をお迎えし、『課題の解決策』や『目指すべき方向性』について議論しています。
今回の「Amazonアカデミー」のテーマは、「時代の転機を迎える日本社会、これからの『キャリア』と『自分らしい働き方』とは?」です。このテーマを掲げたのは、「Amazonキャリアデー」のテーマである「ダイバーシティ」(多様性)、「エクイティ」(公平性)、「インクルージョン」(包括性)と、一人ひとりの「働き方」や「キャリア構築」は 密接に関係していると考えるからです。Amazonは、多様な人材が持つ「スキル」や「経験」、「視点」を重視しており、様々な人々を巻き込んだ議論を通して、協力し合う姿勢の醸成が重要だと考えます。それが、Amazonを形作り、そして 最終的には お客さまへのイノベーションの提供に繋がります。職場の多様性を保ち、それを成果に繋げていくには、社員一人ひとりの「考え方」や「働き方」を受け入れ、 そして 自分の「信念」や「考え方」をしっかり持つことが大切です。 現在、日本では 政府や経済界で、これまでとは違う「新しい働き方」が推奨され、そして それに伴い、新しい価値観が生まれています。「パネリスト」の皆さまと 是非、これからの日本社会に於ける「働き方」と「キャリア構築」の考え方について、ご意見を伺いながら議論を深めていければと思います。
ーーー ◆「田中 研之輔氏プロフィール」 法政大学キャリアデザイン学部教授。一般社団法人 プロティアン・キャリア協会代表理事。株式会社キャリアナレッジ代表取締役社長。一橋大学大学院 社会学研究科博士課程修了。 専門は、キャリア論、組織論。社外取締役・社外顧問を27社歴任。プログラム開発・新規事業開発を得意とし、個人投資家でもある。最新刊『ビジトレ-今日から始めるミドルシニアのキャリア開発』など著書は25冊。
「パネルディスカッション」のモデレーターは、アマゾンジャパンで『ダイバーシティ』、『エクイティ』、『インクルージョン』活動に携わる「藤谷 ひとみ氏」。新型コロナウイルスの感染拡大と、緊急事態宣言の影響で、日本でも「新しい働き方」=「テレワーク」、「フレックスタイム」、「時差出勤」などが広まった、と口火を切り、法政大学の「田中 研之輔氏」が政府による法令整備や今後の方向性、日本の企業による「新しい働き方」について述べました。
政府が「働き方改革」に取り組んでいること、経済界による「日本型雇用の制度転換」、そして コロナ禍による「テレワークの普及」により 社会人のほぼ全てが「働き方」「キャリア形成」「労働環境」について考える時代になったと「田中氏」。大分と東京の2拠点生活を実施している「石山 アンジュ氏」は、自らの「働き方」や「時間の使い方」の変化、「働き方」の変化により 新たに直面している課題について述べた。
ーーー ◆「石山 アンジュ氏プロフィール」 社会活動家。一般社団法人 Public Meets Innovation代表。 シェアの思想を通した新しいライフスタイルを提案する活動を行うほか、一般社団法人 シェアリンク・エコノミー協会常任理事(事務局長兼務)、厚生労働省・経済産業省・総務省なとの政府委員も多数務める。また 2018年 ミレニアル世代のシンクタンク・一般社団法人 Public Meets Innovationを設立、代表に就任。著書に『シェアライフ-新しい社会の新しい生き方』がある。
NPO法人GEWEL理事の「稲葉 哲治氏」は、「働き方改革」が、コロナ禍により「生き方改革」に繋がってきているとし、自身の新宿と鎌倉、2拠点での「働き方」と「生き方」や、異なるコミュニティーに身を置くメリット、多様なコミュニティーに属することで得た「ダイバーシティ」、「エクイティ」、「インクルージョン」(以下、DEI)への気付きを語った。
ーーー ◆「稲葉 哲治氏プロフィール」 NPO法人GEWEL理事。開成高等学校卒業後、東京大学に入学し、中退。セゾングループの人材会社にて NPO協働事業などを担当後、日立グループにて新規事業である若者キャリア支援会社を起業し、人事、人事コミュニティー運営などに従事。 現在は Waris にて コンサルタント、「サーキュラーHR」編集長などとして活動中。ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)リーダーシップの実践と支援を通して組織・社会への貢献を目指すGEWELに2019年より参画。
ーーー ◆「藤谷 ひとみ氏プロフィール」 アマゾン ウェブ サービス(AWS) ジャパン エンゲージメント&コミュニケーション担当。早稲田大学商学部卒業後、日系 及び 外資系の金融機関を経て、直近の12年間は米系金融機関 東京オフィスの人事部に在籍し、ダイバーシティ担当と新卒採用担当を兼任。2020年アマゾン ウェブ サービス ジャパン入社、インクルージョン、ダイバーシティ&エクイティ リーダーとして活動、21年8月より現職。経営陣のコミットの下、多様な従業員が安心して活躍できる職場環境の実現に従事。
ーーー 次に新しい「働き方」、「考え方」や「価値観」の多様性について議論がなされた。「石山氏」は、民間企業と行政など 多様なセクターと協働する社会活動家としての考え方として、多様な立場の人たちと協働していくということは、「自分の当たり前」が基本的には通用しないということを挙げ、相手の「価値観」をまずは 受け入れ、受け入れるだけでなく 自分も変容し、受け入れられるキャパシティーを広げる努力をしていかなければならないと述べた。
「稲葉氏」は、DEIの観点で見たコロナ禍前と、コロナ禍後の違い=「内なるダイバーシティ」の考え、テレワーク導入で これまでの顔を合わせていた人とのコミュニケーションスタイルを考え直す必要性、「インクルージョン」の考え方が大事になってきていることを語った。特に「共感できないことを異物化しないで、表に出し、聞き、受け入れる考え方が最先端の DEI の議論」になっているという。
「田中氏」は、「キャリア資本=ビジネス資本/社会関係資本/経済資本」という考え方を披露。多様な人と出会い、関係を構築していくことは社会関係資本の蓄積に繋がること、変わりゆく環境に対して自分で対応できる変化適応能力が必要であることをパネラー3人で話した。
モデレーターの「藤谷氏」は、アマゾンジャパンでは DEIが重要な価値観になっていることや「16項目」で構成されるリーダシップ プリンシプル(行動規範)に言及した。
●「Have Backbone; Disagree and Commit」 〇リーダーは、賛成できない場合には 敬意を持って異議を唱えなければなりません。信念を持ち安易に妥協して馴れ合うことはしません。いざ 決定がなされたらコミットして取り組みます。
●「Are Right, A Lot」 〇リーダーは優れた判断力と、経験に裏打ちされた直観を備えています。多様な考え方を追求し、自らの考えを反証することもいといません。 といった考え方があることを紹介。
「信念」を持ちながらも、「多様な考え方」の追求や「柔軟な考え方」を受け入れることが重要だとするAmazonの考え方を述べた。また、本社ビルの一つでは、母親である社員向けの搾乳室、宗教的に配慮した礼拝室、 仮眠室、オールジェンダー向けのトイレやシャワールームなどが備えられていることも紹介した。
「Amazonアカデミー」は、2018年より開催し7回目。 最後に、「キャリア形成に於ける一人ひとりの「オーナーシップ」の重要性」について議論がなされた。「田中氏」は、「キャリア × オーナーシップ」の大切さを強調。多様化するからこそ、自分のキャリアを一度、棚卸しして 自分の強みと どんなことで貢献できるかを考え、自身のキャリアに対してオーナーシップを発揮することの重要性を語った。
3人のパネリストは、組織任せにするのではなく 自分で主体的にキャリア形成をすることの必要性、そして 自分が最も強みを発揮できる「場所」を探すことが大事であること、自分の「役割」や「使命」をしっかりと考え、責任感を持って追求していくことが大事であることに言及した。「稲葉氏」は、私たち人間は、水や空気や石油などと同様、社会や地球や未来をつくる大切な資源と前置きし、「資産=ヒューマンキャピタル」を会社に預けるのではなく、自分自身で「人的資源の運用ポートフォリオ」を組める時代であると主張。他者とのコミュニケーションの中から見つける自分の「強み」「指針」(ものさし)の見つけ方、「自分らしさ」を見つける為に刺激のある「場所」に身を置くという手段について述べた。
ーーー 最後に「田中氏」は、現在の企業は 自ら主体的にキャリア形成をしていくことが出来る企業と、残念ながら それを抑え込む企業に「二極分化」しているという見解を述べ、歴史的転換期だからこそ、「キャリアオーナーシップ」を応援してくれる企業群に入っていくことの重要性を話した。それを受けて「稲葉氏」が、私たちが 人的資源を提供し、その資源を使う企業側もフェアに対話をしながら 一緒に持続的成長を目指す「フェアトレード」が出来る企業かどうかを見極めることの重要性を話して、パネルディスカッションを終えた。
ーーー ◎と言うことで… 「時代の転機を迎える日本社会、これからの『キャリア』と『自分らしい働き方』とは?」と題して書いてきましたが、最後に「キャリアオーナーシップ」について もう少し探ってみます。
「キャリアオーナーシップ」とは、働く人にとって 自分自身で『体験』し『学び』『築いてきた』ものなので「自分のもの」ですが、最終学歴を終えて、「会社」に入り 長年同じ「会社」で働くと、知らず知らずのうちに「会社」から与えられる「キャリア」を自分のものだと勘違いしがちです。
昇進昇格、部門移動、業務の兼務、転勤などを考えると、果たして それは全てが 自分で構築してきたキャリアであると言えるのでしょうか。 定年が、働くことのゴールである時代は終わり、今や個人の「仕事年数」が企業の存続年数を越えると言う逆転現象が起き、「生涯現役」を求められる社会になっています。 「人生100年時代」という"言葉を"どこか他人事に考えている人も多いと思います。しかし 間違いなく その時代に突入しています。
大手企業で「早期退職者向け」や「セカンドキャリア研修」が頻繁に行われ始めているのは、体のいい人員整理、リストラではなく、個々人の長い「人生」を考えた上での「新しい企業と個人の関係」の表れでもあります。「キャリアオーナーシップ」とは、「自分のキャリアは自分のものであることを自覚し、自ら どうしたいのか、どうなりたいのか、どうあるべきなのかを考え、納得のいく仕事、働き方を続けていく為に、行動していこう」と言う当事者意識を強く持つことです。これからは「キャリアオーナーシップ」を抱き、自らの「仕事」「人生」の設計と、その為に必要な「能力」や「スキル」を取得するための学びを実践し、今までの自分の"強み"と合わせながら 次のステップへと進んでいくことが求められています。
ーーー まとめると、これからの時代は、会社任せのキャリア意識で生き残っていくのは難しくなっていきます。これからは、間違いなく、個人の主体的なキャリア意識が重要な時代になってきます。この、主体的なキャリア戦略を持つこと、つまり 自らのキャリアについて主体的・能動的に考え行動することを「キャリアオーナーシップを持つ」と表現します。 ※「キャリアオーナーシップ」という"言葉"は英語には無く造語です。欧米では近しい表現に「take ownership of your career」という言い方がありますが、社会人だけでなく子供のころから家庭や学校で学んでいくものであり、その文化が「働き方」、「生き方」に反映されています。
●最後に、「働く」を考えるとき、思い出す私の好きな"コピー"を紹介します。
「できるだけ、できないことを。 私たちが つくるのは、前例のない未来だ。」
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