今日は、concan代表の私が「若者の恋愛事情と、その情報発信の裏にあるもの」について深堀りします。
内閣府の情報によると、20代男性のおよそ 7割が配偶者や恋人がいず、およそ 4割に至っては「デートの経験がない」と発表しました。そして マスコミは、この調査データを受けて、「若者の恋愛離れ」だと騒いでいます。
例えば、あるワイドショーでは、「若い男性の"恋愛離れ"が進行しています」と巨大パネルを用いて解説しています。スマホゲームなど、1人で楽しめる娯楽が増え"恋愛"が面倒になっているのではないかと、人間関係が希薄になって 異性との交際を恐れるようになっているのではないか、などと専門家の指摘を紹介しています。また、別の番組では コメンテーターの男性が、「私も若い頃は 恋愛をたくさんして、凄くいい"人生勉強"になりましたので こういう結果は残念です」と語っています。「恋愛離れ」によって 人として成長できない、と苦言を呈しているようにも取れます。
何故、こんなにも「若者の恋愛離れ」に執着するのか、それは マスコミにとって「若者の〇〇離れ」は"大好物"だからです。自動車が売れないのは、若者が「自動車離れ」しているから。酒が売れないのは、若者が「アルコール離れ」しているから。最近では、テレビの視聴率がガタ落ちしているのも、若者が「テレビ離れ」をしていることが原因だと説明しています。
何故、あらゆることを若者のせいにするのか不思議ですが、これは マスコミにとって 主たる読者・視聴者である『高齢者』の共感を得やすいからです。新型コロナの新規感染者が増える度に、渋谷スクランブル交差点から中継して、「ご覧ください!あんなにたくさん 若者が出歩いています!」とレポーターが大はしゃぎして紹介していたことを思い出します。
●「まったく、最近の若者は…」
●「オレが若い頃は…」と『高齢者』に顔をしかめさせるようなニュースほど数字が稼げるという現実があるのです。
ただ、そういうビジネス的な事情を考慮しても、「若者の恋愛離れ」をあおるマスコミの姿勢は、感心しません。
「20代独身男性の4割がデート未経験」みたいな話は、昨日今日に始まったことではなく、今の"オジサン"たちが 若者だった35年前から存在しています。
つまり、時代に関係なく、「若い男性というのは 元々 そういうもの」である可能性が高いのです。
■【1980年代後半から「恋愛できない症候群」という"言葉"は存在していた!】
1987年の厚生省 人口問題研究所の「独身調査」によると、20~24歳の男性で交際している恋人・婚約者がいると回答したのは 26.8%しかいません。25~29歳の男性でも25.6%でした。つまり、20代独身男性の7割が配偶者や恋人がいないという今回の内閣府データとあまり変わらない結果なのです。
この恋人・婚約者のいない男性たちの中には当然、デート経験のない人もかなり含まれています。当時の調査では「デート経験」については明らかにされていませんが、3~4割くらいはいたのではないかと推察できます。
それが伺えるのが、「性体験の有無」です。当時の調査では、20~24歳の男性では43%、25~29歳では 30%が「性体験がない」と回答しています。勿論、「性体験がなくてもデートまでは経験がある」という男性も それなりにいるはずですが、「性体験がない」という男性の中には、そもそも 女性と二人っきりになったことがないという人もかなりいるはずなので、「デート経験なし」も近い割合になるのではないかと考えられます。
3割くらいは恋愛に積極的で ガツガツしているが、7割くらいは恋人や配偶者がいない。更に 3~4割くらいはデートすらしたことがない人も存在しているのです。
つまり、2022年も1987年も、若い男性の恋愛の傾向は、それほど大きな違いはないということです。
それは、マスコミの報道を見ても分かります。
実は、日本では 30年以上前から、様々な調査によって、女性との交際に積極的ではない男性たちの存在が浮かび上がり、「シングル」という"言葉"も普及して、今と ほぼ変わらない論調が出来上がっています。
例えば、1988年の「読売新聞」では、「独身男が増えている」という連載がスタート。その第1回である「『価値ある』と進んで選択"30代未婚" 10年で倍 女性含めネットワーク」には、今の「若者の恋愛離れ」を紹介した記事でも違和感のない記述が並んでいます。
一人で生きる男性が増えてきた。「配偶者に恵まれない」という人もいますが、「自分の世界を大切にしたいから」という人もまた、少なくない(読売新聞1988年5月)
更に 翌年になると、「朝日新聞」が恋愛に後ろ向きな人々に、こんなキャッチーなネーミングを付けています。
恋愛したけれど相手がいない、異性とどうやって付き合えばいいのか分からないという「恋愛できない症候群」の若者が、都会を中心に増えている(朝日新聞1989年7月)
この時代から「若者の恋愛離れ」という話は何も変わっていず、それを紹介するマスコミの論調も変わっていないのです。厳しい言い方をすれば、何んの進歩もしていないのです。
人はどうしても「自分が生きている今の時代は特別」だと思い込みたい生き物なのです。「今はスマホや多様性など、色んな社会の変化が起きています。だから、人の行動も劇的に変わっているに違いない…」そんな先入観に縛られているので、マスコミの「若者の恋愛離れが進行しています」などの話にコロッとだまされてしまうのです。
たかが 35年ぽっちで、人々の意識は それほど劇的に変わらないのです。
■【政府の失策を「若者の恋愛離れ」のせいにして責任転嫁している!】
次に気になるのは、何故 マスコミは「若者の恋愛離れ」などという嘘をでっち上げてきたのでしょうか…。
一つには、前途したように「若者の〇〇離れ」が数字の稼げる"キラーコンテン"だからということもありますが、もう一つ大きいのは、マスコミの大切な情報源である「政府」に吹き込まれたということです。政府関係者は、未婚や晩婚化、少子化に拍車を掛けることに繋がりかねないとして危機感をあらわにしています。この"言葉"からも分かるように、日本政府は、「若者の恋愛離れ」は晩婚化や少子化の背中を押す、非常にやっかいな問題であるというスタンスです。
マスコミは、その主張をノーチェックで、右から左で流しています。これは、見ようによっては「悪質な情報操作」です。少子化という問題を「恋愛に興味を抱かなくなった若者が悪い」ということにして、これまでの政府の失策をウヤムヤにしようとしているからです。
実は、世間的にはあまり知られていませんが、少子化というのは、「日本の無策」を象徴する問題なのです。50年以上も前からこうなることは分かっていたのに、政治が何も有効な手を打つことなく 放置してきたからなのです。
例えば、1967年4月の「ふえる老人 減る子供 人口問題をどうする厚相、審議会に意見きく」という読売新聞の記事では、以下のような厚生省人口問題研究所の推計が掲載されています。総人口は、約500万人ずつ増加しているが、これも昭和80年(1億2.169万人)をピークとして減少に転じる。昭和90年には幼少17%、成人63%となり、老齢人口が20%を占めるという。
実際のところ、昭和80年に当たる2005年の人口は1億27.77万人で試算よりも増えていますが、昭和90年に当たる2015年の15歳未満は12.6%、65歳以上は26.6%となり試算よりも深刻なことになっています。このようにある程度のバラつきはありますが、実は 日本は50年以上前から現在の「危機」をある程度、正確に予見していたのです。
しかし、何もしてこなかったのです。
■【50年前に予測された通りのシナリオが進行している!】
国は、独身者への調査を繰り返すだけで、「恋愛離れだ!」「結婚に価値を見い出していない」などと「若者の意識」のせいにして、諸外国がやっているような対策をサボってきました。
例えば、少子化対策で有名なのは、「子どもへの支出」です。『OECD Family Database』によると、子どもに対して社会がどれだけ お金を出しているのかという「家族関係社会支出」の割合が高い国であればあるほど、出生率も上がっていく傾向にあります。意外に思うかも知れませんが、子どもに対して社会全体で手厚いサポートがあれば、「私も親になりたい」と思う人も増えていくことが分かっています。
また、「賃上げ」もそうです。ご存じのように、日本は この30年 殆ど 賃金が上がっておらず、先進国の中でも 際立って低く、韓国にまで平均年収で抜かれています。最低賃金も諸外国の中で低く、若者の貧困化も進んでいます。「若者が結婚しないのは経済的理由だけではない」などと主張する経済評論家も多くいますが、結婚以前に恋愛というのは「見栄」を張る部分もありますので、ファッション、デート、プレゼントなど出費がかさむものです。
日本の常軌を逸した低賃金によって、「恋愛できない」「結婚できない」という若者もかなりいるはずです。
こういう問題を政府が、50年放置してきたことで、日本の少子化は拍車が掛かってしまったのです。何もしなかったので、50年前に予測された通りのシナリオが進行しています。勿論、政府としては そういう話になることは避けたいのです。結果が伴っていないのは動かし難い事実なのですが、国は少子化対策をずっと力を注いで一生懸命やってきた、としたいのです。となると、誰かを「スケープゴート」にしなくてはならないのです。そう、それが「若者の恋愛離れ」です。
■【「恋愛をしない独身の若者」は格好のスケープゴートなのだ!】
国は少子化対策に力を入れてきたが、それ以上に足を引っ張っているのが、若い男性たちだ。彼らが恋愛に後ろ向きになってしまったことが最大の問題ということにしてしまえば、すべて解決するのです。国は無策の責任を取らず、「若者の恋愛をサポートします」などと上辺の話をしていれば、賃上げや子ども対策という面倒な話に着手しなくて済む訳です。
実は、これは日本という国がよくやる"お家芸"でもあります。「医療危機に『国民のがんばり』で立ち向かう、戦時中と変わらぬ日本の姿」と同じです。日本は、政府が社会システムの根本から変えなくてはならないような問題に直面した時に、国民の責任に話をすり替えて、「個人のがんばり」で乗り切ろうとする"悪い癖"があります。
最近で 分かり易いのは「コロナ対策」です。他の先進国では、殆ど 起きていない「医療崩壊」を2年間も大騒ぎしたのは、日本の「医療供給システム」に根本的な欠陥があることは明白なのに、そこには手を付けず、ひたすら個人のせいにしています。
●「ルールを守らない飲食店が悪い」
●「渋谷で遊んでいる若者が悪い」という感じで、「医療崩壊」という国のシステムエラーから国民の目をそらして、ひたすら「この非常時に協力しない身勝手な人間のせい」にして、医療提供体制の見直しなどの根本的な議論は先送りされています。「若者の恋愛離れ」にも同じ匂いがします。
これから「人口減少」は、更に 拍車が掛かります。
1年で鳥取県と同じ人口が消えていくので 国内経済も加速度的に縮小していきます。尻に火が付いた時、「こんな状況になるまで放って置いたのは誰だ!」と犯人探しが始まります。
その時、「恋愛をしない独身の若者」は何度でも格好の「スケープゴート」にされると思います。
●「日本が衰退したのは、ゲームやアニメばかりを楽しんでデートもしない自分勝手な男が増えたからだ!」
●「最近の若者は何事にも臆病でダメだ!我々が若い時は女性には当たって砕けろだった!」などと、"オジサン"たちも怒りをぶつけ易く、政治家も選挙で叫び易いのです。若者は そもそも 投票に行かないので、幾らディスっても痛くないのです。
「若者の恋愛離れ」という嘘は、そう遠くない未来に始まる「若者ヘイト」の序章なのかも知れません。
◎と言うことで…
「マスコミが『若者の〇〇離れ』と言いたがる理由とは?」と題して書いてきましたが、最後に「日本が、ここまで衰退してしまった『"5つ"の原因』」について紹介します。
今の日本を感嘆詞で表現すると「どよ~ん!」が適切ではないでしょうか…。そして、見渡せば、至る所に"イラついた人たち"がいて、匿名をいいことに、インターネットで正義感を振りかざしています。これが、現在の日本の人々の現状です。
思えば、日本は戦後の高度成長期で、驚くべき経済復興を成し遂げました。朝鮮戦争、東京オリンピックなど、様々な要因が働き、日本は押しも押されもせぬ「経済大国」になりました。「一億 総中流」などとも言われるまでになりました。その後、1990年代初頭に「バブル」が弾け、行き過ぎた経済に、ちょっとブレーキが掛かりましたが、まだ 元気でした。しかし、20世紀末に決定的なこと(IT革命への出遅れ)が起きました。以来、日本の経済は停滞を続け、GDPでは、中国の後塵(こうじん)を拝しています。更に 注目すべきは、この20年間で、中国はGDPを10倍にしていること。1位のアメリカも2倍。反対に日本は、殆ど 成長していません。成長率で言うと、数%。20年、ほぼ横ばいなのです。
日本衰退の原因はは、前途したように根本的な問題を解決しないで放置してきたことが大きいのです。これは、『保守派』と『革新派』の政策の対立の深さが引き起こした結果です。
■【日本が衰退した"5つ"の原因!】
◆1つ目は、「人口減少」であり、これへの対応として、家族制度の改革で、女性の婚外出産の緩和や育児補助支援をしなかったことです。
もう1つの解決策である積極的に正当な移民政策もしなかったことです。
この対応策を阻止したのが『保守系の人たち』であり、日本を衰退させた一番の原因を作った人たちです。
根本的な原因を除去できなかったことで、ドンドン問題が膨らんでいったのです。
これが原因で、団塊ジュニアの結婚適齢期の女性たちが、子供を産まなかったことで、日本の衰退が確定的になりました。高齢人口比率が上がり、その分 年金財源支出は増え、かつ 生産人口が減ることになったのです。
このため、高齢者の年金を減らし、60歳以下の人たちの社会保険料や税金などが増加して、手取りを減らし、その分、消費が減ることになったのです。
◆2つ目は、「消費が減った」ことで、GDP縮減になり、財政出動してGDP縮減の痛みを軽減しましたが、抜本的な人口減少への対策をしなかったことで、赤字国債の発行が継続的 かつ 増加傾向になり、日銀の金融政策で、量的緩和を止めることや金利上昇が出来なくなってしまったことです。
金利ゼロのままの為に、円安になりインフレとなったのです。これを推進したのも『保守系の人たち』です。
◆3つ目は、1990年から2020年の長きに渡り、「円高」になり日本企業は競争力を無くし、競争力維持の為に工場を海外に移転したことです。米国の日本叩きもありましたが、結果的に日本は衰退しました。
日本企業を敵視して、企業を日本から追い出したのが『革新派の人たち』です。不当な企業利益を分配しろと言って、企業は日本から出て、世界標準で経営するしかなくなったのです。
◆4つ目は、「IT化の遅れ」であり、イノベーションが無かったことで、労働生産性の向上が出来ずに、賃金を上げることが出来なかったのです。
その原因は、スマホの導入が遅れたことです。ガラ携の普及率が高く、それを駆逐できなかったのです。それと、若者のチャレンジできる環境が整わずに、AIなどの先端技術が遅れたことも大きな要因です。この部分は、もう1つ、電気通信技術の日本の基幹研究組織を潰したことが、より大きいと言われています。
◆5つ目は、「空想的な平和主義と企業性悪説」の為に高負担の税金をと言う『革新派(野党)』の政策と、財政出動で将来への展望がない問題先送りの『保守派(与党)』の政策であり、日本の未来が見えないことで、海外投資家も日本への投資を回収し、日本衰退と見て 空売りをしました。
このように、日本の問題を解決しないで先送りの政治で、どんどん衰退しましたが、それでも 政治家が目を覚まさないで問題を放置するので、今後も日本は、衰退すると考えられています。問題が次の問題を生み、その複合体が、日本の未来を暗くしています。現実を見て、問題解決をして将来を明るくする政治家がいないことが、大きな問題なのです。
日本は、「リアリズム」を欠いています。
『保守派の人たち』は、現実を見ないで保守理念で政治を行い、『革新系の人たち』も、空想的な平和主義・企業性悪説で、こちらも現実を見ていないのです。両陣営の人たちが、現実無視になっていることで、「日本の真の問題」を解決できないでいるのです。
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