今日は、concan代表の私が「激変する時代の中で、コロナによって、更に スピードが増した ビジネスシーンに於ける『DX』(デジタルトランスフォーメーション)の現状」について調べてみました。
~副題:「3つのD」とは、『Dimension』(ディメンション/対象)、『Design』(デザイン)、『Disruption』(ディスラプション/破壊的イノベーション)~
「コロナ禍」が齎した『パラダイムシフト』により、企業は これまでにないスピードで変革することが求められています。 それは、企業変革を支援する「PwCコンサルティング」にとっても、価値提供のあり方や その提供スピードを抜本的に変革しなくてはならないことを意味しています。 *「パラダイムシフト」とは、その時代や分野に於いて、当然のことと考えられていた『認識』や『思想』、『社会全体の価値観』などが革命的に もしくは 劇的に変化することをいう。パラダイムチェンジともいう。科学史家「トーマス・クーン氏」が科学革命で提唱したパラダイム概念の説明で用いられたものが拡大解釈されて、一般化したものである。
「◆1.Disruption」「◆2.Design」「◆3.Dimension」の『3つのDによる"変革プラン"』で、自ら大きな変革に踏み出した「PwCコンサルティング」は、『企業』と『社会』のトランスフォーメーションをどう加速させようとしているのでしょうか…。
同社常務執行役の「安井 正樹氏」のインタビュー記事から抜粋して紹介します。
■1【コロナ禍で「加速した流れ」と「逆回転した流れ」とは?】
●聞き手: 企業は、「コロナ禍」前から『SDGs』(持続可能な開発目標)・『ESG』(環境、社会、ガバナンス)、『デジタル化』など中長期的な諸課題に直面していましたが、「コロナ禍」によって経営環境がどう変わったのでしょうか?
●安井氏: 「コロナ禍」によって、『パラダイムシフト』が起きていると捉えています。『パラダイムシフト』の流れは、"2つ"ありまして、"1つ"は、今まで歯車が回っていた方向に より速く回転する「加速した流れ」です。"もう1つ"は、歯車が反対方向に回る「逆回転した流れ」です。
前者の例として、「デジタル化」があります。「コロナ禍」以前から多くの企業で中長期的な課題とされてきましたが、「コロナ禍」で 一気に加速したことは間違いありません。
対面営業が出来ない為、「デジタル」を駆使して営業改革を行ったり、「デジタル化」で"リモートワーク"を可能にして 社員の働き方の多様化を推進したりするといった流れです。
残念ながら、「加速した流れ」が世の中のネガティブな要素を増幅した側面もあります。『社会の分断』や『二極化』、『ポピュリズムの台頭』、『持てる者と持たざる者の格差』、『デジタルデバイド』などです。
一方、「逆回転した流れ」の例としては、「グローバル化」が挙げられます。「コロナ禍」前までは、サプライチェーンの「グローバル化」は当たり前で、その方が タイムリー かつ 効率的に"モノ"を各国に届けられることを誰もが疑っていませんでした。ところが、『医療』や『国防』など国益に直結するものは、調達から製造までのプロセスを国内で完結させるべきだという議論が高まり、「グローバル化」から「ブロック化」への流れが強まっています。
また、日本国内の人口動態に於いても 中央から地方への逆回転が起きており、東京都の推計人口(2022年1月1日時点)は26年ぶりに減少に転じました。『新型コロナウイルスの感染リスク』や『リモートワークの普及』などにより、転出人口が増えたことが主な理由です。
こうした、「正の回転」と「負の回転」が同時に起きている『パラダイムシフト』が、企業にとって 『機会』と『脅威』の両方を創出しています。企業がこれを『新なビジネス機会』と捉えれば、例えば、「デジタル化」を加速して顧客体験価値を高めることなどによって、競争優位性を築くことが可能です。逆に『脅威』として捉え、社会課題に対する本質的な取り組みを強化する例も増えています。『GHG(温室効果ガス)の排出削減に向けた取り組み』、『人権に配慮したオペレーション』や『サプライチェーンの構築』などは 社会的要請であり、対応を怠ったり誤ったりすれば、企業は信頼を失うことになります。
新たなビジネス機会を創出する、あるいは社会課題の解決に取り組んでいく為には、やはり「デジタル」による変革が欠かせません。今や「デジタル化」のスピードが企業の存続を左右するケースもあり、世の中の あらゆる企業に於いて、「情報産業化」が進んでいます。
例えば、「製造業」は単に製品を製造しているだけではなく、情報を使いながら効率的にモノをつくっています。あるいは、モノづくりをやめて、『サービス』や『体験を売る』情報産業へと"ビジネスモデル"をシフトする企業も増えています。いま企業に問われているのは、「情報産業化」を加速させることによって 現業を変革していく、そうした"トランスフォーメーション"を 如何に『アジャイル』に行えるか、ということです。
*「アジャイル」:ソフトウェア工学に於ける「アジャイルソフトウェア開発」は、『人間』・『迅速さ』・『顧客』・『適応性』に価値を置くソフトウェア開発である。典型的なアジャイルソフトウェア開発では、チーム主導で設計・実装・デプロイを短期間に繰り返して ユーザーが得た価値を学習し適応する、すなわち トライアルアンドエラーで開発が行われる。
■2【「3つのDによる変革プラン」で、自らを変革する】
●聞き手: 企業が変革のスピードアップを求められる中で、「PwCコンサルティング」も自社の大きな変革に踏み出したそうですね。
●安井氏: 「コロナ禍」が齎した『パラダイムシフト』により、私たちのクライアントは 変革のスピードを格段に上げることが求められており、「PwCコンサルティング」も価値提供をいっそう加速していく必要があります。
世の中の変化のスピードが 今ほど速くなかった時代は、DX(デジタルトランスフォーメーション)に5年、10年かかることもあったのですが、今は そんなに時間を掛けていると、『企業の存続自体』が危ぶまれます。1~2年といった短期間で変革を遂行しなくてはならない環境にあり、クライアントの意向に合わせながら、『アジャイル』かつ『シームレス』に支援していくことが、私たちにとって重要な『ミッション』になっています。
*「シームレス」:継ぎ目のない状態のことで、下着に於いては継ぎ目や縫い目がない衣類を称し、ブラジャーのカップやガードルなどのヒップなどによく見られる。
*「安井 正樹プロフィール」
「PwCコンサルティング合同会社」常務執行役 パートナー
大手コンサルティングファームを経て、2014年プライスウォーターハウスクーパース入社。デジタルトランスフォーメーション(DX)の専門家として、製造業を中心とした幅広い業種に対しサービスを提供。デジタルを活用したオペレーションの効率化、ITのモダナイゼーションを得意とする。近年はデジタルを活用した新規事業開発を多く手がけ、AI/IoTデジタル化構想、スマートシティ構想、宇宙ビジネスなどの戦略立案から実行支援までを一貫して支援している。岡山市Socirety5.0戦略アドバイザー、公益財団法人PwC財団の代表理事も務めており、官、民、ソーシャルセクターを繋げ、社会課題の解決にも従事。
●安井氏: そこで、「PwCコンサルティング」は大きな変革に踏み出しました。『事業の再構築』、『新規事業開発』、『組織改編』、『次世代マネジメントへの継承』、『人材育成』などを中心に 1年に渡って議論を行った結果、策定したのが「"3つ"のDによる変革プラン」です。
◆.1つ目のDは、「Dimension」(ディメンション)です。
クライアントのビジネスと、それに対する「PwCコンサルティング」の価値提供のあり方を多面的に見直し、バリューに直結するサービスを提供していこうというものです。
コンサルティングファームは、業界や専門性の"軸"で担当領域が分かれているケースが多いのですが、企業の経営アジェンダが『脱炭素化』や『地方創生』など社会課題の解決と より密接に繋がる中で、そうした枠組みでは、クライアントの複合的なニーズに対応できなくなっています。『縦軸』でも『横軸』でもない、『斜め上から物事を見る』というのが、「ディメンション」の意図するところです。その為に 社内にシンクタンクのような機能を設け、クライアントの潜在的な課題を定義し、その解決を支援することも計画しています。
◆2つ目のDは「Design」(デザイン)です。
クライアントの変革を成功に導く方程式を「デザインする」ということです。
例えば、新規ビジネスを開発する際には、単にプランを作成するだけではなく、『マネタイズ』や『事業の持続可能性』も しっかりと見据えた上で、「PwC Japanグループ」のサービスラインを跨ぐ ホリスティック(全体論的)なアプローチと、様々なプレーヤーを巻き込んだエコシステムの構築によって、『実装のスピード』と『成功確率』を高めていきます。
クライアントが 如何に 収益を生み、サステナブルな経営を「Design」出来るかという観点から、当社も"リスクの一部をシェアする"など、サービスの『プライシング』や『提供スタイル』も柔軟化・多様化させていく必要があります。
◆3つ目のDは、「Disruption」(ディスラプション)です。
デジタルを活用して、既存の概念や価値観を一新させるようなサービスを提供していきます。「PwCコンサルティング」が有する「エクスペリエンスセンター」や「Technology Laboratory」は、クライアントが『メタバース』を体感したり、新規ビジネスを創出したりする為の『アイディエーション』の場となっています。
更に、「デジタルプロダクト」を開発する『ケーパビリティ』を備え、既に サービス提供も始めています。その一つである「IBA」(Intelligent Business Analytics)は、『潜在アライアンス企業』を選定する際、世の中にある『特許情報』を人工知能(AI)で解析して、どの企業が持つ"特許"をどう活用すれば、新規ビジネスを効率的に創ることが出来るかを導き出すものです。クライアントに「デジタルを使って変わりましょう」と言う前に、私たち自身がデジタルをフル活用し、『アジャイル』な方法論で『ディスラプティブ』なサービスを提供していきます。そうすることで、クライアントの"変革プラン"の実装、改良のサイクルをよりスピードアップしていきます。
*「メタバース」:コンピュータやコンピュータネットワークの中に構築された、現実世界とは異なる3次元の『仮想空間』や『そのサービス』のことを指す。日本に於ける意味合いに於いては 基本的にバーチャル空間の一種で、企業や2021年以降 新たに参入した人々が集まっている商業的な空間が主にそう呼ばれる。
*「アイディエーション」:アイデアを発想し、出し合い、精査していくこと。
*「ケイパビリティ」(capability):一般的には「能力」「才能」「手腕」「力量」といった意味。ビジネスで使われる場合には「企業全体の組織的な能力」、更に踏み込んで「組織として持つ、他社より優位な強み」を指す。
営業力、生産力、マーケティング力など、企業が強みと認識している能力は多種多様。
■3【インパクトを出す為に「大きく」「長く」「多角的に」課題を解く】
●聞き手: 安井さんご自身としては、「3つのDによる変革プラン」という"ビジョン"に基づいて、具体的にどのような"価値創出"にチャレンジしたいとお考えですか。特に注力したい分野を含めて教えて下さい。
●安井氏: 私個人としても、「PwCコンサルティング」という組織に於いても、「社会課題の解決」に注力し、これまでにない『新たな価値』を創出していくことです。
企業は、自らを変革すると同時に、『攻め』と『守り』の両面から「社会課題」を解決することが求められています。
実際に私たちのクライアントも、「デジタル」や「情報」を駆使した「社会課題」の解決へと大きく"舵"を切っています。私自身、複雑な「社会課題」の解決をクライアントに寄り添って支援することで、『PwC』の「社会に於ける信頼を構築し、重要な課題を解決する」という"パーパス"を体現できているという実感を持つことが出来ます。
「PwCコンサルティング」では、企業の「社会課題」の解決にあたって、"3つ"の視点を持って支援し、『社会的インパクト』と『経済的インパクト』を拡大していきます。
◆1つ目は、物事を「大きく解く」こと。戦略立案、変革の実行、情報開示など一部のフェーズだけを支援するのではなく、大きく課題を捉え、「PwC Japanグループ」が有する多様な『ケーパビリティ』を結集させ、包括的に支援することで、企業が創出するインパクトをより大きなものにします。
「GHG排出量」の削減を例に取ると、まず 現状を可視化し、2050年までにカーボンニュートラルを達成する戦略をクライアントと一緒になって策定します。また、その『実行』や『トランスフォーメーション』の段階では、サプライチェーン全体の「GHG排出量」を可視化し、サプライヤーの「GHG排出量」削減の為の支援をし、場合によっては、『再生可能エネルギー』や『省エネ設備の投資に必要な資金調達』もサポートする必要があります。そして、そうした取り組みについて、ステークホルダーに対し情報開示することも求められます。
それらを「PwC Japanグループ」が一体となって総合的に支援し、課題を大きく解いていきます。
◆2つ目は、「長く解く」ことです。「GHG」の削減ばかりでなく、『人口減少』や『医療費の問題』など、「社会課題」の多くは一朝一夕には解決できないものばかりです。
「街づくり」のようなテーマの場合は、『10年単位の期間』を要する為、長く解くという視点が欠かせません。その為には、クライアントと"ビジョン"を共有して、一緒に解いていくことが重要です。
例えば、地方の『医療費』、『社会保障費』をどう削減し、「社会保障制度」の持続可能性を高めるかという課題があります。こうした大きな課題に対しては、戦略立案だけですべてを解決できるというものではありません。実際に課題が生じている現場で、地域の企業と一緒になって、「PHR」(パーソナルヘルスレコード)の管理・運用に必要なプラットフォームを構築したり、民間のプレーヤーが多数参画できるように「ソーシャル・インパクト・ボンド」を組成したり、テクノロジー企業を巻き込んで 各種情報を収集、分析し、アドバイスするなど、どのような“座組み”を形成するかが非常に重要になります。「社会課題」の本質的な解決は、1社だけでは不可能なので、複数企業で知恵を出し合い、幅広い関係者と一緒に大きな課題を長く解いていくことが求められています。
*「ソーシャル・インパクト・ボンド」:民間資金を活用して社会課題解決事業を実施し、その事業成果を資金提供者に還元する仕組み
◆3つ目は、「多面的に解く」です。「社会課題」の解決には、経済価値との両立が難しい領域もあり、社会にとっていいことだと分かっていても、企業としては経営資源を投入することが難しいケースがあります。「PwC Japanグループ」は主要なコンサルティングファームとしては 唯一の公益財団法人となる「PwC財団」を有しており、私は その代表理事も務めていますが、財団を通じて『NPO』や『ソーシャルスタートアップ』の支援なども行っています。
例えば、外出が困難な『身体障がい者』に対して就労体験の場を提供したいといったケース(テクノロジーで身体能力や知覚などを拡張させる)では、人間拡張の技術とアイデアを持った企業の参画を募り、助成金を支給することで、体験した方々の精神的な健康や幸福感の充足に貢献する為の支援を行いました。このような、経済原理では手が届かない領域に対しても、財団を通じて課題の特定や解決の支援を出来ることが、私たちの強みだと自負しています。
変革のリーダーとして、クライアント共に変革を社会実装し、『攻め』と『守り』の両面から「社会課題」を解決していく為には、全体を俯瞰した「斜め上の視点」から優先課題を特定し、経営資源を そこに集中させる必要があります。
繰り返しになりますが、業界や専門性の"軸"だけで物事を捉えていたのでは、急速に変化する社会に於ける多様 かつ 複合的な課題を解くことは出来ません。特に「社会課題」の解決に向けては、業界や専門性の垣根を取り払い、最初から「斜めのアジェンダ」として課題を定義し、クライアントと 協働しながら、世の中の変革に先んじて取り組んでいきます。そうすることで、私たちが「PwC」の"パーパス"を実現し、社会に於ける信頼を構築できるよう尽力していきます。
◎と言うことで…
「コロナ禍によるパラダイムシフトを『3つのDによる"変革プラン"』で飛躍の機会に変える方法とは?」と題して書いてきましたが、最後に「安井 正樹氏」が代表理事を務める「公益財団法人 PwC財団」について紹介します。
PwC財団は、持続可能な社会の実現を目指し、「社会課題」に取り組む団体への助成を中心とした支援を行っている団体です。
助成先については、特設WEBサイトなどで公募を行い、公正な基準に照らし合わせ、選定を行っています。「助成事業」の対象となる"テーマ"は『3つ』。
◆テーマ1.「教育・アップスキリング支援事業」
私たちを取り巻く環境は、急速に変化しています。これらの変化に対応し、より変化に強く 高い能力を備えた社会にすることを目指すため、『人材価値向上』を目的とした「教育・アップスキリング支援」に取り組む団体へ助成を行っています。
◆テーマ2.「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)支援事業」
変わりゆく社会情勢の中で、お互いに相手を尊重し、一人ひとりが生き生きと生活していける社会にすることを目指すため、個性や多様性の尊重を目的としたダイバーシティ&インクルージョン(D&I)支援に取り組む団体へ助成を行っています。
◆テーマ3.「環境問題への対策支援事業」
近年、地球温暖化、資源枯渇、廃棄物、食料危機など、環境に於ける「社会課題」は多岐に渡り、健全なエコシステムの構築は喫緊の課題となっています。持続的な世界をつくるため、環境問題への対策に取り組む団体へ助成を行っています。
【代表理事メッセージ】
近年、社会構造の複雑化・多様化が急速に進み、災害対応・教育・ダイバーシティー&インクルージョン(D&I)・環境といった領域に於いては、単独の企業や団体の取り組みだけでは対応に限界が見られます。そのような状況では、「パブリックセクター」(官公庁・地方自治体等)、「プライベートセクター」(民間企業)、「ソーシャルセクター」(NPO・NGO等)が一丸となり、あらゆる資源を動員して「社会課題」に取り組むことが必要です。
当財団では、社会を取り巻く 様々な課題の解決を加速させると伴に、長期的な視野をもって持続的な社会の実現を目指してまいります。特に、NPOやスタートアップ企業など「社会課題」に取り組む団体と共同で解決に取り組むことで、社会に 更なるインパクトを創出していきたいと考えます。
公益財団法人PwC財団
代表理事 安井 正樹
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